果ての世界の魔双録 ~語り手の少女が紡ぐは、最終末世界へと至る物語~

ニシヒデ

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二章 贖罪を求める少女と十二の担い手たち~霊魔大祭編~

プロローグ

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 とある異世界に存在している、何処かの惑星ほしで――――




 そこはあと少しで永遠の終わりを迎えようとしていた。

 自己の利益を最優先にして行動する、愚かな人間という生き物に、何もかもを好き勝手に弄られ、壊され、無茶苦茶にされてしまった哀れな惑星ほし

 資源として活用し得るものを根こそぎ取り尽くされ、その跡地に建設されたのは利便性をとことんまで追及した造りとなっている住居やビル――――つまりは人類が人類のためだけに用意した、先進的な街だった。

 人類が繁栄し、その総数が増えるにつれて、惑星ほしの寿命は少しずつではあるが確実に、終わりへと近づいていた。
 しかしそれでも人類は変わらぬ日常を――――停滞を良しとしない。建前や理念を振りかざしながら日夜開拓を続ける彼等に、滅びが訪れるのも納得がいくというものだろう。

 ――――私は何故、この世に生まれてきたんだろう?

 自らの行いのせいで、この世界は今まさに滅びの時を迎えようとしている。
 
 それを阻む手だては既に失われており、今更元凶である自分自身が命を断ったところで、そこに意味などない。
 
 罪の意識に苛まれた少女に唯一残された選択は、愛する家族との想い出の場所から、世界の終わりを見届けることだけだった。

 永年連れ添ってきた惑星故郷をあっさりと見捨てて、新たな新天地を目指して宇宙へと脱出を図る、人類のその傲慢さと身勝手さには、正直呆れさせられるばかりだ。

 たとえ新たな楽園に辿り着くことができたとしても、結局はまたその場所でも過去の同じ過ちが、再び繰り返されるだけだろう。ならばいっその事――――、

 「――――人類なんて、みんな滅びてしまえばいい」

  強い憎しみと憎悪を込めて少女は呟く。これまでの人類の繁栄に最も貢献した、罪人である自分に与えられた最後の役目。それは今を生きる人類に対し、神の代行者として鉄槌を下すこと。
 
 既にそれを実現させるための手立ては入念に用意してある。
 遠く離れた地点に見える空の上。生き残った全人類を乗せたまま宇宙へと旅立つ、数多の宇宙船箱舟の軌跡を見送りながら少女は願う。人類が向かうその行先に、絶望の未来あれ――――と。

 



******





 金色ファストラの獣の討伐成功から一ヶ月後。

 俺は新たな居住先での生活に、ようやく慣れ始めていた。

 骨董屋【夜香やこうの城】――――様々な魔道具を売り買いするための場所として存在する、魔法使いのための店である。

 扱っている品々は主に、店主であるリセが譲り受ける前の――――以前いた店の所有者が収集してきたものが、ほとんどであるのだとか。

 収納系の効果を持った魔道具や、簡易的な作業を命じられたままに実行する自立式の料理器具など――――店先に陳列されている品々は、そのどれもがあまり大した危険性の無い魔道具ばかりである。

 店のカウンターの奥には扉が二つあり、片方は台所と隣接した食卓がある小さな部屋。
 もう片方は入り口に厳重な封印術式が施された、膨大な数の魔道具を保管しておくための部屋がある。

 倉庫としての役割を担っているその部屋の中は、空間拡張魔法の恩恵によって学校の体育館くらいの広さがある。
 山と積まれた道具や物によって視界は塞がれ、歩くスペースなどほとんどないと言っていい。
 
 おそらくこれまで整理すらされずに、適当に放り込まれてきたのだろう。クロエに初めて部屋の中を見せて貰った時には、そのあまりの惨状に言葉も出なかった。リセもリセでそういった所には無頓着なのか、苦笑いを浮かべるばかりである。

 「前から片づけようとは思っていたんですが、なかなか手が回らなくて。気がつけばこんなことに・・・・・・」
 「まあこれまではこんな状態でも問題なくやってこれたんだ。今更片付けなど必要ない。――――というか面倒くさい」

