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一話
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あっと声を出す間もなく、ひったくられたスクールバッグは二月の澄んだ空をとび、レンガ調の塀の向こうに消えた。去年まで友達だったやつらが、楽しそうな笑い声をあげて通り過ぎていく。
むかついた顔を見せるのさえ嫌だ。なんも感じていないふりで塀沿いを歩く。二か月後には高校三年生。受験準備で忙しくなれば、こんな遊びをしている暇はない。それまでの我慢だ。
京都市の北部、北山通はモダンなカフェや教会、結婚式場などがある高級住宅街。大通りから少し奥まった路地に建つ白壁の古い洋館が、榊田ギャラリーだ。
予約制らしく、近くに住んでいても入ったことがない。聞いた話だと、大正時代の建物で、さるコレクターの別荘を改装した邸宅美術館らしい。
サラリーマン家庭の高校生には縁遠い世界だ。はあ、やだな。今から僕、「塀越しに投げ込まれた私物を取らせてください」って言いに行くのか。
ため息をのみこみ、重圧感のある鉄門を見つめる。夕暮れ時。庭の木々が生い茂っているので、周囲よりワントーン暗く感じる。
……今、営業中なのかな? 美術館に無縁なので、開館時間がわからない。どこかに書いてないか、探す。スマホもバッグの中だ。
あきらめて門をくぐると、入ってすぐ左側にお地蔵様の祠があった。民家の敷地内にお地蔵様がまつられているのは、京都ではそんなに珍しいことではない。ばあちゃん家にもある。住宅の建て替えで取り壊されるはずだった祠を引き取ったそうだ。でも祠があるような家は、昔ながらの和風建築が多い気がする。町内会でも発言力のあり、昔から京都に住んでいる家庭だからだろう。古い家とはいえ、洋館にあるのは、さすがに不思議な感じがする。しかもお供え物はチョコブラウニーで、ちょっと笑った。
二階建ての洋館の玄関は、自動ドアではなく、個人宅らしいドアノブだ。金属製のドアノブを握れば、ひやりと冷たい。時刻は十八時すぎ。空は暗い。閉館後でも誰か残っているだろう。人がいないならいないで、そのほうが庭で捜しものをしやすい。
ドアを開けると、吹き抜けの広い玄関ホールの受付にいたお姉さんが立ち上がった。大きなお腹をおさえているところを見れば、妊娠中なんだろう。館内は土足禁止で、スリッパに履きかえるルールらしい。
「申し訳ございません、もう閉館時間ですので」
ブレザーの制服姿で、どう見ても高校生の僕にも敬語で言う。話を聞いてくれそうな人だと、ほっとした。
「違うんです。……友達とふざけてて、ここの庭にバッグを投げ入れられてしまって」
口にすると、みじめさが増した。ギャラリーの受付をするような人は、そんな野蛮さとは無縁だろう。きょとんとした顔でお姉さんは、僕が言ったことを咀嚼し、「少々お待ちください」とその場を離れようとする。
「入っていいなら、僕が自分で取ってきますから」
お腹の大きな人に物を拾わせるのは嫌だった。お姉さんは「でも」と首をかしげる。そんなやり取りが聞こえたのか、廊下の奥から別のお姉さんが出てきた。おっとりした受付のお姉さんより十歳ぐらいの年下、二十歳ぐらいに見える。白いコックコートと黒ズボン、ショートカット。
「堀田さん、どうされました?」
コックコートのお姉さんが、受付のお姉さんに聞いた。堀田さんは「お客様が、庭に私物を落とされたみたいで」と説明する。それじゃあまるで、僕が美術館の利用者みたいだ。慌てて言った。
「友達がふざけて、塀越しにバッグを投げ入れたんです」
するとコックコートのお姉さんも、堀田さんと同じようにきょとんとした。でもそれは一瞬だけ。
「それなら私が見てきますね。堀田さんはこのまま、ここにいてください」
ニコッと笑ってそう言うと、その場でコックコートを脱いで堀田さんに渡し、スリッパから靴に履き替える。
「行こう。どの辺?」
お姉さんが言って、外に出る。長袖とはいえ、防寒着なしの姿は寒そうで、申し訳なかった。
「こっちです、すみません……」
僕が指をさすと、お姉さんが先導して洋館の脇から庭へと抜ける。門をくぐったのが初めてなら、庭に来たのも初めてだ。外から見るよりも広い。石畳を敷いた散策路がある、豪奢な庭だ。つくりこそ洋風だけど、植わっている木々は日本のものが多い、というか、日本の木ぐらいしか、僕にはわからない。ぽつりぽつりと赤く色づいているのは梅だろうか。比叡山を借景にした庭は、日中ならなおきれいだろう。
「投げられたバッグって、どんなバッグ?」
「スクールバッグです。ごくふつうの」
「……それは、なかなかだね」
「なかなか?」
聞き返すと、お姉さんは「うちの塀、結構高いから、なかなかの筋力があるよね。パティシエ向きだと思って」と言った。
「パティシエに筋力がいるんですか?」
お姉さんは小柄で細いから、筋肉とは無縁そうだ。
「基本、立ちっぱなしだから体力仕事」
お姉さんがそう言って、上腕二頭筋に力をこめる。とはいえ、シャツが分厚いので、よくわからない。
「へえ……」
「信じてない?」
「信じます。あ……!」
椿の花の植え込みに、僕のスクールバッグを見つけた。うわ、と思ってスクールバッグを持ち上げると、ノートや教科書が中からこぼれおちた。……最悪だ。ファスナーがちゃんとしまってなかったらしい。慌てて拾えば、お姉さんも拾ってくれた。
「すみません」
「いいよ」
「こっちより、椿を見てもらっていいですか?」
ぱっと見、枝は折れていないようだったが、本来の形を知っている人からすれば、どこか傷つけたかもしれない。
お姉さんに椿を見てもらっている間、僕は膝をついて周辺をさがす。
ふと、何かが視界の端を横切った。猫か? と思いつつ、スルーしてペンケースを拾っていると、黒い塊はその場に居座っている。顔を上げると狸でぎょっとした。リアル狸は、闇になじむように真っ黒く、冬毛でもふもふしている。
「わっ!」
悲鳴を上げた僕に狸もびっくりしたらしく、逃げていった。
「どうしたの?」
お姉さんが驚いたように聞いてきた。
「今、狸が」
「狸?」
「見ませんでした?」
まだ心臓がドキドキする。野生の狸を見かける機会なんてそうそうない。
「その狸って、もふもふで、これぐらいの大きさじゃなかった?」
お姉さんが手でサイズ感をあらわす。子猫と成猫の中間ぐらいの大きさ。
「そうです、それぐらい」
「あー、じゃあ分かった……そっか、狸か」
ひとり納得したみたいに、お姉さんはコクコクうなずいた。なんだろう? 前々から庭に動物が出入りしていると知ってはいたけど、それが狸とは知らなかった、みたいなこと?
僕がぽかんとすると、お姉さんがはっとして、
「椿は素人目には大丈夫そう。でも専属の庭師さんが見たら、何か言うかもしれない」
「何かって、弁償ですか?」
「どうだろう……。バッグの中身は全部そろった?」
「たぶん」
雑に入れた中身を改めて確認する。ノート、教科書、クリアファイル、ペンケース、スマホ。財布はズボンのポケットにある。一応ペンケースの中身も見たほうが……って、あ。
「お守りがない」
「え、お守りが?」
お姉さんがすぐにしゃがみこんで捜してくれる。僕も捜したが、居心地悪さがどんどん胸にこみ上げた。客でもないのに、閉館後に迷惑をかけている。
もういいですと僕が言おうとしたのとほぼ同時に、「明日でもいい?」とお姉さんが聞いてきた。
「日中に捜しておくから。きっと見つかるよ」
お姉さんが明るく笑ってはげましてくれた。なんか、……泣きそうだ。
スクールバッグを投げられたときより、お守りをなくしたと気づいたときより、初めて会う人に優しくされたことのほうが、泣きたくなる。
洋館に戻って名前と連絡先を書いた。椿の確認も、明日庭師にしてもらえるそうだ。
「鈴本佑くんね。私は和泉すずめ」
パティシエのお姉さんはそう自己紹介してくれ、「元気出して」と個包装したブラウニーをくれた。お地蔵様にお供えしてあったものと同じブラウニーだ。家に帰ってからも食べるのがなんだかもったいなくて、勉強机にかざった。
翌朝、高校に登校すると、最近放置していたスマホが久しぶりに気になった。和泉さんから、留守電入ってないかな。昼休みも教室でスマホをいじっていたら、横から取り上げられた。
「何? 鈴本って友達、まだおったん?」
小ばかにしたように聞かれ、「いない」と言い返した。ずっと無反応を貫いていた僕が初めて言い返したので、小出は驚いた顔で僕を見返した。
「昨日、お前がバッグを投げた先に椿があったんだよ。その弁償金がいくらになるか、見積の電話があるかもしれないんだ」
「……弁償ってまたまた」
「嘘だと思うなら、スマホを返さなくていいよ。僕が電話に出ないせいで家に押しかけられたら、そんときはお前がやったって言う」
「きもっ。冗談も通じへんのか」
と小出が言い捨て、僕のスマホを机に置いた。冗談に他人を巻き込むなよ、と思ったけれど、逆ギレされたくなくてやめた。
それにしても、昨日といい今日といい、いつもよりあたりきついな。期末試験前で部活ができないから、いらだっているんだろうか。
スマホはスクールバッグにしまって、机にうつぶせになる。寝たふりをしようとして、本当に少し眠った。
放課後になってスマホを見ると、留守電が一件あった。市外局番から始まる番号だ。
「榊田ギャラリーのカフェスタッフ、和泉です。椿の件、大丈夫みたいです。それとお守りも見つかりました。都合がいいとき、また寄ってください」
昨日よりも丁寧な言葉遣いだ。そばに上司でもいた? なんにしろ、弁償しなくてすんで、お守りが見つかったのは、うれしい。
鹿ヶ谷ギャラリーに出向くと、受付の堀田さんが懐かしい顔でも見たように目を細めた。
「どうぞ、カフェのほうへ」
「カフェですか?」
戸惑いつつ、玄関でスリッパに履き替える。アンティークの調度品や絵画が並ぶ廊下を歩いた突き当りが、カフェのあるダイニングルーム。
なんとなく、和泉さんが待っているのかと思ったら、誰もいない。ガラス越しに庭にいる作業着姿の男が見えた。彼が庭師だろうか。ガラス戸を開け、声をかけてみる。
「すみません」
