上 下
12 / 172
第一章 名も無き蝙蝠

第11話 ボスゴブリン

しおりを挟む

 
 あれから予想通り、帰ってこないゴブリン達を不審に思ってか、また少数の人員を派遣して来たので美味しく頂いた。
 それを2回繰り返した後、とうとうボスが重い腰をあげた。もうちょっと数を減らしたかったけど仕方ないか。

 取り巻きは残り15体程。
 全員がこっちに向かってくるなら消音結界はいらないな。
 いや、杖持ちには個別で結界使おう。これで詠唱が出来なくて、魔法を使えなかったら儲け物だ。
 余裕がある時に詠唱無しで魔法が使えるのか実験しておけばよかったな。

 そんな事を考えてたらいよいよ接敵。

 先手必勝! サウンドボム!×3

 一発で死なないのは分かってんだ。
 とりあえずこれで取り巻きを倒しておきたい。
 ここまでの数の複数に使った事は無かったから不安だったけど、しっかり効果はあったみたいだな。
 【音魔法】が強すぎる。これだけで覇権とれんじゃないの?

 取り巻きの生き残りをソニックニードルで仕留めていきながらそんな事を考えていたのがフラグになったのか。

 「ギャギャギャ!!」

 「え、こわ。無傷じゃん」

 ボスは無傷でピンピンしていた。
 えー、無傷は困る。とても困る。
 多少なりとも効いてくれないと攻略法がわかんないじゃんね。

 どうしたもんかと、とりあえずソニックニードルをぶつけてみる。
 微動だにせず。ばけもんかよ。訳がわからん。
 なんで効かないんだろう?
 下っ端には有効だから何か訳があると思うんだけど。
 そのままボスを観察しようとしてると、大剣を振り回しながら走ってきた。

 「って、はや!」

 俺は慌てて天井に避難するがお構い無しに飛び上がって大剣を振りかざしてきた。

 「届くのかよ!! フィジカルすげーな!」

 俺は避けつつもボスの背中に貼り付く。
 からの! 【吸血】!
 おお! 出来た! いや、うまーい!
 脳が蕩ける。新しい扉を開きそう。

 俺が血を堪能してると、ボスは壁に背中をぶつけようとしてたので背中から離れる。
 そして、ソニックニードル!!
 うーん、やっぱりこれは効いてないな。
 【吸血】は効いたのに。
 ちまちま削っていくしかないのかね。


 それからは持久戦。
 ちょこまかと飛び回りつつ偶に【吸血】。結構血を吸ってるので出血多量で死んだりしてくれるのを待ってるんだが、未だ衰えず。

 【音魔法】は相変わらず不発。
 何回も撃って分かったのはなんか弾かれてるっぽい。あれか? 身体強化的なやつか?
 魔力を体に巡らせて身体能力を上げてるみたいなやつ。

 俺も体に張り巡らせてるつもりだけど、やり方が違うのか、能力がないと使えないのか。
 意識の問題かな?
 まぁそれは、終わってから確かめるとして今どうするか。

 体に巡らせてる魔力で俺の【音魔法】を弾いてるなら納得いくんだよね。
 ボスの魔力を超える出力が足りてないんだろう。

 それならばと、俺は今まで『針』のイメージで使ってたのを『矢』にする気持ちで使ってみる。
 結果は、成功。ボスは確かにふらついた。
 チャンス! と、ここで畳み掛けたい所だったんだがかなり魔力を使ったので連発できない。
 逃げつつ、魔力を回復させてぶち込んでいこう。



 「終わったー」

 ふひー。疲れた。
 合計で3時間ぐらい戦ってたんじゃないかな。
 しかも、これで器がまた貯まった。
 意識を内側に向けたら進化が始まるんじゃないですかね。

 だが、その前に。
 あちこちに散らばってるゴブリン達の魔石と血を回収しなければ!
 下っ端達は、【吸血】で味わわずに、血だけを回収。今日はメインのボスがいるからね。

 下っ端達の血と魔石を回収し、全てを血肉に変える。
 おおー。最大魔力量がかなり増えたな。
 これはこれで操作するのが難しくなるんだが。

 そして! メインディッシュのボスゴブリン。
 結局こいつの名前はなんなんだろうね。
 ゴブリンも俺が呼んでるだけだから今更か。

 まずは魔石を抉り出すが流石に大きい。
 これ食べれるか? って思ったけどあっさり食べれた。
 人間の拳ぐらいはあったと思うんだが不思議だね。
 そして、先に味見をしてしまっている血。
 いただきます。

 「あーうまい。うまい。うまい」

 これはあれだ。天然水から、高級ジュースにランクアップしてる。
 やっぱり血の美味しさは強さ依存かな。
 それなら尚更、どんどん強くならないとな。

 俺は改めて決意して、ボスの血を楽しむのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【R-18】吸血鬼の家庭教師~年下貴族に溺愛求婚されています【挿絵付】

臣桜
恋愛
魔族や様々な種族が入り乱れるエイダ王国で、人間のクレハは浮いた存在だった。一般母子家庭に育ち、沢山勉強をしていい職に就き母を楽させるのが夢だ。ある日クレハは喧嘩の現場を見てしまい、背後から襲われ昏倒した赤髪の青年を助ける。青年は高位魔族――吸血鬼の貴族だった。ノアと名乗る青年と一時は別れたものの、再び出会ったクレハは彼にどうしようもなく惹かれてゆく。 ※表紙はニジジャーニーで生成しました。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

転移想像 ~理想郷を再現するために頑張ります~

すなる
ファンタジー
ゼネコン勤務のサラリーマンが祖父の遺品を整理している中で突如異世界に転移してしまう。 若き日の祖父が言い残した言葉に導かれ、未知の世界で奮闘する物語。 魔法が存在する異世界で常識にとらわれず想像力を武器に無双する。 人間はもちろん、獣人や亜人、エルフ、神、魔族など10以上の種族と魔物も存在する世界で 出会った仲間達とともにどんな種族でも平和に暮らせる街づくりを目指し奮闘する。 その中で図らずも世界の真実を解き明かしていく。

三国志 群像譚 ~瞳の奥の天地~ 家族愛の三国志大河

墨笑
歴史・時代
『家族愛と人の心』『個性と社会性』をテーマにした三国志の大河小説です。 三国志を知らない方も楽しんでいただけるよう意識して書きました。 全体の文量はかなり多いのですが、半分以上は様々な人物を中心にした短編・中編の集まりです。 本編がちょっと長いので、お試しで読まれる方は後ろの方の短編・中編から読んでいただいても良いと思います。 おすすめは『小覇王の暗殺者(ep.216)』『呂布の娘の嫁入り噺(ep.239)』『段煨(ep.285)』あたりです。 本編では蜀において諸葛亮孔明に次ぐ官職を務めた許靖という人物を取り上げています。 戦乱に翻弄され、中国各地を放浪する波乱万丈の人生を送りました。 歴史ものとはいえ軽めに書いていますので、歴史が苦手、三国志を知らないという方でもぜひお気軽にお読みください。 ※人名が分かりづらくなるのを避けるため、アザナは一切使わないことにしました。ご了承ください。 ※切りのいい時には完結設定になっていますが、三国志小説の執筆は私のライフワークです。生きている限り話を追加し続けていくつもりですので、ブックマークしておいていただけると幸いです。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

処理中です...