 クロエから返ってきた答えは想像通りだったが、リセもこの悲惨な現状にげんなりしているようだった。
 確かに今更、この巨大な空間の中を整理しようとしても、どれだけの時間と手間が必要か分かったものではない。

 倉庫の管理は全て全身機械仕掛けの異世界出身【自律機械人形オートメイル】――――右肩下がり男爵に任せているらしく、必要最低限の用事以外ではこの部屋の中に足を踏み入れる者はいないそうだ。

 店の二階には長い廊下とその脇に六つの部屋があり、廊下の突き当りには転移機能を施した大扉が設置されている。
 例の異世界アブネクトへと向かう道中で使用した転移の扉ゲートと違う点は、“その接続先が魔法世界のみに限定される”ということ。

 転移の扉ゲートとは本来、各世界に存在している境界の地脈レイラインに接続することで使用することができる転移装置だ。

 この【夜香の城】からではその境界の地脈レイラインに直接アクセスすることが出来ず、あらゆる世界の中継地点である魔法世界からでしか転移の扉ゲートを作動できないらしい。

 そして残る壁際の六つの扉の内、二つはリセとクロエが使用している個人の部屋。残りは空き部屋が二つと、右肩下がり男爵が仕事をこなす為の書斎。そして取っ手の部分にダイヤルが取り付けられた、謎の扉があるのみだ。

 ダイヤルのメモリにはそれぞれ手洗い場、風呂場、箱庭と刻まれており、その文字が彫られた部分に回して針を合わせることで、入り口の扉を目的の部屋にまで繋げることが可能である。

 手洗い場の部屋――――トイレはいたって普通のものだったが、風呂場に関しては温泉街にある旅館のものと比較しても大差ない程の、広さと豪華さがある造りとなっていた。
 まっさらな白いタイルが敷き詰められた巨大な大浴場。脱衣所の隣には大きな背もたれのある椅子が数個置かれており、どこの世界の製品かは知らないが冷蔵庫まで設置されている。

 クロエいわく、いちいち風呂に入らなくても魔法を使用すれば身体を洗う必要などないらしいが・・・・・・リセは根っからの風呂好きである為、湯船に浸かるという行為そのものに酷く固執しているらしい。
 ならばこうして風呂場ある部屋だけが、特別な造りとなっているのも納得がいくというものだ。

 「私はたとえ金を積まれたって、好き好んで自分から入ろうとは思わんよ」

 どうやらクロエは風呂に入るのが大の苦手――――というか嫌いらしく、普段からこの浴場を使用しているのは、夜香の城の住人の中でリセただ一人だけらしい。
 「ユウ君も自由に使ってもらって構わないんですよ」と、リセから一応言われてはいるのだが・・・・・・今のところは俺もクロエと同じ、身体を清める魔法を用いてそれで毎日を済ましている。

 多少まだ遠慮するという心が残っているのか、そういった部分では俺は未だにここの住人として打ち解けられずにいた。
 まあ、こればかりは時間が解決してくれるのを待つしかない。実際にまだこの場所に俺が住み始めて一月ひとつきしか経っていないのであれば、特に焦って行動を起こす必要もないだろう。

 そして扉に付けられたダイヤルの示す最後の行先――――箱庭。
 四方を偽物の景色を投影した壁で囲った訓練場のような場所であり、俺の魔法使いとしての修行は主にこの場所・・・・・・というよりは部屋の中でおこなわれている。

 広さは申し分ないものであり、当然のように一階にある魔道具の倉庫がある部屋と同じ、空間拡張魔法が使用されている。更にはその広大な空間を最大限に活用した、変幻自在のフィールド作成能力まで備わっていた。

 高低差の激しい陥没地帯や、深い峡谷、広大な砂漠の大地などを、まるで本物のように忠実に再現することが可能である。
 あらゆる世界の環境下でも対応できるようにと、クロエが考案した魔法使いとしての修行が連日その空間の中でおこなわれ、俺の肉体には全身運動からくる猛烈な疲労感が、日に日に蓄積されていった。

