150 / 152
第6章 シークレット始動
第134話 お疲れ様でした
しおりを挟む「ねっむ。大村さんは大丈夫ですか?」
「皆さんが頑張ってますからね。私だけ泣き言を言う訳にはいきません」
時刻は夜中。
狭間はお昼で時間が固定されてるっぽいので、まだ明るいが現実時間は立派に夜中である。
いつもなら桜と陽花でノクターンの時間になってるはずなのだ。しかし、まだ亀さんを仕留められない。徐々に削ってはいってるが。
俺はくあっと欠伸をしながら、大村さんに大丈夫か問い掛けるが、目をギンギンにさせて撮影している。テレビ局時代のブラック社畜魂が呼び起こされたのかもしれん。
あくびしてぼけーっとしてる俺が薄情者みたいだ。いや、まぁそうなんだけど。
さっきからずっと早く帰って寝たいなーとしか思ってないし。俺が魔法で仕留めちゃおっかなぁと思ったのも一度や二度とじゃない。
「ぬぅ!!」
「どうした武田殿! もうバテたか!? 筋肉を唸らせよ!! ここが踏ん張りどころだ!」
どのギルドも疲れが見える。
今は『シークレット』と『MMM』が受け持って、亀に攻撃してるけど、開始当初のキレがない。
「王水ですよぉ」
陽花は2ℓのペットボトル片手に公英達が物理攻撃してる所を避けつつ液体をばら撒く。
そして水をゴキュゴキュと飲み回復。そしてまた液体を撒き散らすの繰り返し。
グジュグジュになった亀の体を桜が糸を巧みに操作して傷口を広げる。
多分これが一番ダメージを稼いでる。想像するだけで痛そうだし。
「ブレース!」
しばらくすると口元が光って、魔力が収束していくのが分かる。
それに気付いた誰かが、ブレスが来ると注意喚起をする。しかし、これの対策は既に済んである。
「シャコパンチ!」
いざブレスを放つとなった瞬間、神田さんがジャンプしながら亀の顎目掛けてパンチ。
すると、亀のブレスは真上に放たれる。
「ひゃー! 毎回命懸けです!!」
なんて事を言いながら楽しそうな神田さん。
シャコはパンチ力が上がるのは勿論、目も良くなるみたいだからね。タイミングを合わせるなんて余裕なんだろう。
「そろそろ交代の時間です!!」
「わいらも行くでー!! お前ら! 気合い入れろや!」
交代の時間になり、『リア獣撲滅』と『スキナー』が前に出る。
これをひたすら繰り返して、なんとか亀を削って倒そうって作戦だな。
「運が悪かったよねぇ。そこらの1級の魔物ならもう倒せてるだろうに」
亀から少し離れた場所の拠点に戻って来た二つのギルドを見ながら呟く。
水分と栄養を補給すると、そのまま砂の上に倒れ込んだ二つのギルドは満身創痍だ。
いや、どのギルドもそうなんだけど。
「まぁ、お陰で戦闘技術がどんどん上がってるのは良い事だな。やっぱり実戦に勝るもんはないね」
今ならどのギルドも2級は攻略出来るんじゃないかな。それぐらいこの極限状態での戦いのお陰で成長出来ている。
日本探索者の未来は明るいね。よきかな。
「んー? これもうちょいだな」
「分かるんですか?」
「なんとなくですけど」
時刻は朝6時を少し過ぎたところ。
亀の姿はボロボロ。なのに、亀自体はまだまだ余裕という姿勢を崩していない。
が、多分あれはマジで限界が迫ってるやつだ。
気丈に振る舞ってるだけだと思う。
「皆さん、聞きましたか! ここで総攻撃です! 仕留めますよ!!」
隣で死んだ顔しながら聞いていた稲葉さんが、俺の呟きを拾って勝負に出る事にしたらしい。
休憩していた他のギルドも目をギラつかせて亀を睨んでいる。
「油断だけはしないように! 行きましょう!!」
「「「うおおおおおおっ!」」」
うむうむ。この調子なら後1時間もすれば終わるんじゃないかな。
みんな良く頑張ったねぇ。
「映画のクライマックスみたいだな」
「ここは盛り上がりますよー!!」
大村さんはメモしながら撮影するという器用な事をしながら興奮している。
それでも手は一切ブレない。『撮影』すげぇ。
それから1時間弱。
とうとう亀の魔物が光の粒子となって消えていく。
「か、勝ちました!!」
「「「うおおおおおっ!」」」
稲葉さんが息を整えながら勝鬨を上げる。
他のギルドも万歳してはしゃぎまくりだ。
しかし、一気に緊張の糸が切れたのか、フラフラし始める人が多数。
「勝利の余韻に浸りたいところですが、一旦出てしっかり休みましょう。報酬の分配はまた落ち着いてからで。万全な状態で会う為に三日後に再集合しましょう」
ここまでボケっと見てた俺が仕切って申し訳ないけど、とにかく休息するのが重要である。
