異世界帰りの憑依能力者 〜眷属ガチャを添えて〜

Jaja

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第6章 シークレット始動

第134話 お疲れ様でした

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 「ねっむ。大村さんは大丈夫ですか?」

 「皆さんが頑張ってますからね。私だけ泣き言を言う訳にはいきません」

 時刻は夜中。
 狭間はお昼で時間が固定されてるっぽいので、まだ明るいが現実時間は立派に夜中である。
 いつもなら桜と陽花でノクターンの時間になってるはずなのだ。しかし、まだ亀さんを仕留められない。徐々に削ってはいってるが。

 俺はくあっと欠伸をしながら、大村さんに大丈夫か問い掛けるが、目をギンギンにさせて撮影している。テレビ局時代のブラック社畜魂が呼び起こされたのかもしれん。
 あくびしてぼけーっとしてる俺が薄情者みたいだ。いや、まぁそうなんだけど。
 さっきからずっと早く帰って寝たいなーとしか思ってないし。俺が魔法で仕留めちゃおっかなぁと思ったのも一度や二度とじゃない。

 「ぬぅ!!」

 「どうした武田殿! もうバテたか!? 筋肉を唸らせよ!! ここが踏ん張りどころだ!」

 どのギルドも疲れが見える。
 今は『シークレット』と『MMM』が受け持って、亀に攻撃してるけど、開始当初のキレがない。

 「王水ですよぉ」

 陽花は2ℓのペットボトル片手に公英達が物理攻撃してる所を避けつつ液体をばら撒く。
 そして水をゴキュゴキュと飲み回復。そしてまた液体を撒き散らすの繰り返し。
 グジュグジュになった亀の体を桜が糸を巧みに操作して傷口を広げる。
 多分これが一番ダメージを稼いでる。想像するだけで痛そうだし。

 「ブレース!」

 しばらくすると口元が光って、魔力が収束していくのが分かる。
 それに気付いた誰かが、ブレスが来ると注意喚起をする。しかし、これの対策は既に済んである。

 「シャコパンチ!」

 いざブレスを放つとなった瞬間、神田さんがジャンプしながら亀の顎目掛けてパンチ。
 すると、亀のブレスは真上に放たれる。

 「ひゃー! 毎回命懸けです!!」

 なんて事を言いながら楽しそうな神田さん。
 シャコはパンチ力が上がるのは勿論、目も良くなるみたいだからね。タイミングを合わせるなんて余裕なんだろう。

 「そろそろ交代の時間です!!」

 「わいらも行くでー!! お前ら! 気合い入れろや!」

 交代の時間になり、『リア獣撲滅』と『スキナー』が前に出る。
 これをひたすら繰り返して、なんとか亀を削って倒そうって作戦だな。

 「運が悪かったよねぇ。そこらの1級の魔物ならもう倒せてるだろうに」

 亀から少し離れた場所の拠点に戻って来た二つのギルドを見ながら呟く。
 水分と栄養を補給すると、そのまま砂の上に倒れ込んだ二つのギルドは満身創痍だ。
 いや、どのギルドもそうなんだけど。

 「まぁ、お陰で戦闘技術がどんどん上がってるのは良い事だな。やっぱり実戦に勝るもんはないね」

 今ならどのギルドも2級は攻略出来るんじゃないかな。それぐらいこの極限状態での戦いのお陰で成長出来ている。
 日本探索者の未来は明るいね。よきかな。



 「んー? これもうちょいだな」

 「分かるんですか?」

 「なんとなくですけど」

 時刻は朝6時を少し過ぎたところ。
 亀の姿はボロボロ。なのに、亀自体はまだまだ余裕という姿勢を崩していない。
 が、多分あれはマジで限界が迫ってるやつだ。
 気丈に振る舞ってるだけだと思う。

 「皆さん、聞きましたか! ここで総攻撃です! 仕留めますよ!!」

 隣で死んだ顔しながら聞いていた稲葉さんが、俺の呟きを拾って勝負に出る事にしたらしい。
 休憩していた他のギルドも目をギラつかせて亀を睨んでいる。

 「油断だけはしないように! 行きましょう!!」

 「「「うおおおおおおっ!」」」

 うむうむ。この調子なら後1時間もすれば終わるんじゃないかな。
 みんな良く頑張ったねぇ。

 「映画のクライマックスみたいだな」

 「ここは盛り上がりますよー!!」

 大村さんはメモしながら撮影するという器用な事をしながら興奮している。
 それでも手は一切ブレない。『撮影』すげぇ。


 それから1時間弱。
 とうとう亀の魔物が光の粒子となって消えていく。

 「か、勝ちました!!」

 「「「うおおおおおっ!」」」

 稲葉さんが息を整えながら勝鬨を上げる。
 他のギルドも万歳してはしゃぎまくりだ。
 しかし、一気に緊張の糸が切れたのか、フラフラし始める人が多数。

 「勝利の余韻に浸りたいところですが、一旦出てしっかり休みましょう。報酬の分配はまた落ち着いてからで。万全な状態で会う為に三日後に再集合しましょう」

 ここまでボケっと見てた俺が仕切って申し訳ないけど、とにかく休息するのが重要である。
 俺は魔王と三日三晩の死闘を終えたあと、その場で爆睡したからね。この調子だとみんなもそうなりかねない。フカフカのベッドで休んで下さい。

 「はい。皆さん、凱旋ですよー。無理矢理にでもキリッとした顔して下さいねー」

 多分外は野次馬がたくさんいるだろう。
 長時間の攻略で心配もしてるかもしれない。
 ボロボロの姿のほうが『らしさ』は出るかもしれないが、どうせならカッコよく撮ってもらたいのが本音だろう。俺は全員に浄化をぶちかまして綺麗にして狭間から出るように促す。

 「で、で、で、出て来ました!! 全滅したのかという噂が流れていましたが、なんのその!! 『暁の明星』が! 『風神雷神』が! 『リア獣撲滅』が!! ああ! 全ギルド無事です!」

 案の定狭間から出るとそれはもう凄い人だった。
 まだ朝の7時ぐらいだってのに。ご苦労様です。

 「はい。かなり苦戦しましたが、1級の狭間、攻略成功です」

 全ギルドがリポーターさんに捕まってこれでもかってぐらいインタビューされている。
 取り繕ってるが、みんなはマジで限界なのだ。
 早く帰って休ませてやらんと。

 「皆さーん! インタビュー等は後日でお願いしまーす! ずっと戦い続けだったので、どのギルドもお疲れです!」

 パンパンと手を叩いて俺に注目してもらう。

 「インタビューなら俺が受けますよー! 何せほとんどボケっと見てただけですからね! 元気は有り余ってます!」

 俺がそう言うと我先にとリポーターさんがやって来る。俺は基本的にインタビューとかあんまり受けないからね。このチャンスは逃せないだろう。
 そして俺が注目を集めてるうちに、全ギルドはそそくさと帰って行った。

 みんなは俺が気を使ったと思ってるだろう。
 甘い甘い。最後の最後で美味しいところ取りよ。
 なんちゃって。皆さんお疲れ様でした。
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