 その修行内容とはズバリ――――“我が身に降りかかる危険から、如何にして逃げ切ることが出来るか”というものである。

 クロエが鬼ごっこと称したそれは、とにかく鬼役であるクロエ自身から制限時間内の間、捕まらずに逃げ続けるというもの。実際、聞いただけだと特に大したことはないように思えるが・・・・・・クロエが考案したのは、そんな生易しいものではなかった。

 鬼役のクロエは、造られたフィールドが原型を保てない程の、高威力魔法を連発しながら追いかけてくる為、逃げる役側のこちらとしてはたまったものではない。
 全身を魔力で覆いながら防御を施しているが、一瞬でも気を緩めればあっという間に大怪我を負ってしまう可能性まで出てきてしまう。

 まさに命がけの逃走劇。殺す気はないと分かってはいても、常に死に物狂いでフィールド内を逃げ回っているせいで、消耗される体力の量も尋常ではない。
 
 だが回数を重ねるうちに捕まるまでの間隔が徐々に長くなってきているので、確実にその効果は出てきているのだろう。
 まあおそらくは相当、クロエから手加減をされてはいるみたいだが・・・・・・。





******





 現在、俺が隠れ潜んでいる場所。それは本来隠れる場所が無いはずの、見晴らしの良い荒野の真っただ中である。
 
 周囲は完全に無音。
 
 近くに生えている枯れた草の根の一部が、干からびて地面から飛び出している。
 
 瘡蓋かさぶたのようにひび割れた地面が、幾重にも折り重なって見渡す限り全体に広がっている。
 頭上を流れる灰色の雲が日差しを遮り、薄暗い影で覆われた不気味な雰囲気を演出していた。足元から感じる地面の感触は固く、力を入れて足先をめり込ませれば砂ぼこりが舞い上がる。

 それらが全て偽物の造り出された光景であるというのだから、魔法という力はその限界を推し量ることが出来ない。
 一流のアスリートですら簡単に凌駕するほどの身体能力を、訓練さえすれば誰でも自在に扱える、魔法使いという存在は本当に規格外の存在だ。

 現にこうしてその力を使い、真下にある地面を僅かな時間で掘り起こして、穴の中に入ってから土壁で天井を生成して姿を隠している。
 何故こんな原始的な方法を選択したのか――――その理由は実に単純であり、俺の今の実力がまだまだ未熟なものであるからだ。

 例えば迷彩魔法。これを使用すれば手間をかけずに一瞬で、どこであろうと隠れ潜むことが出来る。しかしその身を隠したい相手が熟練の魔法使いからであった場合、俺のような形だけの魔法では、すぐに見破られてしまうのが分かり切っていた。
 なのでこうして魔法を用いずに、クロエの索敵をやり過ごせればと考えていたのだが・・・・・・。

 (そろそろ三分か・・・・・・)

 前回、クロエに見つかるまでに掛かった時間は三分と十六秒。
 一度発見されてしまえば、そこからはほぼ無抵抗のまま地面へと一方的に縫いつけられてしまう――――つまりは見つかったと同時に、この修行はゲームオーバーということだ。

 十秒・・・・・・十一秒・・・・・・頭の中で数える数字の値が大きくなるにつれて、徐々に辺りに漂う緊張感が高まってくる。
 閉鎖的な空間の中にいるせいで、周囲の光景は真っ暗だ。相変わらず外は静かなもので、俺の口から出る吐息の音がやけにデカく聞こえてしまう。

 (十四・・・・・・十五・・・・・・十六秒!――――とりあえず前より長くは、逃げ切れたみたいだな)

 目標としていた時間を過ぎてもクロエがやって来る気配が無いため、ひとまずその事に安心した俺は安堵のため息を吐く。
 だが四分・・・・・・五分と時間が経過しても、一向にこれといった変化や動きが無いため、逆に不安に駆られた俺は天井の一部の土壁を切り崩し、そこに現れた小さな穴から外の様子を覗き見ることにした。

