3 / 172
第一章 名も無き蝙蝠
第2話 器
しおりを挟む俺はなるべく音を立てない様にネズミの背中に落下した。ネズミは、驚いて一旦跳ねる様に飛び上がったが、気にする事なく背中に取り付いて噛み付く。
「キキッ!」 (【吸血】!)
俺はとりあえず能力を使ってみた。
すると、蝙蝠の体の中に濁流の様に血が流れてきた。
ネズミは最初は滅茶苦茶に暴れていたが、血をどんどん吸って行くと動きが鈍っていき、最後にはミイラの様にカピカピになり息絶えた。
「キキッ! キキキっ!」 (ケプッ! 美味い!)
ビックリした。ネズミがめっちゃ美味いし、空腹感もなくなった。俺は血がエサになるのかな?
前世の吸血コウモリみたいなもんか。
とりあえず、天井に戻ろう。
結構大きい音も出してしまったし、ゴブリンに見つかると厄介だ。
天井に戻り、また逆さ吊りでぶら下がった俺は考える。
ネズミが死んだ時に、血以外の何かが流れこんできたのだ。ラノベ的に考えたら経験値だけどなぁ。
そんな事を考えながら、自分の精神的な内側に意識を向ける。
こうしてたら自分に【吸血】の能力がある事が分かったのだ。
とりあえず、ぼーっとする時はこの状態になる様にしている。
「キ? キキッ?」 (ん? これは?)
自分の体に器の様な物があるのが分かり、そこに僅かだが何かが溜まっていた。
これは、血とは別に流れてきたやつ?
微妙に貯まってるし、さっきは気付かなかったのは貯まってなかったからかな?
ちょっと試してみたいけど、お腹いっぱいなんだよなぁ。
ネズミを探しといて、お腹が空いたらすぐに試せる様にしとこうか。
思い立ったら即行動! 殺そうと思った時もそうだった。
いざ! ネズミ探しの旅へ!
そう思ってた時が俺にもありました。
さっきみたいに、ちょろちょろと飛んで、休憩を繰り返していたら、ふと遠くからゴブリンがやってくる様な気配がした。
なんかこの体になってから、視界が全方位あるような感覚なんだよね。
蝙蝠だし、超音波的なサムシングかな? 能力には無かったんだけど…デフォルトで付いてる感じ?
意識的に使える様にならないんだろうか?
ゴブリン共が近付いてきて、どうせ身動き出来ないしやってみようか。
「キキッ…」 (頭痛てぇ…)
結果、使えた。
けど、めちゃくちゃ頭が痛くなる。
超音波から得られる情報を処理しきれない。
少しずつ慣らしていくしかないな。
ネズミ探しが楽になるだろうし。
後、ゴブリンにちょっかいかけてみようとしたがやめた。あいつら、俺がそれなりに苦労して倒したネズミを片手間で倒してたもん。
なんか木で出来た棍棒みたいなので、一振りでグシャって。
俺よりも遥かに強い。
あいつらからは当分逃げ回る。
幸い、天井に貼り付いてたら気付かれないみたいだし。気付いてて無視されてたら助かるけど、腹立つよね。
それから、またゴブリンが居なくなるまで超音波の練習をしてネズミ探しに出かけた。
まぁ、何処にでも居るのかすぐ見つかるんだけど。
で、前回と同じ様に背中に貼り付いて能力を使う。やっぱり、血とは別に何かが流れて来た。
俺は天井に戻り、器を確認する。
「キキッ。キキキッ」 (うん。やっぱり増えてる)
なるほど?
生き物を殺すと何かが流れて、器に貯まると。
やっぱり経験値説が濃厚か。これは、満タンになったらどうなるのか。定番で言ったら進化なんだけどなぁ。
後は器が増えたり、大きくなったり?
ふむふむ。これは検証が必要ですな!
なんか蝙蝠になってから、随分楽しんでる様な気がする。前世はまず、楽しむという思考が無かったからなぁ。
ここが異世界なら、俺にとやかく言ってくる人はいないし生き物も殺せる。今の所、ネズミだけだが血も美味い。
ゴブリンはどんな味なんだろうか?
それ以外の生き物は? 気になる事が多すぎる。
それに背中に口を直接当ててるからか、命が消えていく感覚をかなり身近に感じられる。
こんなに楽しい事はない。
現状では、俺を脅かす程の勢力もゴブリンだけだし、かなりこの生活に満足してる。
これは決して、前世では味わえなかった事だ。
出来れば、ここから成長して自由にやりたい放題出来る程の力を手に入れたい。
そして気に入らないやつは片っ端から殺して血を飲みたい。
俺は自分でもイカれた思考をしてると思いながらも、次なるネズミ探しに向かった。
11
お気に入りに追加
254
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【R-18】吸血鬼の家庭教師~年下貴族に溺愛求婚されています【挿絵付】
臣桜
恋愛
魔族や様々な種族が入り乱れるエイダ王国で、人間のクレハは浮いた存在だった。一般母子家庭に育ち、沢山勉強をしていい職に就き母を楽させるのが夢だ。ある日クレハは喧嘩の現場を見てしまい、背後から襲われ昏倒した赤髪の青年を助ける。青年は高位魔族――吸血鬼の貴族だった。ノアと名乗る青年と一時は別れたものの、再び出会ったクレハは彼にどうしようもなく惹かれてゆく。
※表紙はニジジャーニーで生成しました。
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
転移想像 ~理想郷を再現するために頑張ります~
すなる
ファンタジー
ゼネコン勤務のサラリーマンが祖父の遺品を整理している中で突如異世界に転移してしまう。
若き日の祖父が言い残した言葉に導かれ、未知の世界で奮闘する物語。
魔法が存在する異世界で常識にとらわれず想像力を武器に無双する。
人間はもちろん、獣人や亜人、エルフ、神、魔族など10以上の種族と魔物も存在する世界で
出会った仲間達とともにどんな種族でも平和に暮らせる街づくりを目指し奮闘する。
その中で図らずも世界の真実を解き明かしていく。
三国志 群像譚 ~瞳の奥の天地~ 家族愛の三国志大河
墨笑
歴史・時代
『家族愛と人の心』『個性と社会性』をテーマにした三国志の大河小説です。
三国志を知らない方も楽しんでいただけるよう意識して書きました。
全体の文量はかなり多いのですが、半分以上は様々な人物を中心にした短編・中編の集まりです。
本編がちょっと長いので、お試しで読まれる方は後ろの方の短編・中編から読んでいただいても良いと思います。
おすすめは『小覇王の暗殺者(ep.216)』『呂布の娘の嫁入り噺(ep.239)』『段煨(ep.285)』あたりです。
本編では蜀において諸葛亮孔明に次ぐ官職を務めた許靖という人物を取り上げています。
戦乱に翻弄され、中国各地を放浪する波乱万丈の人生を送りました。
歴史ものとはいえ軽めに書いていますので、歴史が苦手、三国志を知らないという方でもぜひお気軽にお読みください。
※人名が分かりづらくなるのを避けるため、アザナは一切使わないことにしました。ご了承ください。
※切りのいい時には完結設定になっていますが、三国志小説の執筆は私のライフワークです。生きている限り話を追加し続けていくつもりですので、ブックマークしておいていただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる