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第6章 シークレット始動

第114話 MMM

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 既視感。
 俺の目の前の光景を一言で表すならそうなるだろう。もうね。事前情報で知ってたとはいえ勘弁して欲しいって思ってるのが本音ですよ。

 「ぐわっはっはっはっ! 織田天魔殿! お初にお目にかかる! 儂は武田!! 不肖ながら『MMM』のリーダーを務めておる!! 今日からよろしく頼むぞ!! ぐわっはっはっは!」

 「よろしくお願いしますね」

 「がっはっはっは! 武田殿!! 中々良い筋肉だ!! 相当鍛えてるとみえる!! これはこれからの鍛錬が楽しみになってきたぞ!! がっはっはっは!」

 「おお! 蒲殿!! 動画で見た時から是非語りたいと思っていたのだ!! 今日時間はあるか!?」

 「勿論よ!! 今日は寝かせんぞ!!」

 「「わっはっはっは!!」」

 暑苦しい。本当にもう暑苦しい。
 『MMM』。マッスルマッスルマッスルの略らしい。このギルドは筋肉を育て上げる事を第一の目的にしてるギルドで構成員の九割が男性という非常に暑苦しいギルドだ。一割女性がいる事に驚きだけど、前世でも女性ボディビルダーはいたし、筋肉に魅了される女性ってのもいるんだろう。
 現に安藤さんは、このギルドか『暁の明星』かでかなり悩んだらしいし。

 「公英。毎日言ってるけど、声のトーンをもう少し落として。毎度毎度ビクッてなるんだよ」

 「むっ!! それはすまんな!!」

 「武田さんも。そんなに声を張り上げなくても充分聞き取れますので…。もう少し音量調整していただけると…」

 「それは失礼した!! 蒲殿に会えると舞い上がってのかもしれん!!」

 「「わっはっはっは!!」」

 俺が忠告した意味よ。
 こいつらの声の標準がおかしいんだ。
 テレビは良いよね。リモコン一つで音量調整が出来て。機械オンチの俺でも出来るんだ。
 でもこいつらは中々難しい。悪気が無さそうなのがタチ悪い。

 「もういいや。ほら、好きにどこでも行ってくれ。明日の集合時間に遅れないように」

 「では武田殿! 早速ジムに行くとしようか!」

 「おお! 蒲殿! どこまでもお供しますぞ!」

 暑苦しく肩を組みながら執務室を出て行った。
 はぁ。なんか疲れたなぁ。今日は始まったばっかりなんだけど。これから来るであろうギルドを出迎える役があるんだけど、もう休んでもいいかな。

 「失礼しますねぇ」

 「どうぞー」

 行儀悪くフッカフカの回転椅子でグルグル回って三半規管をいじめてると、ノックをして陽花が入ってきた。昨日は桜が『風神雷神』の所に泊まりに行ってたから、ラウンジでお酒の相手をしたんだけど、こいつは見た目に違わずお酒が強い。
 能力で中和してるんじゃないかって思ってます。
 どれだけ度数が強いお酒を飲んでも顔色が全く変わらないんだもん。

 「うふふ。きみちゃんの相手は疲れそうですねぇ」

 「きみちゃん? ああ、公英か。疲れるよ。悪い奴じゃないのは分かってるんだけどな。裏表が無さすぎるのも考えものだな」

 きみちゃんって。似合わなすぎるだろ。
 ダルマとかその辺がピッタリだぜ。

 「長い目で見守ってあげてください。『暁の明星』と『夜明けの時間』、協会のお抱え探索者の皆さんが到着したみたいなのでぇ、お伝えに参りましたぁ」

 「おお。一気に来たな。すぐに通してくれ」

 協会のお抱え探索者は明日になるかもって連絡があったんだけど。
 なんとか今日来れたらしい。これで明日からブートキャンプを開催出来るな。

 その後三つのギルド、協会のお抱え探索者はギルドじゃないけど、軽く挨拶をして今日の仕事は終わり。『暁の明星』の安藤さんがソワソワと『MMM』の事を探してたからジムに案内したけど。やはり筋肉に興味があるらしい。

 「うわぁ」

 「うわぁ!!」

 俺と安藤さんの言葉は同じなのにテンションが全く違う。俺は引き気味。安藤さんは歓喜。
 ジムでは滝のように汗を流して武田さんや公英、『MMM』のギルド員が筋トレをしていた。

 「ふん! ふん! ふん!』

 「浄化してぇ」

 終わったら念入りに浄化するように言っておこう。こんな事を言うのは申し訳ないけど、あいつらが使った後におんなじ機材は使いたくない。
 浄化の魔道具は設置してあるし、それはもう念入りに浄化してもらうようにしよう。

 喜んであの輪に入り込んで行く安藤さんを勇者の様な目で見送りつつ、今日の業務は終了したので家に帰る。実働時間は全然ないのに今日は疲れた。

 「うーん。まだ昼にもなってない。桜は今日も帰ってこないのかな?」

 「今日の夜には帰ってくるって言ってましたよぉ?」

 リビングのソファで寝転んでると、その隣に座ってわざわざ膝枕にチェンジしてくれた陽花が教えてくれる。滅茶苦茶良い匂いするなぁ。

 「うふふ」

 妖艶だぁ。流し目で笑うのってなんでこんなに良いもんなんだろうね。だめだな。まだ昼前だってのに、なんだかムラムラしてきたぞ。

 「あらあら? 私の誘惑は成功ですかぁ?」

 「大成功だな」

 「うふふ。私の能力を駆使した技を堪能してもらいましょうか」

 それな。天魔君ずっと気になってました。
 なんかタイミングがなくて楽しめず終いだったんだけど、今日がそうか。

 「よし! お風呂に行くぞ!」

 「お付き合いします」

 わははははは! 疲れなんて吹き飛んだぜ!!
 とことん楽しませてもらう!!
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