 先ほどと変わらない、灰色の雲が広がる空の景色が視界に入ってくる。

 遮蔽物が一つもない為、周囲全てを果ての方まで見渡すことが可能だが、俺は限られた僅かな視野から、慎重に情報を収集していく。

 (――――何もない。当然と言えば当然か・・・・・・)

 これまでの経験からして、どうやらクロエは俺の身体から放出される魔力のオーラを遠方から索敵して、広大なフィールドの中から見つけ出している・・・・・・らしい。
 決定的な根拠は無い。だが俺は試しに今回隠れる際、魔力による身体強化を一時的に遮断してみたのだ。

 俺はまだ自分から離れた位置にある魔力の存在を、明確に知覚することなど出来ない。なので正直なところ、今回の作戦はただの思いつきだけで実行してみたのだが・・・・・・どうやら予期せず、上手くいったようだった。
 
 だがそんな楽観的な気分でいたのも束の間。微かな勝利感を胸中で抱きながら、付近の偵察を続けていた俺の視界にふと、空を横切る巨大な影ような何かが映り込む。
 それは今俺が入っている穴の位置から北西の方向を移動しており、物凄い速度で飛行を続けながら、あっという間に地平線の彼方へと消えていってしまった。

 (――――!!今のは何だ?)

 静けさの中に突如現れた異常事態。その正体を探るべく、慌てて穴の淵から這い上がった次の瞬間――――地表に雷が落ちたような轟音が遠方から鳴り響き、その後から一泊遅れて巨大な物体が落下した方向から、目も開けていられない程の強風が砂嵐となって吹きつける。

 俺は思わず両手で顔を庇いながら、急いで全身に魔力を用いた身体強化を施した。状況が状況なので“クロエに見つかるかもしれない”という危険を冒してでも、そうせざるを負えないだろう。

 俺の前方から後方に向かって突き抜ける衝撃波は、やがて円の形を描きながら荒野の隅々にまで一気に燃え広がるように拡散する。

 もくもくと煙り立つ遠くの光景を目にしながら、俺はこれから起こるであろう絶望の前触れにも似たそれを見上げて、自らの師のあまりの容赦のなさにその場で半笑いを浮かべた。

 「ははは・・・・・・これは無理だろ・・・・・・」

 上空に浮かぶ幾つもの黒い点――――その正体は巨大な大岩の表面に、燃え盛る魔力の黒炎を纏った黒い太陽。空を埋め尽くす程の圧倒的な物量で、それはヒュルヒュルと音を立てながら特に狙いを絞らず拡散し、辺り一帯を焦土と化す。

 時間差で途切れることなく襲い来る爆風と爆音。大気の振動で五感は麻痺し、もはや俺に残された選択肢は、その場に留まりながら防御のための魔力を全力で展開し、全てが過ぎ去るのをを待つしかなかった。

 ――――そして巨岩の雨の到来から数分後。

 先ほどまで荒野の状態を再現していたフィールドは、今や辺り一面が焼け焦げた火山地帯のように変わり果ててしまっていた。
 焦げ臭い匂いが空気を漂い、地面から湧き上がる幾つもの煙が鼠色の空の中へと溶け込んでいく。

 全身に頭から焼けた土を被り、爆風によって服の一部が焼き切れ、俺の状態は格好だけ見ればさんざんなものだった。しかし特に大きな怪我などはしておらず、あれだけの爆風に見舞われて命があるというだけでも、クロエが放った攻撃に大幅な手加減が加えられていたことを結果的に示唆していた。

 「おー、生きてるかー?」

 やけにのんびりとした少女の声が頭上から響いて来る。仰向けに寝転んで大の字になった俺の姿を見下ろしながら、重力を感じさせない軽やかな動作で、飛んできた空の上から地面へと着地するクロエ。
 
 この場所に似つかわしくない、ぶかぶかのパーカーと部屋着用のズボンを身に付けたクロエは、片手に携帯ゲーム機を持ちながら、眠そうな表情で俺の様子を一瞥する。それから特に目立った怪我や異常がないのを確認した後、

