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第2章 日常の日々
第46話 海鮮パラダイス
しおりを挟む翌日。
早起きが苦手な俺達二人だけど、今日はルンルンで早起きして、タクシーに乗り込み札幌の中央卸売市場にやって来ていた。
この近辺にあるお店の海鮮はとても美味しいらしい。せっかくだから、新鮮な魚も買ってアイテムボックスに保管しておこうと思ってるので、色々見て回りたい。
「とりあえず腹拵えが必要だな。こんなに美味しい匂いを漂わせてるのはどこだ?」
「あ、あそこじゃな~い?」
お! あれだあれだ。あら汁じゃんか。
あ、売ってる訳じゃないのか。漁師のおっちゃん達が余り物で作ってると。
「おぉー! 持ってけ持ってけ!」
「ありがと~!」
桜がおっちゃん達を適当によいしょしてたら、普通に分けてくれた。
この漁師は俺達の事を知らないっぽい。
普通に観光しに来てる人だと思ってるな。
「んふふ~。朝は微妙に冷えるからあったまるね~」
「その格好のやめたら?」
「能力の都合だも~ん」
まぁ、体のどこからでも糸を出せるのに、服で阻害されてちゃ勿体無いのは分かるけども。
本格的に冬になったらどうするのやら。
「それにだんちょ~と一緒にいたらいつ狙われるか分からないからね~。用心しとかないとさ~」
それは老害に文句を言ってくれ。未だに襲撃してくるんだから。
「こ、これが新鮮な海鮮丼ってやつか…っ! 具材が輝いてやがる!!」
「んふふ~。とってもおいしそ~!」
あら汁をご馳走になってから、屋台で買い食いしたり、市場を回ってちょくちょく購入したりして、ようやくお昼ご飯。生牡蠣美味しかったな~。
採れたてほやほやの海鮮丼だ。
「エビはぷりぷり。うには濃厚。もうたまりませんな」
「むむ~? これは醤油も一味違うね~」
脂が乗ってるサーモンも美味しいな。トロも食べた瞬間口の中から溶けてなくなりそうだ。
ああー幸せ。
「犯罪的な美味さだな。北海道民は羨ましいぜ。こんな美味しさの海鮮丼が1000円ぴったしって。採算取れてるのかね」
「ほんとにね~。2000円でも3000円でも納得の美味しさだよ~」
「とりあえずおかわりだな」
「あたしも~」
しっかり食い溜めしておかないと。
北海道なんてあんまり来る機会はないからな。
明日には顔合わせして、明後日は攻略だし。
終わった後も滞在期間を延ばす事を検討しておこう。
☆★☆★☆★
「首尾は?」
「問題ないかと。各ギルドに送り込んでいる工作員からも問題無しとの報告を受けております」
贅を凝らした部屋の一室。
そこでは、松永とその側近が密談をしていた。
「全く。闇ギルドの連中は使い物にならんな。わしがどれだけ支援してやったと思っておるのだ」
織田天魔を狙った、闇ギルドを使っての暗殺。
それはことごとく失敗し、逆に壊滅していっている。松永は証拠を残すようなヘマはしていないが、投資したお金が無駄になったと憤慨している。
(全く協会の連中め。誰のお陰で今の日本があると思っておる。わしが危険を顧みずに攻略を進めた恩を忘れおってからに。今に泣きついてきおるぞ。お前らはあの若造に騙されておるのだ)
松永はグラスに入っていたお酒を一気に呷り、おかわりを注ぎ直す。
「まぁ良い。策はそれだけではないのだ。丁度よく合同攻略など調子に乗った事をしてくれるからな。そこで仕留めてくれるわ」
松永は上位ギルドや有名ギルドには情報収集の為に初期の頃から工作員を送り込んでいた。
今回の合同攻略で抜擢されたメンバーにも工作員は存在し、工作員同士で連携して暗殺しようと目論んでいた。
「しかし、『暁の明星』に送り込んでた者が言うには、やはり能力は本物だという報告を受けております。工作員だけで仕留められるでしょうか?」
「なにかカラクリがあるに決まっておる!!」
ドンとグラスをテーブルに叩き付けるように置き、ギラギラした目付きで側近に睨みつける。
「全く歯が立たないと言って、作戦の中止も進言してきてますが…」
「中止なぞありえん!! 工作員はわしが選抜した一線級の能力者達だぞ! あいつらが揃って負けるなど万に一つもあり得ぬわ!!」
「失礼致しました」
「魔物相手に戦うのと、人間相手に戦うのは話が別だ。闇ギルドを撃退して良い気になってる若造を仕留めるなんて造作もないことよ。ましてや味方と思ってる奴からの襲撃だ。魔物と人間を両方相手にあいつらは生き残れるかな?」
くっくっくっと楽しそうに薄暗い笑みを浮かべる松永。その顔は成功を疑っておらず、我が世の春が来たと言わんばかりだ。
「では、作戦は続行という事で」
「ふん。策とはこうやるのだぞ。良く覚えておけ」
「おみそれ致しました」
そう言って下がっていく側近を横目で見送りつつ、酒をガブガブと飲む。
しかし、酔いが回ったような様子はなく、その顔はかなりギラついていた。
(ふむ。この作戦で成功しても失敗しても、工作員達は今のギルドには置いておけんな。また新しい能力者を送り込まねば。今の工作員はわしの秘密護衛部隊に組み込むとするか。表立って重用すると、わしの仕業だと勘ぐられかねん)
松永は既に暗殺が成功した後の事を考えていた。
失敗の事は微塵も考えず、早速能力者の選定に入る。
「そういえば若造のギルドが募集しておったな。念の為にとわしの手の者を面接させようと送り込んでおったが、どうなった事やら。いや、これから死ぬ奴のギルドなどどうでも良いな」
果たして、松永は暗殺を成功させる事が出来るのか。
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って事でこの章はここで終わりです。
合同攻略まで入れようか迷いましたが、2章は天魔達には日常を楽しんでもらう事をメインにした章でしたので。
ちょっと区切りが微妙になりましたが、一旦ここで切らせてもらいました。
次章はとうとう老害さんと対面しますよ。
当初はざまぁキャラとして、サクッと退場させる予定だったんですがwww
なんか美味しいキャラなので、かなり引っ張ってしまいました。
作者は他にも作品を更新してますので良ければそちらもご覧下さーい。
ではではまた次章で~。
応援ありがとうございます!
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