振り返った男は、ネックウォーマーで鼻先まで隠している。暗闇でも輝く瞳は金色だ。目元しか見えないが、おそらくイケメンの部類だと思う。しかもそのイケメンのベルト通しから、見覚えのあるお守りをぶら下げていた。
「それ、それです! 僕が落としたやつ」
スリッパなので外に出られないのに、男はゆっくりとした足取りでやってくるから、じれったい。
「ありがとうございます!」
僕が手を伸ばすと、ようやく目の前にきた男が、犬がお手をするときみたいに手を置いた。は? と思う間にその手が遠のく。僕の手のひらに七分咲きぐらいの椿の花があった。
男はネックウォーマーを顎まで下げた。予想より若い。二十四、五歳ぐらいだろうか。中性的に整った目鼻立ち。いくらか予想はしていたけれど、予想の何倍も顔がいい。男にこういうのも不思議な感覚だが、美人だ。歌舞伎の女形のような、そそとした美しさ。無表情な分、つくりものめいた印象がある彼の目が、僕を射抜く。
「きみが犯人?」
そう問われ、はっとした。この椿は、僕のスクールバッグの衝撃で落ちたのか?
「かもしれないですけど……、でも椿の件は大丈夫って」
いや、和泉さんが電話をくれた時点では大丈夫だったけど、のちにダメだと気づいたのか? それとも、僕が逃げないよう、一度安心させておびき寄せた?
「すずめさん」
と、男が室内をのぞき込んで呼んだ。すると「はいはーい」と返事をした和泉さんが何やら運んでくる。カセットコンロの上に鍋とボールを積み上げていた。前が見えている状態ではなさそうで、僕が手を出そうとすると、「触らないで。バランスが崩れる」と怒られた。
「お待たせしました、皆川さん」
無事、窓際のテーブルに置いた和泉さんが、男に向かってそう言った。皆川さんは、「ありがとうございます」とこたえた。
追加で持ってくるものがあるらしい和泉さんを僕は追いかける。
「椿の件、大丈夫って言ってましたよね?」
小声で聞くと、和泉さんは大きくうなずいた。
「大丈夫。皆川さんの作る料理、おいしいから」
なんの説明にもなってない。ってか、料理ってもしかして、……これを食べるの? 僕は渡された椿を見た。なんで? 花の命を無駄にするなってこと?
呆然としている間に和泉さんが「はいこれ」と、取り皿と割りばしを渡してきた。あ、本当に食べるんだ?
和泉さんは菜箸と油きりバットを持っている。……まさか、揚げ物で?
皆川さんは、カセットコンロで油の入った鍋を熱している。外から吹く風が、火を揺らすと、風をふせぐように皆川さんが立ち位置をかえた。室内に入ればいいのにと思うのだが、作業着では入りにくいのだろう。マダムが優雅なアフターヌーンティーをしてそうな部屋だし。
皆川さんは僕の手から椿の花をつまみ、
「一般的に、椿はガクを木に残して落ちるんです。でもこれはついたまま。この意味が分かります?」
ガクとは、花と茎の付け根にある、イチゴでいうヘタの部分だそうだ。
「……自然に落ちた花じゃない?」
「その通り」
正答してもうれしくない。
和泉さんが確認した時点で「大丈夫」と思ったのは、椿の花は落ちるものだから、とくに違和感を抱かなかったが、皆川さんは落ちた花にこそ違和感を抱いた。
っていうか、顔のいい年上から敬語を使われるの、怖いな……。声も荒らげていない、淡々とした口調なのに、怒っているのがヒシヒシと伝わってくる。
皆川さんは水の入ったボールで花を軽く洗うと、クッキングペーパーで水気をきって、天ぷらの衣につけた。て、天ぷらだー。椿の天ぷらを僕は食べさせられるんだ。
「それって」
おいしいんですか、と聞きたかったが、やめた。皆川さんの心象をこれ以上悪くしたくない。罰ゲームだと思って食べるよう。
椿の天ぷらだろうと予想していても、それでもいざ衣をまとった椿が熱した油に投入された瞬間、うわ、椿の天ぷらだと愕然とした。
和泉さんはといえば、興味津々で見つめている。助けてくれる気はなさそうだ。
ほどなく、油きりバッドに天ぷらが置かれた。
「どうぞ」
と、皆川さんが言う。
ど、どうぞって。はあ、へえ。やっぱり食べるんだ? 僕が。
二人の視線を受け、僕は椿の天ぷらに箸を伸ばす。天ぷらの衣の下から、紫がかった花びらが透けていた。おそるおそる口に運び、そしゃくする。
「……」
びっくりした。揚げたての衣はパリッとした歯触りで、肉厚の花びらから、花の香りが口いっぱいに広がった。飲み込んだ後も、贅沢な香りの余韻が続く。ほんのりした甘味と、山菜のようなほどよい苦味。おいしいとかまずいとかじゃなく、美しいと思った食べ物は初めてだった。
「……すっごいです」
感動がうまく言葉にならない。でも皆川さんは優しくほほ笑んだ。目を細め、笑った顔は、キラキラと漫画の効果音でも聞こえそうにまぶしい。
「皆川さん、私も食べたいです!」
和泉さんが挙手をする。皆川さんの顔から笑みがすっと消え、
「ダメ。花が自然に落ちるまで待ってください」
「ですよねー。そうだと思いました」
言ってみただけです、と和泉さんはしゅんとする。
和泉さんを名前で呼ぶから、ふたりは付き合っているのかと思ったら、お互いに敬語だし、甘い雰囲気はない。花料理の師弟関係なのか?
