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第一章 名も無き蝙蝠
プロローグ
しおりを挟む「ふんふんふ~ん」
俺はとある一軒家の一室で、鉈を振り下ろす。
さっきまではぴーぴー喚いていたが、今はビクビクと痙攣するだけで声を上げる事もない。
ゆっくりと体をバラしながら、体に付いた返り血をペロリと舐める。
「ぺっ。こいつのはまじぃなぁおい」
初めて人を殺したのは、1ヶ月前。
両親と呼べるほど、親らしい事をしてもらった覚えはない。口を開けば罵詈雑言。暴力なんて当たり前で、自分の子供に今日の晩飯を盗んで来いとか言う毒親だった。
それでも、俺は我慢した。我慢したのだ。
唯一の味方だったばあちゃんが死ぬまでは。ばあちゃんは末期癌で入院していた。
毒親共が入院費を出す訳もなく、年金を食い潰してたので俺は高校3年間色々なバイトを掛け持ちして治療費を稼いできた。
時に危ない橋を渡った事もあるが、なんとか生き延びばあちゃんが死ぬ日までやってこれたのだ。
「今まで、ありがとうねぇ。もういいのよ。これからは×××ちゃんの好きな様に生きなさい」
この言葉の次の日、ばあちゃんは死んだ。
葬式の手配等も全部俺がやり、ようやく落ち着いてきた頃。
「やっと死にやがったか、あのクソババァめ。みっともなく生き永らえやがって。おい! ×××! これからはお前が稼いで来た金は全部俺に渡せ! いいな?」
「丁度よかったわ。欲しいバッグがあったのよ。それなりに稼いでるんでしょ?」
俺の中の何かがプツッと切れた音がした。
無言で台所に行って包丁を取り、父の背後から首に包丁を振り下ろした。返り血で服がベトベトになったが、気にせず何度も何度も刺した。
最初の1回で既に息が無かったのか、声を上げる事は無かったが母の方はキャンキャン鳴いていた。
煩わしく思った俺は、刺していた手を止めガムテープで口を塞ぎ手足を固定して逃げられないようにして、涎やら鼻水やらを無様に垂れ流してる姿を眺めていた。
その時に、無意識に返り血を舐めてしまった。
「え? うまっ。血ってこんなに美味しいもんやったっけ?」
確かに、今まで上等な物を食べてきた訳ではないが、血が美味しいと思える程食べる物に困った事はない。自分の殴られた時の血は美味しく無かったし。
それから俺は、母がみっともなく命乞いするのを無視して、少しずつ拷問の様に殺した。
「まずっ! 個人差がある感じ? まぁどうでもいいか」
ぐちゃぐちゃになった母の死体から出たいた血をぺろりの舐めてみた。父の方は美味しかったのに。
なんだか少し残念な気持ちになっちゃったよ。血の味なんかに期待していた俺が馬鹿だった。
「ふぅ~」
2人を殺して、少し経った後に我に返ってみても人を殺した罪悪感等は一切なかった。
元々サイコパスの素質があったのか、それともどこかで心が壊れてしまったのか。
「どっちでもいいかぁ。ごめんな、ばあちゃん。犯罪者になっちゃったよ」
まぁ、今までも法を犯した事が無い訳ではないので今更なんだが。流石に人殺し程やばい事はやっていない。多分。めいびー。
「これからどうすっかなあ」
俺は今まで治療費を稼ぐ事以外に自分でやりたいと思った事がない。
幼い頃から親に押さえ付けられていたせいで自分から何か行動する事にブレーキがかかってしまっている。
強いて言うなら図書館に篭って本を読むくらい。あそこはお金のかからない避難所みたいなもんだった。
「あ~でも、刺し殺してる時はなんか高揚感みたいなのがあったなぁ」
初めての人殺しで気分がハイになってるだけかと思ったが、今思い返してみても楽しいと思った事がない俺が、快楽に酔いしれながら嬉々として刺していた。
「なるほど。俺は人殺しが好きなのか」
サイコパスってやつ? いや快楽殺人だから、シリアルキラー? 意味合ってるかわからんけど。
何かを壊す、奪う。想像しただけで甘美。
「今までの人生でムカついた奴。片っ端から殺そう」
それから1ヶ月。
小中高でいじめの如く絡んで来た奴。その場で対処してたから激化する事は無かったけど、それでも陰湿な嫌がらせは続いていた。
そしてそれを見てみぬフリをした教師。
思い付く限りで俺の人生で不快だった人間を全て殺した。時間が経ち過ぎて人を探すのに苦労したけど、後ろ暗いお仕事をしている人間にツテがあったので、少し手伝ってもらったりもした。
「最後の殺しも終わったなっと」
そして、最後の人間を殺した後。
俺は雑居ビルの屋上に来ていた。
「楽しかったなぁ。やっぱり俺は狂ってるみたいだな。人殺しがこんなに楽しいなんて。もっといっぱい殺したかったなぁ」
流石に無関係な一般人にまで手を出す気はない。
俺が殺して来た奴の中に世間一般的には善人と呼ばれる人間もいた。俺にとっては良い奴では無かったので殺したが。
だが、浅い人間関係の俺ではもう打ち止めである。
「来世があればもっと人殺しが出来る環境を期待しよう。こんだけ人を殺したんだ。あったとしてもまともな人生を送れないだろうけど」
ごめんね。ばあちゃん。
俺はそう呟きながら、ビルの屋上から飛び降りた。
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