 「――――訓練終了。管理者権限によりフィールドの状態を初期状態に移行させろ」

 そのように誰もいない空中に向かって命じるように告げた。
 するとその言葉に呼応するように、辺りに広がる景色がぼやけながら色を失いはじめ、先ほどまで俺たち二人がいた場所が何もない白い空間の部屋に変化する。

 クロエの裸足の足裏から発せられるペタペタとした音が、狭い室内の中に一際大きく響き渡る。
 持っていた携帯ゲーム機を大きな上着のポケットに入れながら、クロエは未だに情けなく床の上で倒れて動けずにいる俺に対して、やれやれといった様子で話しかけてくる。

 「――――今回も残念だったな。この調子では当初の最終目標である十分間など、夢のまた夢。ただ成り行きに身を任せるのではなく、その場の状況に応じて臨機応変に、色々と工夫を凝らさなければ、これ以上の成長は見込めないぞ」
 「そんなこと言ったって・・・・・・あんなのに・・・・・対応しろとか言われても無理があるだろ!――――それに今回は前回よりも大幅に逃げ切った時間を更新したんだ。それで成長が見込めないって一方的に言われても、納得なんて出来ないぞ」
 「時間?・・・・・・ああそれはな。ちょうどプレイしていたゲームの進行状況が良いところだったんだ。思わず夢中でやっていたら、今が小僧の修行中であることをすっかり忘れてしまっていてな。悪いとは思っているよ」

 口ではそう言いながらも特に反省した様子もなく、言葉だけの謝罪をしながらクロエは俺たちのいる地点から離れた場所にある・・・・・・部屋の入口の扉の方に視線を移す。
 カチカチと――――その取っ手に取り付けられたダイヤルを回転させる音が外側から響いてきて、それが鳴り終わると同時に開いた扉から私服姿のリセが、何やら一枚の封筒を手に持った状態で部屋の中へと入ってきた。

 「クロエー。この前、管理局に送っておいた、申請用紙の返答が返ってきましたよー。――――ってユウ君!・・・・・・だ、大丈夫なんですか?」
 「あ、ああ大丈夫だ。ちょっと疲れて横になっていただけだから」

 心配そうに声を掛けてきたリセに対して、俺は問題ないというアピールを大げさにしながら、寝そべっていた床の上から気力のみで強引に立ち上がる。
 その拍子に服の上に積もっていた土や砂が粉塵となって周辺に舞い上がるが、俺はそれを掌で払いながら、話を誤魔化すかのようにしてリセに質問をする。

 「それでリセ・・・・・・一体どうしたんだ?部屋に入ってくる時、クロエに何か用事があるみたいに言っていたけど」
 「ええ、そのことなんですが――――クロエ。例の魔法世界マギステリア戸籍登録手続きの申請結果が、つい先ほど管理局の方から書簡で送られてきました。
 ――――それによりますと、やはり本人が直接あちらの役所の方に出向いて登録手続きを行わなければ、今回の申請内容は認められないとのことです」
 「カーーー!相変わらず頭の固い連中だな!別にこちら側が送った手紙だけでも、必要な情報は全て得られるというのに・・・・・・」
 「当然ですよ。というかそもそもこんなに大事な手続きを、手紙だけで済ませようとしたクロエの方が非常識なんです。魔法世界向こうに赴くのが面倒なのは分かりますが、ここはユウ君の後継人であり師匠でもあるクロエ自身が、私たち二人に対して魔法使いとしての手本を示してもらわないと・・・・・・」
 「分かった!分かった!――――ッチ、こうなってしまったからには仕方がない。小僧、今から急いで服を着替えて支度をしろ。すぐに出発する」

 有無を言わさぬ口調で指示を出すクロエに対して「どこに?」と尋ねるまでもなく、俺の小さな師匠はこれから向かうことになる行先を、心底面倒そうな様子で声に出して告げた。

 「――――魔法世界にな」














































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