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二章 贖罪を求める少女と十二の担い手たち~霊魔大祭編~

行先相談

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 ということで・・・・・・俺たちはナイラさんの案内のもと、ローツキルト内部に広がる商業エリアへ、探索に向かう事となった訳なのだが――――、

 「そういえばクロエとリセの二人は当然知っているはずだけど・・・・・・ユウト、あなたは何故このローツキルトという場所が“迷宮都市”なんて呼ばれているのか、その理由を知っているのかしら?」
 「理由・・・・・・ですか?いや、そこまで詳しい話はまだ何も聞かされてないですよ。
 知っている事といえば、ローツキルトの都市全体が国ほどの広さがあるという事ぐらいですかね。
 あとは魔法世界に存在する五大中枢都市の一つであるのだとか・・・・・・」
 「ただ広いだけなら案内をする人なんていなくても、なんとかなるとは思わない?ここは魔法世界なのよ。 そして腹正しいことこの上ない話だけど、魔法使いとしては超一流の実力を持つあなたのお師匠さまが、こうしてわざわざ私のところにまで都市の案内を頼みにやって来る・・・・・・さて、その理由とはいったいなんでしょう?」

 ナイラさんからの問い掛けに対して、俺が答えを返すため真剣に考えていると・・・・・・リセがヒントを出すようにして、真横から声をかけてくる。

 「ユウ君、覚えていますか?ここに来る前に私たち三人で訪れた魔法世界の都市リース。あそこにあったマギステリア発行所に向かう直前に、私たちは巨大なトンネルのような建物の中を通ってきましたよね。
 何本もの通路が合流している巨大なホール――――あの場所に通じている道は、全てゲートロードと呼ばれる空間接続魔法の装置によって、リース都市内部のあらゆる場所に繋がっています」
 「空間接続魔法の装置?それは俺の知っている転移の扉ゲートを使用した移動手段とは、また別の種類のものなのか?」
 「いえ、分類的には二つとも、ほぼ同一の効果を持つものですよ。おもに転移の扉ゲートは個人用の移動手段として。ゲートロードは大規模な施設の交通手段として使用されています。
 ――――ただでさえ広大な都市の中を、徒歩のみで移動するには限界がありますからね。
 基本は時間ごとにゲートロードの接続先が切り替わり、各都市は事前に定められた時間割に従って、その運行を管理している状況です」

 つまり地球にあった電車の時刻表と似たようなものなのか。
 そしてそのあらかじめ決められた時間通りに、ゲートロードと呼ばれる道の接続先を変えている・・・・・・ということは、

 「ローツキルトの内部にある商業エリアは、いくつものゲートロードによって区切られ、そして繋げられている。
 だからクロエはわざわざ現地の事情に詳しい、ナイラさんの案内を必要とした・・・・・・ということですか?」
 「正解!――――そしてここローツキルトに存在している商業エリアの数は、現時点でおよそ千二百以上もあるの。
 ゲートロードの接続先が短時間で切り替わるせいで、一度迷ってしまったら最後。都市の外に出るまでに、最低でも一週間以上はかかると言われているわ。だからこの都市を安全に見て回るには、外周区分エリアに建っている案内所からガイドを雇うか、私みたいな現地の人間に直接案内を頼むしかないわけ。
 単純に商業エリアの通りや路地の数が多い・・・・・・という訳ではなく、区と区を繋げる道の全てが迷路のように時間差で細かく切り替わる。だからここローツキルトは世間から“迷宮都市”なんて呼ばれ方をしているのよ」