「ごちそうさまでした。……すみません、そのお守り、返してもらえますか?」
僕が言うと、「これがきみのものだという証拠は?」と皆川さんが問われた。落とし物における身分確認は当たり前だ。でも京都御所の西にある護王神社の健脚お守りだから、僕の名前なんかもちろん書いていない。
「……大吉のおみくじが三枚入っていたら、僕のです」
「おみくじ?」
と、聞いたのは和泉さんだ。
「僕、陸上部で、四百メートルリレーの選手だったんです。チームメンバーにこのお守りをもらいました」
「陸上部なんだ。どうりで、すらっとしている」
和泉さんが言い、僕はあいまいにうなずく。幽霊部員だけど、陸上部にはまだ在籍している。
「ふつう、大会前にもらうもんでしょうけど、もらったのは大会後です。バトンミスした僕を励ますために。おみくじは『俺らの運も込めた』って意味で、入れてくれたそうです」
三年の先輩二人と、二年二人のチームだった。
引退試合を台無しにした僕を、先輩たちは責めなかった。
僕が周りから孤立したのは、大会での失敗ではなく、大会での失敗を取り戻そうとしないせいだ。先輩から思いを託されたのに、その期待にこたえようとしないからだ。
チームメンバーでもある小出には、「部活に来いよ」と夏以降、毎日誘われた。でも行けなかった。あの日から、左手にうまく力が入らない。スクールバッグやスマホを簡単に横取りされてしまうぐらいには。
野球では、ボールが手から離れなかったり、思い通りに動かなかったりすることを「イップス」というらしい。名前がつくぐらいありふれたことならば、克服できるんじゃないかと思った。
でも、がんばりたくなかった。
だって、これ以上ないぐらいがんばった上で、僕はバトンミスをした。努力が報われるとはかぎらない。……そして他人の努力まで、僕が台無しにした。
「一枚しか入ってない」
遠慮なくお守りの中身を見た皆川さんが言う。
「え、一枚?」
びっくりして僕も覗き見る。ばちあたりなことをしていると思ったが、ほんとにおみくじは一枚だけだ。
「どっかにまだ落ちてるのかも」
僕が靴を履き替えに玄関に向かおうとすると、「靴、こっちにもあるよ」と和泉さんが下駄箱のつっかけを指さす。庭の散策用らしい。下駄が石畳で鳴るのは風流……って、場合じゃない。
カランカラン足音を鳴らしながら、和泉さんが言った。
「バッグを投げ入れたのは、もしかして部活仲間?」
「……そうですけど」
「周りに相談できる人、いる?」
何を言いたいのか察して、僕は笑った。
「いじめじゃないです。じゃれただけ。悪ノリがすぎちゃっただけです。掃除当番みたいなもので、たまたまいじられる番になっただけです」
「当番だっていうなら、友達に同じことをできる?」
僕が口ごもると、和泉さんは真剣な顔で続ける。
「他人にしたくないような嫌なことは、されなくたっていいんだよ」
ふつう、逆じゃないか。自分がされて嫌なことを他人にしない。
「庭にボールが飛び込んでくることは、あるよ。野球ボールもサッカーボールも。でもバッグなんて、しかも重いスクールバッグをわざわざ投げるなんて、悪意しかない」
和泉さんは自分事のように怒る。たぶん、昨日の時点から、僕が置かれている境遇を察していたのだ。
他人にしたくないような嫌なことは、されなくたっていい。
彼女の言葉が心にじんわりと入ってくる。
がんばれと言ってくれた先輩や小出に背中を向けた僕は、そういうこと、望んじゃいけないと思っていた。
椿の場所につくと、そこには先客がいた。昨日の狸が椿の花をもしゃしゃ食べている。
「……、椿が落ちたの、僕のせいだけとは言い切れないんじゃ?」
僕が狸を指さすと、皆川さんは「そうですね」とうなずく。
「そうですねって」
「きみのせいとは言い切れないけれど、きみに責任がまったくないとも言い切れないと思いますが」
まあ、うん。それはそうなんだけど。
狸は人なれしているようで、近寄ってきて皆川さんのつまさきをかぐ。皆川さんは動物園の飼育員みたいに動じない。
「こいつ、花を食べるぐらいなら、紙も食べますか?」
まさかおみくじをこいつに食べられたのかと思って皆川さんに聞くと、皆川さんは首をかしげた。
「きみは花を食べましたが、紙も食べます?」
「……食べないです」
「今、そこにいるんですか?」
と、聞いたのは和泉さんだ。
そこにいる、とは?
