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第3章 老害
第51話 未遂
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とある部屋の一室。
そこでは数人が集まって、ひそひそと会話をしていた。
「どうだ?」
「どう考えても無理だ。成功する訳がないだろ。大体、万が一織田さんを殺せたとして、その後どうする? 他のギルドメンバーや八重に捕えられて終わりだぞ?」
ここにいるメンバーは全員松永から送り込まれた工作員。
金払いが良いので今まで雇われてきたが、死んだら捕まったりしたら意味がない。
「どうやら織田さんは襲撃を警戒してる節がある。まぁ、今まで何度も襲われてるからそれも仕方ない。だが、狭間の中でも警戒してるという事は、俺達の計画も漏れてるんじゃないか?」
「困ったな。どうする? やっても地獄。やらなくても地獄だぞ。やらなければ松永は俺達の事をバラすかもしれない。居場所がなくなるぞ」
「バラすって…。自分が送り込んだスパイですとでも言うのか?」
「色々やりようがあるだろ。あっちには無駄に権力がありやがるんだ。偽造なりなんなりして、俺達を他国のスパイとかに仕立てあげられても驚かないぞ」
工作員達は八方塞がりに追い込まれていた。
松永はどうでも良いが、自分達だけは助かりたい。その一心で案を捻り出していく。そして。
「やっぱり織田さん素直に打ち明けるのが一番か」
「それしかないだろ。俺が話してみるよ。一応指導もしてもらって面識もあるし」
「頼む」
結局工作員達が思いついたのは、どうしたら良いか分からないので全てを打ち明けて織田に許してを乞う事だった。
松永と織田。争えばどちらが勝つかを天秤にかけて、織田の圧勝と判断。
明日の攻略後にでも話をすることに決まり、密会が終了する。
こうして、松永の賢い暗殺計画は頓挫するのであった。
☆★☆★☆★
「ビュッフェも捨てたもんじゃないな」
ウインナーとスクランブルエッグが美味しい。
パリッとした食感に肉汁じゅわじゅわだし、卵はふわふわで味付けも文句なし。
「流石高級ホテル~。朝ご飯だけでお金取れるよ~」
攻略二日目の朝。
珍しく両者共に早起き出来たので、ホテルのレストランでビュッフェをがっついている。
こういうシンプルなのも悪くないね。THE朝ご飯って感じがして非常に良き。
「今日は気合いいれないとな」
「襲撃があるもんね~」
織田天魔様の華麗な捕縛術を見せてやるぜ。
最近は手加減も上手になってきたんだ。傷一つ付けずに確保して老害に王手を打ってやる。
「あるぇー?」
「何もなかったね~」
なんか気合いが空回りした。二日目の攻略。
憑依はしつつも、いつも以上に気を抜きつつ指導しながら攻略を進めた。
ボス部屋は目前って所まできたけど、ちょっと指導がハードすぎたらしく、明日に持ち越し。
道中の魔物はすべて始末出来たので、明日ボスだけを倒して終わりだろう。
そして肝心の襲撃。無かった。
なんか思い詰めた表情をした人が何人か居たから、来るぞ来るぞと待ち構えてたんだけど。
何もなく、二日目の攻略が終わってしまった。
「なんか一気に気が抜けたぞ。これが作戦なら相手は大成功だ」
「おかしいね~」
狭間の帰り道。糸電話で桜と話しつつ出口を目指す。すると、周りをキョロキョロしながら『暁の明星』の明智さんが話しかけてきた。
「? どうしました? 何かありました?」
「いえ、織田さんに内密の話がありまして」
ほほう? ほうほう? なるほど?
分かったぞ! 人気の無い所に連れ出して襲撃ってことか! 俺ちゃん冴えてるぜ!
……それにしても明智さんか…。
まさか『暁の明星』に刺客が送り込まれていたとはな。老害も中々やりおるわ。全然気付かなかったぜ。
「俺は一人で行った方がいいですか?」
敢えて隙をさらす意味合いで桜の同伴無しに出向こうかと提案したんだけど。
「いえ。八重さんもご一緒で大丈夫です。場所は後ほど連絡させて頂きます」
あるぇー? 桜も行っていいの?
そんなに襲撃に自信があるのかね? なんかここまでくると楽しくなってきたぞ。
果たして何があるのやら。
明智さんは言うだけ言って離れて行ったんだけど、ちょっと意図が読めませんな。
「どう思う?」
「分かりやすいでしょ~。大方、狭間内での襲撃は成功しそうにないから、場所を変えて奇襲とか~? 最初はそう思ったんだけど~それならあたしが行っていい意味が分からないし~? あたしが襲撃者の立場なら計画自体をバラすねぇ~。勝ち目がないんだも~ん」
「え? 襲撃しないの?」
「したところでどうするのって話だし~? 何人いるか分からないけど成功する訳ないよね~。あたしは何かしらの秘策があると思ってたんだけど~。明智さんの様子を見る限りそれも無さそうだね~。あの老害さんは何を考えてるのやら~」
なんか桜さんが賢い。いや、少し考えれば分かる事だったのか。
狭間内で襲撃なんて正気の沙汰じゃないもんね。
他にスパイじゃないメンバーも居るんだし。
皆殺しにしないと、その後の居場所が無くなっちゃうじゃんね。
もしかして皆殺しにする自信があったのか?
老害さんはもしかしたら頭の中がお花畑なのかもしれませんな。
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