 ナイラさんは俺の手に薄いパンフレットのような紙束を手渡してくる。
 中を開くと新聞の株式欄のように、幾つもの数字が端から端まで、細かくびっしりと記載されていた。

 最初のページの真上には“ゲートロード時刻表”と書かれており、その下に続く表の数字の何か所かは、数秒ごとに別の数字に変化しているようだった。

 「・・・・・・ん?ナイラさん、この所々にある空白の欄は、いったいどういう意味なんですか?」
 「それは“現在ここのゲートロードは使用出来ません”って意味よ。結局のところゲートロードも、私たち魔法使いが造り上げた、ただの使い捨ての道具に過ぎないわけだから。
 何かしらの事件やトラブルによって道が封鎖されたり、術式に問題が発生してゲートロード自体が機能しなくなった・・・・・・なんて話、別に珍しくも何ともないわよ?
 ――――それでクロエ?まずはどこに向かいたいの?商業エリアに買い物しに出掛けるなら、先に目的の物を教えて貰わないと私自身、案内の仕様がないんだけれど」
 「そうだな・・・・・・おい、リセ。お前どこか行ってみたい場所はないか?せっかくこうして小僧と一緒に、ローツキルトの都市内部を見て回れるんだ。何か必要なものでもあれば、お前の判断で気にせず、好きにすると良い」

 クロエからのその言葉を受けて、リセは「そうですね・・・・・・」と一人呟きながら、難しい顔つきで顎に手を当てて考える仕草をする。

 「・・・・・・でしたらまず最初に、ユウ君のための服を見て回りませんか?勿論ただの服ではなく、ユウ君が魔法使いとしての仕事をする上で、これから必要になる専用のマントや装備などをです」
 「いいんじゃないか?ならばその案でいこう。――――おい、ナイラ。このローツキルトで最も良い装備品を取り扱う店と聞いて、何か心当たりは無いのか?」
 「装備品ねえ・・・・・・それなら中央の第十三区にある【ローツキルト魔法装備専門店】がいいんじゃないかしら。あそこは管理局のお偉いさん方も御用達の店だし。値段が高いことを除けば、扱っている品の品質はどれも一級品の物ばかりよ」

 ナイラさんはそう話しながら、部屋の棚に入っていた一枚のチラシを、俺たち三人の前に掲げて見せる。

 「見てみなさい。一番安い値段の皮手袋ですら銀貨五百枚からで、しかも“当店が厳選した最高級の素材を使用した、オーダーメイドでお作りさせて頂きます”って書いてあるわよ。正直その辺の一般人の収入程度じゃ、ここでその子の装備を一式揃えるのは厳しいと思うのだけれど・・・・・・どうするの?」

 どうにも悩ましい様子で、クロエに対して自分の意見を告げるナイラさん。
 その話を聞いた俺は一旦、近くに立っていたリセに対して、気になったことについて尋ねてみる。

 「なあリセ。そういえば魔法世界で使われているお金の価値って・・・・・・」
 「そういえばユウ君に対して説明したことはありませんでしたね。
 ――――この世界で扱われるお金は、魔法硬貨と呼ばれていて、その種類は全部で合計五つあります。
 銅貨、銀貨、金貨、こく貨・・・・・・そしてちょう貨。ちょう貨は大きな取引の際にのみ使われていますから、一般的にはその他の四種類の硬貨が、主に世間では使われている形になりますね」

 リセから聞いた一連の説明を、かつて俺が住んでいた日本のお金の価値で分かりやすく表すと、

 銅貨一枚辺りの価値――――およそ百円。

 銀貨一枚の価値――――銅貨十枚分。

 金貨一枚の価値――――銀貨百枚分。

 こく貨一枚の価値――――金貨百枚分。

 となるらしい。

 そしてちょう貨と呼ばれている特殊な硬貨は、簡単に説明すると銀行で使う小切手のような役割を担っている。
 登録された魔力情報にのみ反応を示すため偽造も不可。
 高額の・・・・・・とは言っても、こく貨一枚ですら日本円で一千万円ほどの価値があるわけだが。
 ともかくそれを超える金額の取引や買い物などがある際に、そのちょう貨は絶対的な信用と信頼の下で使われているのだそうだ。



















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