サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

第二章 名も無き吸血鬼

第18話 念力はロマン

　
　蜘蛛の糸を回収し、影の中に放り込む。
　いつまでも影を纏ってる訳にはいかないからな。
　裁縫と染色の技術はあるんだ。
　伊達に図書館で暇潰ししていない。
　道具が無いから当分先の事になるだろうけどいつか服を作りたいね。

　「キュンキュンキュン」

　「上機嫌だな」

　新たな旅のお供になった妖狐。
　俺の頭の上で鼻歌っぽいのを歌っている。
　まあ可愛いからいいけど。

　「お前は戦えるのかな？」

　「キュン？」

　確か持ってた能力は【念力】だった。
　物を浮かせたりするやつだよね？
　ちょっと戦い方がわからないんだけども。
　持ち上げて落とすみたいな？

　「次、魔物が出て来たら戦ってくれる？」

　「キュン！」

　通じてるのかな？
　意思疎通出来ないってつらいね。

　


　「キュンキューン！」

　【念力】かっけー！
　そんな使い方出来るのか！
　ロマンの塊じゃないか！！


　【音魔法】で魔物を探してるとすぐにゴブリンが見つかった。
　妖狐に戦ってとお願いすると、【念力】を使ってゴブリンの首を捻じ切っていた。
　その発想は無かったよね。
　そして凄い羨ましい能力。
　かっこいい。

　「キュウ…」

　だが、どうやら燃費が悪い様子。
　魔力で能力使ってるのかな？
　俺は魔法になるまで魔力の概念を理解出来なかったけど。
　とりあえずさっき殺したゴブリンの魔石を取り込んでもらって最大魔力量を増やしてもらうかな。

　「ふむ？　妖狐はまだ進化してないのかな？　能力1つだけだし。いや、進化して何かと合体した可能性もあるか」

　とりあえず一回進化してもらうまで妖狐に優先的に魔物を倒してもらおう。
　強くなるに越した事はないからな。


　3日後。無事に妖狐は進化した。

　『二尾妖狐
　　名前　　無し
　　【魔物能力】
　　念力
　　火魔法　　　　』
　
　なんか必要経験値量多くない？
　3日もかかると思ってなかった。
　俺もレッサー・ヴァンパイアになってからは爆上がりしてるけどそれまではポンポン進化してたんだけどなあ。
　俺が特別なのか、妖狐が特別なのか。
　まあどっちでも良いか。
　尻尾が2本になって更に可愛くなったし。

　「キュンキュン！」

　うむうむ。
　妖狐も進化してご満悦の様子。
　ってか、これ進化先読めちゃうな。
　最終的に九尾になるんじゃないの？
　そうなったら尻尾を枕にして寝かせてもらおう。

　「大きくなったな」

　妖狐は進化して中型犬サイズになった。

　「キュウ！」

　「だから無理だって」

　俺の頭に乗ろうとしてくるが流石に無理である。
　なにせ3歳児なので。
　いや、成人男性でも中型犬は頭に乗せられない。

　「我慢して歩いて下さい」

　「キュン…」

　ああ、可愛い。
　シュンとしてる姿もベリーキュート。

　「これからは、魔物は交互に倒していこうか。俺も早く進化して大きくなりたいし」

　このままじゃいつまで経っても人里を目指せない。
　この世界に来て自由に生きると決めてるが、何が自由なのか自分でも良く分かっていない。
　人を殺したいのは確かだが、基準はなんなのか。
　
　無差別に殺したいのか。
　悪人だけを殺したいのか。
　善人だけを殺したいのか。

　判断する為にはとりあえず情報が欲しいな。
　この人生、いや魔物生の目標みたいなのが欲しい。
　惰性でダラダラ生きていてもつまらないしね。