俺は魔王と三日三晩の死闘を終えたあと、その場で爆睡したからね。この調子だとみんなもそうなりかねない。フカフカのベッドで休んで下さい。
「はい。皆さん、凱旋ですよー。無理矢理にでもキリッとした顔して下さいねー」
多分外は野次馬がたくさんいるだろう。
長時間の攻略で心配もしてるかもしれない。
ボロボロの姿のほうが『らしさ』は出るかもしれないが、どうせならカッコよく撮ってもらたいのが本音だろう。俺は全員に浄化をぶちかまして綺麗にして狭間から出るように促す。
「で、で、で、出て来ました!! 全滅したのかという噂が流れていましたが、なんのその!! 『暁の明星』が! 『風神雷神』が! 『リア獣撲滅』が!! ああ! 全ギルド無事です!」
案の定狭間から出るとそれはもう凄い人だった。
まだ朝の7時ぐらいだってのに。ご苦労様です。
「はい。かなり苦戦しましたが、1級の狭間、攻略成功です」
全ギルドがリポーターさんに捕まってこれでもかってぐらいインタビューされている。
取り繕ってるが、みんなはマジで限界なのだ。
早く帰って休ませてやらんと。
「皆さーん! インタビュー等は後日でお願いしまーす! ずっと戦い続けだったので、どのギルドもお疲れです!」
パンパンと手を叩いて俺に注目してもらう。
「インタビューなら俺が受けますよー! 何せほとんどボケっと見てただけですからね! 元気は有り余ってます!」
俺がそう言うと我先にとリポーターさんがやって来る。俺は基本的にインタビューとかあんまり受けないからね。このチャンスは逃せないだろう。
そして俺が注目を集めてるうちに、全ギルドはそそくさと帰って行った。
みんなは俺が気を使ったと思ってるだろう。
甘い甘い。最後の最後で美味しいところ取りよ。
なんちゃって。皆さんお疲れ様でした。
10
お気に入りに追加
750
あなたにおすすめの小説
【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~いざなわれし魔の手~
高見南純平
ファンタジー
最弱ヒーラーの主人公は、ついに冒険者パーティーを100回も追放されてしまう。しかし、そこで条件を満たしたことによって新スキルが覚醒!そのスキル内容は【今まで追放してきた冒険者のスキルを使えるようになる】というとんでもスキルだった!
主人公は、他人のスキルを組み合わせて超万能最強冒険者へと成り上がっていく!
~いざなわれし魔の手~ かつての仲間を探しに旅をしているララク。そこで天使の村を訪れたのだが、そこには村の面影はなくさら地があるだけだった。消滅したあるはずの村。その謎を追っていくララクの前に、恐るべき魔の手が迫るのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
無限の成長 ~虐げられし少年、貴族を蹴散らし頂点へ~
りおまる
ファンタジー
主人公アレクシスは、異世界の中でも最も冷酷な貴族社会で生まれた平民の少年。幼少の頃から、力なき者は搾取される世界で虐げられ、貴族たちにとっては単なる「道具」として扱われていた。ある日、彼は突如として『無限成長』という異世界最強のスキルに目覚める。このスキルは、どんなことにも限界なく成長できる能力であり、戦闘、魔法、知識、そして社会的な地位ですらも無限に高めることが可能だった。
貴族に抑圧され、常に見下されていたアレクシスは、この力を使って社会の底辺から抜け出し、支配層である貴族たちを打ち破ることを決意する。そして、無限の成長力で貴族たちを次々と出し抜き、復讐と成り上がりの道を歩む。やがて彼は、貴族社会の頂点に立つ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
『自重』を忘れた者は色々な異世界で無双するそうです。
もみクロ
ファンタジー
主人公はチートです!イケメンです!
そんなイケメンの主人公が竜神王になって7帝竜と呼ばれる竜達や、
精霊に妖精と楽しくしたり、テンプレ入れたりと色々です!
更新は不定期(笑)です!戦闘シーンは苦手ですが頑張ります!
主人公の種族が変わったもしります。
他の方の作品をパクったり真似したり等はしていないので
そういう事に関する批判は感想に書かないで下さい。
面白さや文章の良さに等について気になる方は
第3幕『世界軍事教育高等学校』から読んでください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる