俗物夫婦回帰転生

Jaja

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第三章 高校入学

第28話 入学式

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 「あんた、明日入学式でしょ? 準備は出来てるの?」

 「ばっちりでやんす」

 入学式前日。
 俺はパソコンの前に齧り付いて株のグラフを見ていた。いつもならこの時間は梓とどこかに出掛けてるんだが、今日辺りで持ち株が最高値を更新しそうなので売るタイミングを見計らっている。

 平日の真昼間に母さんが家に居るのは有給を取ってるからだ。
 どうやら、会社で働き方改革があったみたいで、有給は使える時にどんどん使っちゃいましょうと、推進し始めたらしい。
 この時代ではホワイトな企業なんじゃなかろうか。普通の中小企業の受付をやってるみたいだが。

 「そろそろ良いか」

 ぽちぽちと利確していく。
 もっと高額なら何日かに分けて少しずつ売っていく方がいいのだが、今回はそんなに持ち株がないので一気に売る。

 「むふっ。400万が大体1600万に。約4倍だな」

 このお金は勿論次の取引に使う。
 売ると同時に別の株を買う。

 「よし。終わり。これでまた当分放置だな」

 次は七月くらいかな。
 買いたい株があるんだよ。

 「何をやってるかさっぱりだわ」

 「高くなってきたら売って、そのお金でまた高くなりそうな株を買って。その繰り返しだよ」

 「それが出来たら苦労しないの。お金はまだ減ってないのかしら?」

 「400万から1600万になったね。また別の株を買ったけど」

 「ひゃー。1600万? 凄いわねぇ」

 「母さんもやってみる?」

 「いやよ。パソコンなんて触り方が分からないもの」

 「会社で使ったりしないの?」

 「私は受付よ? やって来たお客さんに適当に愛想振り撒いて電話をお繋ぎするだけ」

 「ふーん? やりたくなったらいつでも言ってね。やるなら早い方がお得だし」

 パソコンは使えた方が良いと思うけどな。
 少しずつ教えていってあげようか。将来はどんどん普及していくしね。



 四月二日。
 とうとう高校の入学式である。
 駅で中村母娘と合流して学校に向かう。

 「もうすぐ大阪杯なのに競馬があんまり盛り上がらんなと思ってたら、この時代はまだG1じゃなかったぜ」

 「あ、そうなのね。じゃあ今週も競馬に行かないのかしら?」

 「迷ってる。というのも取りたいスキルが結構あってお金が欲しいんだよな」

 母さん達は座ってるが、俺と梓は少し離れた所で立っている。いつも通り、運が仕事して俺達が電車に入った途端に席が二つ空いたんだが、母さん達に座ってもらい、俺達は立っている。
 15歳でまだまだピチピチだからね。って事で、この会話は聞かれてる事はない。他の人達にも聞こえないように小声で喋ってるし。

 「既存のスキルもレベル5までにはしておきたいわよね。かなりお金を持ってると思ってたけど、全然足りないわ」

 「それに容姿も少しずつ上げていきたいし。こっちは焦る必要ないけど、高校卒業までには上げ切りたい気持ちもある」

 卒業してから顔が一気に変わったりするとね。
 将来卒業アルバムの写真とかが流出した時に整形とか言われかねない。そんなのは御免である。

 「まぁ、ゆっくりやっていきましょうか。三年もあるんだし、なんとかなるわよ」

 確かにその通りだな。
 一年でここまでこれたんだ。焦る必要はないか。




 「あら、圭太と一緒のクラスだわ」

 「ラッキーだな」

 学校に到着してから母さん達と別れた。
 保護者は体育館で待機らしい。
 俺と梓は中庭にデンと鎮座してある、クラスが張り出された掲示板を見て同じクラスだった事に喜ぶ。運が仕事したと思っておきます。

 「目立つわね」

 「中学で慣れたけどな」

 くどいようだが、俺達は容姿をまだ60までしか上げてないのに美男美女だ。
 そんな二人が揃って姿を見せた事で、遠巻きに見られて結構目立っている。
 これぐらいなら気持ち良いんだけどな。是非これぐらいの距離感で接して欲しいもんだ。

 「あ、それじゃあ友達が出来ないな」

 「結局最後の一年で圭太が仲良くしてたのって、まさるぐらいじゃないの?」

 そうなんだよなぁ。
 普通に他のみんなとも喋ってたけど、広く浅くって感じで、仲が良いと自信を持って言えるのはまさるぐらいだった。
 梓は結構色んな人と交流を深めてて、今でも数人と連絡を取り合ってるらしいけど。

 「そんなに大人数じゃなくて、数人は親友というものが欲しいもんですな」

 「そういうのは求めて出来るもんじゃないわよ。自然とそうなってるの」

 コミュ強は違いますなぁ。
 俺も配信者を目指すならそっち方面の強化は必須か。スキルになんとかしてもらおう。
 努力はせずにお金で解決。これが正しい世の中の在り方です。


 教室に向かって荷物を置いてすぐに体育館へ。
 とりあえず席が近い何人かと仲良くなってみようと、自己紹介と軽い雑談はしておいた。
 掴みは上々じゃないかなと思って、ドヤ顔で梓の方を見たら、既に何人かの女子と固まって楽しくお喋りしていた。
 しかもいかにもスクールカーストが上位っぽいのが相手だ。陽キャかよ。

 「あいつは人の懐に入るのが上手すぎる」

 「? 谷くんどうかした?」

 「いや、なんでも。それよりも早く行こうぜ」

 俺はあんなに大人数仲良くならなくても良いや。
 女子は女子で色々と面倒な付き合いとかもあるんだろうしな。無駄に何回もトイレに行ったり。


 体育館で校長先生のありがたいお話を聞き、その後、先生の紹介等が終わって教室に戻る。

 「校長の話が短かった。非常に良い高校だ」
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