「いますよ。椿の花を食べていました」
皆川さんがそう答えると、和泉さんは椿のそばまで行った。
「見えない……、本当にいます?」
くやしそうに顔をしかめるから、訳が分からない。
「和泉さんって、何を捜しているんですか?」
皆川さんに聞いたら、「こいつです」と足元の狸をゆびさした。……どういうこと?
皆川さんは両手でひょいと狸を持ちあげる。狸は宙で足をばたつかせた。
「何が見えます?」
「狸です」
「ふつうは見えないんです」
見えないって、何?
「だって、いるじゃないですか」
皆川さんは赤ん坊でも抱くみたいに狸を胸に抱きなおした。
「いますね。でも見えないんです」
「哲学ですか? なぞなぞ?」
もう意味がわからん。
「一般的な動物ではないんです。鬼、化物、妖怪、物の怪、あやかし。呼び名はなんでもいいですが、そういうものが集まる庭なんです、ここは」
つらつらと聞きなれない単語が並べられる。鬼って、……この、イケメンにだっこされてあやされる狸があ?
「鬼なら、角があるでしょ?」
「海外の幽霊に足があって、日本の幽霊に足がないのは、幽霊画の影響です。鬼に角があると考えるのは、鬼を描いたイラストを見たからです」
そうは言われても、目の前のもふもふ狸と鬼がイコールにはならない。
「イメージと実際が解離することは多いと思いますけれどね。たとえば、学園ラブコメ漫画の学校生活ときみの学校生活は同じですか?」
「ぜんぜん違います」
すごくわかりやすい! さえない高校生がかわいい女の子に好かれまくる漫画は多いが、僕にそんなことは起きない。
皆川さんはさもありなんとうなずいて、
「見える人間には条件があります。まず未成年。次に今いる場所を離れ、どこかへ行きたいという願望を持っていること」
「あ、でも生まれながらの素質もあるそうです。皆川さんは代々その家系で、そういう地脈スポットに出入りする庭師なんですって」
和泉さんがそうつけたした。
京都というまちは、いたるところにお地蔵様がいて、神社仏閣も多く、生活と信仰の距離が近いとはいえ、すんなりと受け入れられない。
妖怪スポットの庭師の家系ってつまり、陰陽師みたいなこと?
皆川さんは狸を僕に渡そうとする。でも狸は嫌がって逃げて行った。しかもふわっと空気中にとけていなくなる。……聞かされた話も、今見た光景も、どう解釈していかわからない。
ただ間違いなく言えるのは、美術館の悪評に繋がるような嘘を、地元の人間相手につくわけがないってこと。横のつながりが強固な京都で、そんな振る舞いは命取りだ。新しい店ができては、土地のしきたりになじめず、つぶれていく。
戸惑う僕に皆川さんは続ける。
「狸には他を抜くという意味があります。店頭に狸の置物が飾られるのは、商売繁盛の縁起物だからです。きみに狸が見えたのは走りたい気持ちが強いからこそでしょうね」
「……」
他人に負けたくない。走りたい。
そんなこと、僕が望んでいいのだろうか?
とっさに言葉にならず、僕は視線を下げる。皆川さんの腰には、先輩たちから贈られたお守りがある。
「お守り、返してもらっていいですか?」
「なぜですか?」
きょとんとした顔で言われたから、こっちこそびっくりした。
「めっちゃいい感じの流れでしたよね? 陸上部に戻って、がんばれみたいな」
「戻るってなんです?」
聞き返されて、やっと気づいた。和泉さんはそういう言いづらい部分を敏感に察知したが、皆川さんは全然、察していない。和泉さんがすまなさそうにフォローした。
「ごめんね、そっち系の知識が豊富なぶん、ほかのことには鈍いの」
せめて、お守りを所持している写真でも持ってきてほしいと言われ、帰るしかなかった。自宅に向かって歩きながら考える。お守りの写真って、ないなあ。自撮りする習慣がない。
……となると、頼れるのは、やはり購入者か?
