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第6章 シークレット始動

第131話 1級のボス

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 「ええ。イレギュラーが無ければ今日中にボスに挑む予定です」

 協会お抱え探索者の真田さんと『暁の明星』の稲葉さんが狭間の前でインタビューを受けている。
 俺はそれを横目で眺めながら、屋台で買ったベビーカステラをもしゃつく。

 大阪の1級の狭間を攻略をし始めてそろそろ一ヶ月が経とうとしている。
 思った以上に時間が掛かったなという印象。
 やっぱり1級の狭間は数と質が段違いだ。それでも、俺は初日の結界付与以外は手出しをしていない。世界の探索者よりは先に進んでるなとは思いますね。

 攻略に乗り出した他国は地獄らしいし。
 しかも情報を見る限り、とりあえずアメリカの狭間は禁忌領域っぽい。ご愁傷様です。
 死傷者の数が半端なくて、国民からの突き上げがやばいらしい。
 どうせ、最初から俺に要請してたらしてたで文句を言うくせにな。可哀想な政府だぜ。

 「ボスを仕留めるのは一日掛かりになるかもな」

 ベビーカステラに飽きたので、残りを桜にあげて俺は新たにたまごせんべいを大量購入する。
 攻略が佳境なのは、毎日アップされる動画を見れば分かる。そのせいで、また野次馬が増えてきた。
 そして今、今日ボス攻略をすると宣言したからか大盛り上がりだ。

 ボスの姿は既に確認してある。
 だけど盛り上がってるところ悪いんだが、もしかしたら今日中に攻略の報告をするのが難しいかもしれない。厄介だからね。あれは。
 真田さんと稲葉さんも今日中は厳しいかもしれない事をリポーターさんに伝えている。

 「じゃ、行きますか」

 インタビューが終わった。
 今回の攻略は協会のサイトに毎日動画がアップされてるし、テレビでも連日取り上げられている。
 そのお陰で攻略に参加してるギルドの株は鰻登りだ。

 この光景を見ると、他国が自力で攻略したがる気持ちも分かるよね。自国の探索者の優秀さのアピール、経済効果。どれも馬鹿にならない。
 しかも1級攻略なんてセンセーショナルな話題。
 俺が攻略するのとは訳が違うんだろうね。俺の馬鹿みたいな魔法のゴリ押しじゃなくても、しっかり訓練を積めば攻略出来るって証明出来るのは、日本にとって、人類にとって大きい事なんだろう。
 それで死者を出してりゃ意味ないと思うが。

 そんな事を思いながら大歓声に後押しされて、俺達は1級の狭間に入って行った。




 「はーい。じゃあ、ボス情報のおさらいをしますよー」

 俺は全員が狭間に入って、戦闘準備が整ったのを確認すると、パンパンと手を叩いて注目してもらう。

 因みに、今回の狭間には魔物を生み出す系の女王種が居なかったので、ボス以外の魔物は全て始末済みだ。だからここで呑気に会議出来るし、ボスと戦う事に集中出来る。それでも今回のボスはきついと思うけどね。

 「既に見えてますけど、あれがボスです」

 少し離れた場所にどーんと鎮座してるのは、小さい山と勘違いしてしまいそうな巨大な亀。
 名前は忘れた。てか、あれは異世界討伐した記憶がない。見た事はあるし、どんな魔物かも知ってるけどさ。

 「固いです。とにかく固いです」

 異世界での評価は限りなくA級に近いB級の魔物として認定されている。
 恐らく凶暴性があったら、A級認定されてたんじゃないかと思う。あれ、こっちから襲わなかったら無害だから。

 「素の物理防御が高いのは勿論、ある程度の魔法防御があって、土魔法を使ってきます」

 固さだけだったら、弱めのS級ぐらいあってもおかしくない。
 あれは大人しいから討伐する必要はないんだけど、素材が薬として有用らしく、時折り貴族やら薬師から高額の依頼があるらしい。
 知り合いの冒険者がそんな事を言っていた。そいつはS級冒険者なんだけど、金を積まれてもごめんだと言っていた。割に合わないらしい。

 つまりそれぐらい厄介で固いって事だ。
 そして極め付けは。

 「あいつは基本結界魔法で防御してきます」

 そう。あんなに固いのに更に結界魔法である。
 あほかて。どれだけ防御を固めたら気が済むんだよ。攻撃は土魔法とふみつけやら、巨体を活かした攻撃だけだが、とにかく固い。これが時間が掛かるであろう理由ね。

 「聞けば聞くほどクソボスだよね~」

 「桜ちゃん。お口が悪いですよぉ」

 一通りボスの説明を終えると、桜が嫌そうな顔をしながら亀を睨んでいる。
 陽花が嗜めてるけど、ほんとにクソボスなんだ。
 てか、普通は手を出す必要がない。大人しいんだし。狭間崩壊したらやばいから結局討伐するしかないんだけどさ。

 あの亀もたまったもんじゃないだろうな。
 放置しておいてくれれば、大人しくしてるのに討伐しに来るんだから。
 すまんな。これが異世界なら放置なんだが。
 こちらの世界は崩壊されると色々面倒な事になるので。砂漠なんて崩壊してみろ。大阪が砂まみれになるぞ。

 「基本方針は結界魔法をブチ破る。もしくは魔力切れまでタコ殴る。で、魔力が回復する前にあの防御を貫いて討伐。それが出来なかったら、また一から同じループです」

 あー想像しただけでげんなりする。
 公英とか『MMM』はやる気満々なんだけど、そのやる気もいつまで持つか。
 これ、三日三晩戦い続ける可能性もあるんだよね。下手したらそれ以上。

 そういう戦いは魔王だけで充分なんだよなぁ。
 俺がここでしゃしゃり出て、魔法でぐしゃって出来たらとれだけ楽か。
 暇死する可能性がありますぞ。
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