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第5章 海外遠征

第93話 下手人

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 「落ち着いて下さーい!」

 「銃撃した犯人はもう捕まえてあるよ~!」

 やる気を失ってた野次馬達が続々と起き始めた。
 またもやパニックになりそうだったので、俺と桜は声を張り上げて落ち着かせる。

 「憑依ポゼッション:慈悲ミカエル

 憑依して浄化と倒れた時に怪我してるかもしれないので回復魔法を撒き散らす。
 そのお陰でなんとか落ち着き始めた。

 「お、織田さん! ありがとうございます!」

 今日の案内の人が慌ててこっちにやってくる。
 まぁ、フランスの協会サイドからしたらかなりの失態だろう。
 わざわざ狭間を攻略する為に呼んだのに襲撃されちゃってるんだから。

 「いえいえ。犯人を捕まえてるんですけど、この人の事知ってますか?」

 俺は視線で糸でぐるぐる巻きにされてる犯人を案内の人に見せる。

 「ウムティ!? 何故ここに!?」

 おや。知ってるご様子。
 フランスやモナコでは有名な人なのかな?

 「えーっと? 誰でしょう?」

 「あ、失礼しました。ウムティはロンシャンのクランメンバーの一人でして…。一応織田さん達が2級の狭間で捕まえてくれたんですが…」

 あー。勝手に狭間に入って行った集団か。
 パリで捕まってたのになんでモナコにいるの?
 脱走されたのかしらん? ちょっと警備がガバガバ過ぎる気がするんだが。

 「すみません。すぐに向こうに確認します」

 案内の人はスマホを取り出して、いそいそとどこかに電話をし始めた。
 パリの協会でしょうかね。

 「うーん? パリの協会に脱走を手引きした人でもいるのかね?」

 「いるでしょ~。じゃないと脱走してからモナコにまでこれないよ~」

 そうだよなー。
 飛行機だから一時間ちょっとでここまで来れたけど、他の交通手段ならもっと時間はかかるし、もし飛行機に乗ってきたとしても、脱走犯なんだから簡単に乗れる筈がない。
 誰かかが手引きしたって考えるのが普通だよな。

 「天魔君はフランスで嫌われてたのかな?」
 
 せっかくフランスの方々の為に一生懸命血反吐を吐いて攻略したのに。ガチしょんぼり沈殿丸。

 「お金の事しか考えてないでしょ~」

 「それを言うな」

 イメージが悪いでしょ。人類の安全の為にとかの方がそれっぽい。

 「まぁ、自分達が攻略してた所に後から掻っ攫われたら良い気はしないよね」

 「こっちからしたら良い迷惑なんだけどね~。攻略が無理だと思われたから頼まれたのにさ~」

 人間だもの。
 感情というものは厄介ですよ。
 許す気はありませんけど。

 「お待たせしました。パリの探索者協会でも騒ぎになってるみたいで…。どうやら協会長が脱走を手引きしたみたいなんです」

 案内の人が電話から帰ってきたんだけど、協会長が関わってると聞いてびっくりした。
 だってそんな素振り一切無かったんだもん。
 人の良い老人って感じだったのに。

 「なんでだろ? フランスの縄張りに入ってくんなって事なのかな?」

 「いえ。どうやらロンシャンのリーダーは協会長の不倫相手の子供だとかで…」

 あ、もう聞きたくなくなった。
 そっちで処理してもらえます? 
 ええ。ええ。ほんとそういうのには関わりたくないんで。
 大丈夫です。報酬も釣り上げたりしません。最初に提示されたので大丈夫なんで。
 むしろこれから俺を関わらせない事を報酬にして下さい。

 俺と桜は逃げるようにしてホテルに立ち去った。
 どうよこの危機察知力。あのまま話を聞いてたら更に面倒になる事間違い無しだぜ。

 「ふぃー。折角の初海外にケチがついちゃったな。一応日本に連絡しておいた方がいいか?」

 「そうだね~。朝倉さんと協会長の伊達さんにも連絡しておいた方がいいんじゃないかな~」

 って事なので、とりあえず朝倉さんに連絡。
 どうやら向こうもTV中継を見てたみたいで、俺からの連絡を待ってたみたいだ。
 で、伊達さんがわざわざフランスに来てきっちり話をつけてくれるらしい。
 かなりご立腹の様子。あの人、俺の隠れファンだから。隠せてないけど。

 「一応もう帰っていいみたいだけどどうする? もっと観光したかったんだけど」

 フランスは世界中から叩かれるかもなー。
 今回の事件のせいで日本が俺を海外に出さないとか言っても文句は言えないしさ。

 「まぁ、俺が行きたいって言えば行かせてくれるだろうけど」

 「そうだね~」

 フランスはいい所だったのにな。
 今回の事件のせいで来れなくなるのは悲しい。

 「って事で、もう少し滞在して気にしてませんよアピールしようと思うんだけど」

 「だんちょ~が良いならあたしは何も言わないよ~」

 一部の人間のせいでフランス全体が叩かれるのは勿体無い。
 良い人だって居たんだしさ。

 「って事で明日はカジノに行こう」

 「それもうだんちょ~が行きたいだけだよね~?」

 そうだけど? 俺だって桜並みに稼いでみたい。
 次はVIPルームに通してもらって高レートで勝負してやろう。

 「やめといた方がいいよ~。だんちょ~はギャンブルに向いてない気がするな~」

 「まだ一回しかやってないんだから分かんないじゃん! 前回だって一応プラスだったんだし?」

 「別に無くなるのはだんちょ~のお金だから良いんだけどさ~」

 俺は魔王にも勝った男だぞ? カジノ如きに負けるわけなかろうて。
 『イカサマ』とかの能力者が相手なら話は変わってくるけど。そんな人いないよね?
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