先輩たちか、小出か。いっそ取り返さなくてもいいんじゃないか、という気持ちも正直あった。何言われるかわかんないし。これ以上こじれたくもなかったし。
それでもスマホを取りだし、僕は小出に電話をかける。
鬼を見る力があるなら、どうか、その力でつながってくれ。
無視される可能性も考えていたけど、意外にも小出は電話に出て言った。
「……いくら?」
「へ?」
「だから、弁償金?」
ああ、そういう話、たしかにした。払う気はあるのか。律儀だな。
「いやそれは大丈夫だった。花を食べさせられたけど」
「は?」
「意味わかんないよね。僕もよくわかんない。……去年もらったお守りの中におみくじが一枚しか入ってなかったんだけど、本当に三枚入れた?」
怒るかな、と思いつつ聞くと、「……見た?」と笑った。鼻にかかった声が懐かしい。
「うん」
「一枚しか入れなかった」
「なんで?」
三枚から一枚になったんじゃなくて、はじめから一枚だった?
お守りをもらってから半年以上、三枚あると思い込んでいたからびっくりして聞き返す。
「大吉が出るまでひこう、ってノリになったんやけど、いざひけたら、先輩たち受験やから、俺の運だけでいいや、どうせ中身なんか見ないからって一枚だけ」
どうせ中身なんか見ない、か。たしかにそうだ。
「わざわざ文句言いに電話してきたんか?」
「ちがっ……」
「俺の運を持ってったくせに、部活来ないとか、ありえへん。……こっちだけ必死みたいで、あほらしい」
僕の反論を待たず、小出が言った。文句なんて言わせないぞ、と宣誓するようだった。
スクールバッグもそうだが、最近の小出は、小出らしくなかった。
実力行使に出るなんて、他人に迷惑をかけるような行動をとるなんて、大会に出たい人間がすることじゃない。やるならばれないように、もっとうまくやってほしい。
僕はせめて、小出に勝ってほしかった。
だが小出はきっと、僕と勝ちたかったのだ。
そんな思いを僕はずっと裏切っていた。
「……ごめん」
謝るのはなんか違うと思って、ずっと言えなかった。
バトンミスしてごめん。声かけてくれたのに何もできなくてごめん。お守りをなくしてごめん。取り返せなくてごめん。
いろんなごめんを一言に込めた。そしたら小出は「おせえよ」と言った。
ほんとに、そうだ。その通りだ。
観念して左手のことを打ち明ける。すると小出は、
「バトンを握れないなら、個人種目やれば?」
「短距離で伸び悩んだものあって、リレー始めたのに?」
知ってるだろ? と僕が言い返すと、「負けてこい」と小出が言った。
「仲間の期待にこたえられないようなやつ、一年にこっぴどく負けろ」
ひどい言い草だ。でも、今の僕にぴったりのアドバイスだと思う。
「……試験明けに行く」
「わかった」
「絶対だな」
と、小出はくぎを刺す。「絶対だ」と返して電話を切る。
お守りについて相談しそびれた、と気づいたのは、切ったあとだ。まあでも、急がなくてもいい気がする。和泉さんはもちろん、皆川さんもお守りを捨てる人じゃないだろう。庭にお地蔵様の祠があるし、陰陽師だというし、それに椿の花の命をいかす料理を作る人だ。きっと、ちゃんと保管してくれる。
僕はスマホをスクールバッグに入れ、ファスナーをしっかりしめてから、リュックを背負うみたいにスクールバッグを背負う。
ぐっと踏み出した足は重い。駆け出しても、以前のように体は動かない。それでもいい。いや、よくはないけど、練習していないんだから仕方ない。
ふっと吐いた息に、甘美な椿の花の味がよみがえる。これから椿を見るたび、風流と思うより先においしそうと思っちゃいそうで、笑いがこみ上げた。
むかついた顔を見せるのさえ嫌だ。なんも感じていないふりで塀沿いを歩く。二か月後には高校三年生。受験準備で忙しくなれば、こんな遊びをしている暇はない。それまでの我慢だ。
京都市の北部、北山通はモダンなカフェや教会、結婚式場などがある高級住宅街。大通りから少し奥まった路地に建つ白壁の古い洋館が、榊田ギャラリーだ。
予約制らしく、近くに住んでいても入ったことがない。聞いた話だと、大正時代の建物で、さるコレクターの別荘を改装した邸宅美術館らしい。
サラリーマン家庭の高校生には縁遠い世界だ。はあ、やだな。今から僕、「塀越しに投げ込まれた私物を取らせてください」って言いに行くのか。
ため息をのみこみ、重圧感のある鉄門を見つめる。夕暮れ時。庭の木々が生い茂っているので、周囲よりワントーン暗く感じる。
……今、営業中なのかな? 美術館に無縁なので、開館時間がわからない。どこかに書いてないか、探す。スマホもバッグの中だ。
あきらめて門をくぐると、入ってすぐ左側にお地蔵様の祠があった。民家の敷地内にお地蔵様がまつられているのは、京都ではそんなに珍しいことではない。ばあちゃん家にもある。住宅の建て替えで取り壊されるはずだった祠を引き取ったそうだ。でも祠があるような家は、昔ながらの和風建築が多い気がする。町内会でも発言力のあり、昔から京都に住んでいる家庭だからだろう。古い家とはいえ、洋館にあるのは、さすがに不思議な感じがする。しかもお供え物はチョコブラウニーで、ちょっと笑った。
