異世界帰りの憑依能力者 〜眷属ガチャを添えて〜

Jaja

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第1章 異世界帰りの男

第28話 帰還

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 モツ鍋を楽しんでからも、福岡の美味しい物を堪能した。
 ラーメンだったり水炊きだったり海鮮だったり。
 五日程滞在して、俺達は東京に戻ってきた。

 「協会から連絡があったよ~。特級認定は間違いないみたいだね~。早速手続きを開始しますだって~」

 「動きが早いな。こういうお役所仕事は遅いイメージがあったんだけど」

 税金減額やったぜ。『地震に負けない』に連絡しないとな。さっさと改装までしてしまいたい。

 「海外に1級は無かったしなぁ。その間は学校を回りつつ、国内旅行でもするか」

 「全国の牛丼屋さん巡りだね~!」

 いや、牛丼屋は御三家で十分だろ。
 前も言った様な気がするけど、チェーン店なんだから味は変わらないと思うぞ。
 ご当地グルメを食べる方が良いんじゃないかと愚考します。

 「学校は主要都市には大体あるんだな。大阪と福岡にもあったんだし、寄ってから帰れば良かった」

 「また行けばいいじゃ~ん。大阪も博多も美味しい物ばっかりだったし~」

 「まぁ、そうだな。何回でも行けばいいか」

 でもでも、当分はゆっくりさせてね。
 長い間ニート生活だったのに、活発に動いたからおじさん疲れちゃった。
 リハビリ期間だと思ってたのに、予想外の禁忌領域なんて出てきやがったからさ。

 「桜の実戦の為に、どこか手頃な狭間でも落札しとくか。何級が良い?」

 「3級か4級かな~。2級はちょっとまだ自信ないし~」

 相性次第だと思うけど、その辺が妥当か。
 でも、3.4級は激戦区なんだよなぁ。
 人類が勝ててお金になるから、上位ギルドとやらが鎬を削ってるんだよね。
 お金はあるから、最高落札額で入札したら良いんだけどさ。

 でも、1週間は外に出ないぞ。
 何もかもをデリバリーで済ましてやる。
 引きこもりを舐めてもらっては困るぜ。



 ☆★☆★☆★

 「くそっ!」

 贅を凝らした部屋の一室で。
 博多の1級の狭間が消滅した知らせを聞き、男は悪態を吐く。
 失敗の報告を待ち望んでいたのだが、今回も攻略されてしまったらしい。

 男の名前は、松永飛砂英まつながひさひで
 過去に日本では攻略されてなかった3級を初めて攻略したギルド長であり、現在は年齢の関係で引退したものの、メディアに積極的に出演し、影響力を高めて大御所とも呼ばれている人物である。

 「あの若造め! 少し上手くいってるからと調子に乗りよって!!」

 飲みかけのお酒が入ったグラスを壁に投げてイライラを露わにする。

 今までは辛口の御意見番として、上手くいっていたのだ。
 急に織田天魔という人物が出てくるまでは。

 いきなり1級を三つ落札し騒ぎになったのを、これ幸いと口撃し、更に発言力を高める予定であった。
 しかし、一つ目の狭間が消滅し、動画がUPされてから風向きが変わった。

 それでも、動画が偽物であると糾弾したし、実際に松永も編集した動画だと思っていたのだ。

 (あんな魔法をいくつも使える能力なんてあってたまるか!! 偽物だと思うのが普通だろう! それなのに何故!)

 そこで追い打ちをかけるように公開された二つ目の攻略動画。
 協会の人間が同行し、天魔の能力や1級攻略が真実であると公表されたのだ。

 松永の求心力は一気に落ち、天魔が煽ってるせいで、ネットでは大炎上。
 栄華を極めていた松永は窮地に立たされていた。

 「まだだ! まだわしは終わらんぞ! おい! 誰かおらんか!!」

 このままで終われる訳がない。
 男はそう思い、ある団体に連絡すべく、使用人を呼び出す。

 「お呼びでしょうか?」

 「裏の奴らに連絡を取れ! 仕事があるとな!」

 松永はこれまでの探索者人生のお陰でそれなりに人脈がある。
 芸能界に入った事もあり、表も裏も知り尽くしてると言ってもいい。

 「正面からの戦闘には滅法強いらしいが、果たして暗殺はどうなんだろうな? この世界、綺麗事だけではやっていけないという事を思い知るが良い」

 暗い笑みを浮かべつつ、松永は新たに取り出したグラスにお酒を注ぐ。
 その顔は失敗するとは微塵も思っていないようだった。

 (ネットでも手の者にもう少し糾弾するように煽るか。少しでも風向きを変えておかねばな。わしの今後にも関わる)

 松永はメディアや探索者達から支持を集めての政治家入りを目指していた。
 まもなく50歳を迎えるという事で、日本初の3級攻略という影響力を使い、日本を我が物にしようと考えていたのだ。

 そしてそれは成功しようとしていた。
 天魔が出て来て、1級を攻略さえしなければ。

 「くくっ。今のうちに調子に乗ってるが良い。社会というのは強さだけではやっていけないのだよ」

 くつくつと笑いながら、酒を一気に呷る。
 そして、天魔の死亡報告を今か今かと待ち続けるのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 これにて1章終了。
 後は掲示板をぶっ込みますけど。

 最後の最後で老害さんを登場させるか迷ったんですけど、こっちの視点もいるかなと思って一応書いておきました。
 老害さんの能力はなんでしょうねぇ。
 決めてはいますが、果たして使う機会があるのか。死の間際に使うかもしれませんねぇ。


 作者は他にも作品を更新してますので良ければそちらもご覧下さーい。

 ではではまた次章で~。
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