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第一章 名も無き蝙蝠
閑話 シュルペニア神聖王国
しおりを挟むここはシュルペニア神聖王国の王都の聖堂。
「神託が下りました」
教皇からの緊急招集により、急遽王都に招集された枢機卿や大司教。
神託とは、教皇のみが使えるユニークスキルであり、国家の一大事や災害が起きる時に神から知らされるスキルである。
「して、猊下。神託の内容は?」
「魔王誕生の兆しあり。選択を誤れば世界の危機だと」
「な、なんと…」
「まさか、魔王とは…」
集まった聖職者達は絶句した。
魔王とは、魔物の中でも特に危険な存在であり、過去に魔王が出現した時は最悪で国が3つも滅びた。
多大な犠牲を払って討伐した魔王もいれば、今なお生存し、討伐出来ていない魔王もいる。
魔王は基本的に自分の縄張りから出てこないので下手につつかなければ被害は出ないのだ。
「さて、周辺諸国に通達はするとして。我々はこれからどうするべきか」
「まずは調査では? なんにしても居場所を把握せねば、どうする事も出来ますまい」
「ふむ。最近異常があった場所を調査させてみるか」
「魔王誕生など一体何年振りですかな」
前回魔王が誕生したのは、150年前。
その時は、狼系の魔王で指揮系の異能を使い10万以上の魔物が国に襲いかかった。
初めは大人しくしていたらしいのだが、とある国の冒険者が縄張りの森を荒らしてしまい魔王の怒りを買ってしまった。
そこからは地獄だった。
襲ってくる魔物のランクは低かったが、とにかく数が多い。倒しても倒しても溢れてくる魔物に国は対応しきれず、国を放棄。
同盟国に亡命し、約40年の時をかけて魔王を討伐した。
しかし破壊された国は未だに復興出来ておらず荒れたまま放置されている。
「しかし、選択か」
「うむ。わしもそれは気になっておった。どういう事なのか」
「普通に考えれば、手を出すなという事でしょうが…」
「ああ。しかし、それはもはや世界の常識であろう? かの大国が魔王を討伐しようとして返り討ちにあった話はあまりに有名だ」
人類の繁栄が最盛期だった頃、魔王を討伐し、その土地を利用しようとした国がある。
魔王には数で襲ってくるタイプと単体で襲ってくるタイプがあり、前者は比較的討伐しやすい。
しかし、後者はとにかく魔王自体が強すぎるので討伐は実質不可能だと言われている。
過去、栄華を極めていた大国が鳥系魔王が住む山に攻撃した事があるが1週間で国が滅びた。
それからは、魔王を討伐するにしても充分な情報を集め、群れるタイプの魔王にしか手を出さないのは暗黙の了解になっている。
「北の竜王のように対話可能なのでは?」
「その可能性もあるか。しかし竜王は温厚だから話が通じるのであって、今回の魔王も同じかどうか」
「これは選択を間違う訳にはいかぬな」
北の渓谷に住む竜系魔王は魔物にしては珍しく話が通じる。
温厚で破壊を振り撒く訳でもなく、睡眠の邪魔さえしなければ古くなった鱗や生え変わりの牙などを貰える比較的友好的な魔王だ。
勿論過去には討伐対象になっていたが、毎度の如く殺される為、今では現存する魔王最強とも言われている。
「みな、一度静まれ」
ここまで、黙って口論を見ていた教皇が口を開き、枢機卿や大司教が口を閉ざす。
そして、教皇はそのまま言葉を続ける。
「此度の神託は恐らく『個』の魔王の出現を示しておる。手を出すのはいかんが、放置しておく訳にもいかぬ。すぐに調査し、『個』の魔王の出現場所を探るのだ。全ての教会に連絡し、各地の王とも連携せよ。厳重注意を忘れるな。万が一見つけても絶対に手を出すなと勧告しておくのじゃ」
枢機卿や大司教は教皇の言葉に頷き、即座に行動を開始する。
そして、その日のうちに各地に早馬が走り調査が始まった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これにて第一章は終了です。
次章はようやく外の世界へ飛び立ちます。
作者は他にも作品を更新してますので良ければそちらもご覧下さーい。
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