二階建ての洋館の玄関は、自動ドアではなく、個人宅らしいドアノブだ。金属製のドアノブを握れば、ひやりと冷たい。時刻は十八時すぎ。空は暗い。閉館後でも誰か残っているだろう。人がいないならいないで、そのほうが庭で捜しものをしやすい。
ドアを開けると、吹き抜けの広い玄関ホールの受付にいたお姉さんが立ち上がった。大きなお腹をおさえているところを見れば、妊娠中なんだろう。館内は土足禁止で、スリッパに履きかえるルールらしい。
「申し訳ございません、もう閉館時間ですので」
ブレザーの制服姿で、どう見ても高校生の僕にも敬語で言う。話を聞いてくれそうな人だと、ほっとした。
「違うんです。……友達とふざけてて、ここの庭にバッグを投げ入れられてしまって」
口にすると、みじめさが増した。ギャラリーの受付をするような人は、そんな野蛮さとは無縁だろう。きょとんとした顔でお姉さんは、僕が言ったことを咀嚼し、「少々お待ちください」とその場を離れようとする。
「入っていいなら、僕が自分で取ってきますから」
お腹の大きな人に物を拾わせるのは嫌だった。お姉さんは「でも」と首をかしげる。そんなやり取りが聞こえたのか、廊下の奥から別のお姉さんが出てきた。おっとりした受付のお姉さんより十歳ぐらいの年下、二十歳ぐらいに見える。白いコックコートと黒ズボン、ショートカット。
「堀田さん、どうされました?」
コックコートのお姉さんが、受付のお姉さんに聞いた。堀田さんは「お客様が、庭に私物を落とされたみたいで」と説明する。それじゃあまるで、僕が美術館の利用者みたいだ。慌てて言った。
「友達がふざけて、塀越しにバッグを投げ入れたんです」
するとコックコートのお姉さんも、堀田さんと同じようにきょとんとした。でもそれは一瞬だけ。
「それなら私が見てきますね。堀田さんはこのまま、ここにいてください」
ニコッと笑ってそう言うと、その場でコックコートを脱いで堀田さんに渡し、スリッパから靴に履き替える。
「行こう。どの辺?」
お姉さんが言って、外に出る。長袖とはいえ、防寒着なしの姿は寒そうで、申し訳なかった。
「こっちです、すみません……」
僕が指をさすと、お姉さんが先導して洋館の脇から庭へと抜ける。門をくぐったのが初めてなら、庭に来たのも初めてだ。外から見るよりも広い。石畳を敷いた散策路がある、豪奢な庭だ。つくりこそ洋風だけど、植わっている木々は日本のものが多い、というか、日本の木ぐらいしか、僕にはわからない。ぽつりぽつりと赤く色づいているのは梅だろうか。比叡山を借景にした庭は、日中ならなおきれいだろう。
「投げられたバッグって、どんなバッグ?」
「スクールバッグです。ごくふつうの」
「……それは、なかなかだね」
「なかなか?」
聞き返すと、お姉さんは「うちの塀、結構高いから、なかなかの筋力があるよね。パティシエ向きだと思って」と言った。
「パティシエに筋力がいるんですか?」
お姉さんは小柄で細いから、筋肉とは無縁そうだ。
「基本、立ちっぱなしだから体力仕事」
お姉さんがそう言って、上腕二頭筋に力をこめる。とはいえ、シャツが分厚いので、よくわからない。
「へえ……」
「信じてない?」
「信じます。あ……!」
椿の花の植え込みに、僕のスクールバッグを見つけた。うわ、と思ってスクールバッグを持ち上げると、ノートや教科書が中からこぼれおちた。……最悪だ。ファスナーがちゃんとしまってなかったらしい。慌てて拾えば、お姉さんも拾ってくれた。
「すみません」
「いいよ」
「こっちより、椿を見てもらっていいですか?」
ぱっと見、枝は折れていないようだったが、本来の形を知っている人からすれば、どこか傷つけたかもしれない。
お姉さんに椿を見てもらっている間、僕は膝をついて周辺をさがす。
ふと、何かが視界の端を横切った。猫か? と思いつつ、スルーしてペンケースを拾っていると、黒い塊はその場に居座っている。顔を上げると狸でぎょっとした。リアル狸は、闇になじむように真っ黒く、冬毛でもふもふしている。
「わっ!」
悲鳴を上げた僕に狸もびっくりしたらしく、逃げていった。
「どうしたの?」
お姉さんが驚いたように聞いてきた。
「今、狸が」
「狸?」
「見ませんでした?」
まだ心臓がドキドキする。野生の狸を見かける機会なんてそうそうない。
「その狸って、もふもふで、これぐらいの大きさじゃなかった?」
お姉さんが手でサイズ感をあらわす。子猫と成猫の中間ぐらいの大きさ。
「そうです、それぐらい」
「あー、じゃあ分かった……そっか、狸か」
ひとり納得したみたいに、お姉さんはコクコクうなずいた。なんだろう? 前々から庭に動物が出入りしていると知ってはいたけど、それが狸とは知らなかった、みたいなこと?
