俗物夫婦回帰転生

Jaja

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第三章 高校入学

第36話 ルトゥール

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 「なんかこの感じ久々だなぁ」

 「分かるわ。スキルが無くても体が覚えてるわよね」

 我が家にて。
 俺は絵を描き描きと。
 梓はパソコンで編集をぽちぽちと。
 動画投稿に向けて最後の追い込みをしていた。

 回帰前も梓が編集を手伝ってくれてた事もあって、なんか懐かしい気分である。
 スキルのお陰でかなり楽を出来ているから、前程編集がだるいと思う事もない。

 「ずっと好きだったんだぜ~♪」

 最近ずっとTVで流れてる歌を口ずさみながら、ノリノリで絵を描いていく。
 バズってくれると嬉しいなぁ。

 「はぁ。疲れた」

 「およ? おかえり。もうそんな時間か」

 「おかえりなさい」

 「あら、梓ちゃんじゃない」

 気分が乗ってたせいか、すっかり時間を忘れて編集お絵描きをしてた。
 お陰でいつの間にか母さんが帰ってくる時間だ。

 「こりゃいかん。梓送ってくるよ」

 「お義母さま。ご飯はチンしたら食べられるようになってますので」

 「いつもありがとうねぇ」

 母さんが梓と喋りたそうにしてたけど、それはまたの機会にしてもろて。もう20時過ぎてるんだ。


 「私達のグループ名? ユニット名? どうするつもり?」

 「考えないとなぁ。なんか俺達に因んだ名前か」

 中村家へ送ってる最中に俺達が活動する名前について考える。
 世の音楽家さん達みたいにカッコいい名前を考えたいものです。

 「美男美女とかはどうかしら?」

 「直球すぎないか? もう少し捻りたい」

 うーん。迷うなぁ。
 なんて考えてたらあっという間にアパートに到着。我が家から距離が近過ぎる。5分ぐらいしか歩いてないぞ。これぞ幼馴染。

 「宿題って事で」

 「そうね。考えとくわ」

 カップル特有の別れ際に甘ったるい雰囲気になる事もなく、バイバイすら言わずに家に入っていく梓。最早熟年夫婦ですよ。いや、そうだったんだけどね。


 家に帰ると母さんが絵をガン見していた。
 そういえば机の上に放置してたな。

 「あんた、将来は絵描きにでもなるの?」

 「ならんならん。ちょっとした趣味だよ」

 「ふーん? まぁ、良いわ。ご飯食べましょ」

 何か言いた気な顔してたけど、とりあえずは納得してくれたらしい。
 動画投稿をする事を言った方がいいのかな? 収益化したら言わないとだし早めの方が?
 梓に明日相談しよう。


 「ルトゥールってのはどう?」

 「フランス語? 意味は…」

 「帰ってくるとか回帰とか。そんな感じの意味。まさしく俺達にピッタリじゃない?」

 「なんでわざわざフランス語なの? 英語で良くないかしら?」

 「フランス語が一番カッコよかったんだ」

 翌日の通学路にて。昨日考えた名前について提案してみた。ドイツ語と迷ったんだけどね。
 でも発音のし易さとかを考えてフランス語に。
 我ながら良いチョイスなんじゃないかと。

 「そうね。私達にピッタリだわ。それにしましょう」

 「よっしゃ! じゃあ後は動画を完成させるだけだな」

 「来週中にはアップしたいわねぇ」

 Twitte○のアカウントもばっちり。
 拡散するためのサクラアカウントも、結構前から適当にツイートしてフォロワーを稼いでいる。
 後は一回聞いてさえくれれば。俺達のズルい歌唱力で虜に出来ると思ってます。


 「エイシンフラッシ○だな。間違いない」

 「本当でござるかぁ?」

 日曜日。東京競馬場にて。
 今週はダービーがあるって事で中々の盛況具合。
 俺はいつも通り、おっちゃんと競馬場で合流して適当にレースを見つつ、着実にお金を稼いでいく。

 いよいよパドックにダービー出走馬が出てきた事で予想を教えてあげたんだけど、おっちゃんは気持ち悪い喋り方をして胡乱げだ。

 「エイシンフラッシ○、ローズキングダ○、ヴィクトワールピ○でファイナルアンサーだ」

 「15万ぐらいになるぞ?」

 「フォロワーがまた増えちゃうな」

 最近はおっちゃんが予想アカウントを運営してくれてるけど。既に10000人ぐらいいるんだよね。
 ここまでG1外したの一回だけだし。それも三連単を外しただけで1.2着は合ってた。わざとだけど。

 「有料サイトへの誘導はまだやめといた方がいいか?」

 「うーん。最近フォロワーの伸びも鈍化してきたしなぁ」

 「そろそろやるなら会社を辞めるんだが」

 「待て待て」

 何を言ってるんだ、このおっちゃんは。
 極端すぎるだろ。どこまで稼げるかも分からないのに、思い切りが良すぎる。
 競馬に100万ぶっ込もうとしたりと、中々にネジが飛んでる人なのかもしれん。

 「いや、俺の会社副業禁止なんだよ」

 「なんでそれを先に言わない」

 じゃあおっちゃんに頼まなかったよ。
 一人の人生を左右するなんて、今の俺にはまだ荷が重すぎる。もし俺がちゃんと成人してて、お金があるなら人一人養うぐらいは出来るからチャレンジを応援出来ただろうけどさ。俺が思い付きで言った事だし、それぐらいは面倒を見るさ。

 でも、残念ながら俺はまだぴちぴちの高校生なので。流石にまだ早いよ。

 「いや、どっちにしろそろそろ辞めようと思ってたんだ。ほら、坊主のお陰で競馬でボロ儲けしてるし。貯金がかなりあるんだよ」

 あ、そうか。競馬があったや。
 当たり馬券を教えてるだけで、生きていく事は出来るのか。

 「う、うーん。本当に良いの? 会社を辞めるって結構な決断だよ?」

 「ああ。成功すると思ってるしな」

 そんな良い笑顔で言われましても。
 なんかこれで失敗したら責任感じちゃうな。
 いや、有料サイトに失敗も成功もないか。
 ちゃんとした回収率で情報を提供し続けてれば大丈夫だよね。

 ちょっと、ちゃんと話し合った方が良さそうかな。
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