異世界帰りの憑依能力者 〜眷属ガチャを添えて〜

Jaja

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第5章 海外遠征

第81話 講義を終えて

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 「はい。最後に。せっかく能力を授かったんだから、それに驕らずに努力を重ねて下さい。最近捕まったどこぞの男みたいに驕って調子に乗ってたら、俺がぶっ飛ばしにいきますよ?」

 話し始めたら意外となんとかなるもんで。人当たりの良いことを適当に喋っておけば、生徒達は勝手に感動してくれる。
 俺はイケメンスマイルを全面的に押し出して、講義を続けた。詐欺師の才能があるかもしれん。

 「えーっと。俺が喋りたい事は大体終わったんですけど…。まだ時間もあるみたいですし、軽く質問でも受け付けようかなと思います。何か質問ある人はいますかー?」

 チラッと壁にある時計を見たら、微妙に時間が余っていた。って事で質問タイム。
 結構な人が手を挙げてくれている。

 「はい。じゃあそこのヤンキーっぽい男の子」

 見た目はヤンキーっぽいツンツン頭の金髪君なんだけど、手の挙げ方が滅茶苦茶綺麗だった。
 ピシッとしてたからね。思わず即決で選んじゃいましたよ。

 「二年の橋本です。自分の能力は『剣術』なんですが、織田さんは極めると強くなると言いました。大体どれくらいで極められますか?」

 ふむふむ。真面目な質問だな。
 そしてその解答は中々に難しい。
 言い方が悪いけど才能によるとしか言えない。
 能力を授かる前に運動能力抜群だった人と全然だった人では、スタート地点が違うしね。

 「うーん。本当に才能によるとしか言えないね。極めるってのも本人の解釈次第だし。目標をどこに設定してるのかな? 3級攻略なら五年いらないと思うけど」

 「では、1級なら?」

 「人によるけど、よっぽど不器用な人でも十年あればいけると思うんだよな」

 俺は七柱の天使や悪魔。それに合成魔法とかを試して三十年でこの領域だからな。
 異世界っていう特殊な環境のお陰ってのもあるけどさ。

 「ってか、汎用能力ってのはある一定の所までは簡単に強くなれるんだよ。あれは補正が優秀だからね」

 「補正ですか? 確かに能力を授かった時から剣術が使いやすいなとは思いましたが…」

 むむ? もしかして汎用能力の育て方をご存知ない? 異世界では当たり前なんだけど。
 しまったな。当たり前すぎて、こっちでも当然やってると思ってたけど、そこから教えないとなのか。

 「後でまとめて教えよう。時間はかかるけど確実に強くなれるよ」

 「ありがとうございます」

 剣術とか槍術とか。
 あれって能力を意識しながら練習すると、体が勝手にその人に合った最適な動きを補正してくれるんだよね。最初はかなりゆーっくり練習すれば、補正じゃなくて全ての動きをやってくれるんだよ。

 だから、最初はゆっくり素振りしてその動きを染み込ませていく。で、慣れてきたら徐々に速度を上げていけばいいんだ。
 それだけで一端の戦士になれる。異世界では冒険者学校で教えられてた事なんだよね。
 どれだけ不器用な奴でも五年あればDランクの魔物ぐらい勝てるようになるはず。
 パーティ戦なら遠距離持ちの能力者もいるだろうし、それを加味したら3級攻略は余裕でいけるはずだろう。

 逆に珍しい能力持ちは最初がしんどい。
 見た目は派手でカッコいいかもしれないけど、自分で手探りで最適な鍛錬法を見つけないといけない。ハマったら強いのは間違いないけどね。

 『聖剣召喚』とかさ。
 あれ、聖剣を召喚出来てカッコいいのは間違いないけど、剣術とかにはなんの補正もないから。
 自分で最適な動きを探して練習するしかないんだよね。あの人も苦労するだろう。
 実際剣頼りで剣術はおざなりだったしね。逆にほぼ武器の性能だけであそこまで頑張ってたとも言える。アスカロンつえーって話だよね。


 それからも時間の許す限り質問を受け付けた。
 中々に意欲がある生徒ばっかりで、俺が適当に言ってるのがバレたりしないかとヒヤヒヤしたが。

 そして、講義が終わった後は汎用能力者を集めて練習法を教える。質問してくれたヤンキーの橋本君を筆頭に結構な人数がいたけど、これに関しては教えるのは簡単だし。
 パパッと教えてから解散となった。

 その後は狭間攻略に行っていた三年生と軽く交流して、俺の初の学校巡りは終わった。
 最後にみんなで写真を撮ったり、サインしたりもしたけど、既に俺のサインを持ってる人が居て驚いたな。

 「ああー疲れた。思い付きで全校回るとか言うもんじゃないな」

 「お疲れ様~」

 テンションがイカれてる校長先生をなんとか躱して車の中に逃げ込んだ。

 「今日は桜ちゃんが運転してあげよ~う」

 「ははー。ありがとうごぜぇます」

 珍しく桜が帰りの運転をしてくれるらしい。
 桜なりのねぎらいでしょうか。ありがたくご厚意に甘えて助手席を倒す。

 「なるほど~。それをされると運転してる側は結構ムカつくね~」

 「いつもあなたがやってる事でございます」

 いつかやってやりたかったんだ。
 俺は慣れたからなんとも思わなくなっちゃったけど、腹が立つだろう。

 「む? 協会から電話? なんだろ。お疲れ様でしたみたいな感じかね?」

 画面には朝倉さんのお名前。
 律儀に電話をくれたんだろう。

 「もしもし。はい。いえいえ。え? あ、はい。大丈夫です。はい、はい。分かりました」

 「なんだったの~?」

 「協会に寄って欲しいんだって」

 電話は案の定お疲れ様でしたってのと、お話があるから出来れば協会本部に来てくれないかって事だった。今日の予定は終わったし、今から向かえば良いだろう。

 「って事で協会に向かってくれーい」

 「ういうい~。ナビちゃ~ん。協会までの道案内頼んだよ~」

 はてさて。何かあったんだろうか。
 俺の適当な講義に怒ってるとかじゃないよね?
 自分で言うのもなんだけど、上手くいったんじゃないかなと思ってたんだけど。
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