僕がぽかんとすると、お姉さんがはっとして、
「椿は素人目には大丈夫そう。でも専属の庭師さんが見たら、何か言うかもしれない」
「何かって、弁償ですか?」
「どうだろう……。バッグの中身は全部そろった?」
「たぶん」
雑に入れた中身を改めて確認する。ノート、教科書、クリアファイル、ペンケース、スマホ。財布はズボンのポケットにある。一応ペンケースの中身も見たほうが……って、あ。
「お守りがない」
「え、お守りが?」
お姉さんがすぐにしゃがみこんで捜してくれる。僕も捜したが、居心地悪さがどんどん胸にこみ上げた。客でもないのに、閉館後に迷惑をかけている。
もういいですと僕が言おうとしたのとほぼ同時に、「明日でもいい?」とお姉さんが聞いてきた。
「日中に捜しておくから。きっと見つかるよ」
お姉さんが明るく笑ってはげましてくれた。なんか、……泣きそうだ。
スクールバッグを投げられたときより、お守りをなくしたと気づいたときより、初めて会う人に優しくされたことのほうが、泣きたくなる。
洋館に戻って名前と連絡先を書いた。椿の確認も、明日庭師にしてもらえるそうだ。
「鈴本佑くんね。私は和泉すずめ」
パティシエのお姉さんはそう自己紹介してくれ、「元気出して」と個包装したブラウニーをくれた。お地蔵様にお供えしてあったものと同じブラウニーだ。家に帰ってからも食べるのがなんだかもったいなくて、勉強机にかざった。
翌朝、高校に登校すると、最近放置していたスマホが久しぶりに気になった。和泉さんから、留守電入ってないかな。昼休みも教室でスマホをいじっていたら、横から取り上げられた。
「何? 鈴本って友達、まだおったん?」
小ばかにしたように聞かれ、「いない」と言い返した。ずっと無反応を貫いていた僕が初めて言い返したので、小出は驚いた顔で僕を見返した。
「昨日、お前がバッグを投げた先に椿があったんだよ。その弁償金がいくらになるか、見積の電話があるかもしれないんだ」
「……弁償ってまたまた」
「嘘だと思うなら、スマホを返さなくていいよ。僕が電話に出ないせいで家に押しかけられたら、そんときはお前がやったって言う」
「きもっ。冗談も通じへんのか」
と小出が言い捨て、僕のスマホを机に置いた。冗談に他人を巻き込むなよ、と思ったけれど、逆ギレされたくなくてやめた。
それにしても、昨日といい今日といい、いつもよりあたりきついな。期末試験前で部活ができないから、いらだっているんだろうか。
スマホはスクールバッグにしまって、机にうつぶせになる。寝たふりをしようとして、本当に少し眠った。
放課後になってスマホを見ると、留守電が一件あった。市外局番から始まる番号だ。
「榊田ギャラリーのカフェスタッフ、和泉です。椿の件、大丈夫みたいです。それとお守りも見つかりました。都合がいいとき、また寄ってください」
昨日よりも丁寧な言葉遣いだ。そばに上司でもいた? なんにしろ、弁償しなくてすんで、お守りが見つかったのは、うれしい。
鹿ヶ谷ギャラリーに出向くと、受付の堀田さんが懐かしい顔でも見たように目を細めた。
「どうぞ、カフェのほうへ」
「カフェですか?」
戸惑いつつ、玄関でスリッパに履き替える。アンティークの調度品や絵画が並ぶ廊下を歩いた突き当りが、カフェのあるダイニングルーム。
なんとなく、和泉さんが待っているのかと思ったら、誰もいない。ガラス越しに庭にいる作業着姿の男が見えた。彼が庭師だろうか。ガラス戸を開け、声をかけてみる。
「すみません」
振り返った男は、ネックウォーマーで鼻先まで隠している。暗闇でも輝く瞳は金色だ。目元しか見えないが、おそらくイケメンの部類だと思う。しかもそのイケメンのベルト通しから、見覚えのあるお守りをぶら下げていた。
「それ、それです! 僕が落としたやつ」
スリッパなので外に出られないのに、男はゆっくりとした足取りでやってくるから、じれったい。
「ありがとうございます!」
僕が手を伸ばすと、ようやく目の前にきた男が、犬がお手をするときみたいに手を置いた。は? と思う間にその手が遠のく。僕の手のひらに七分咲きぐらいの椿の花があった。
男はネックウォーマーを顎まで下げた。予想より若い。二十四、五歳ぐらいだろうか。中性的に整った目鼻立ち。いくらか予想はしていたけれど、予想の何倍も顔がいい。男にこういうのも不思議な感覚だが、美人だ。歌舞伎の女形のような、そそとした美しさ。無表情な分、つくりものめいた印象がある彼の目が、僕を射抜く。
「きみが犯人?」
そう問われ、はっとした。この椿は、僕のスクールバッグの衝撃で落ちたのか?
「かもしれないですけど……、でも椿の件は大丈夫って」
いや、和泉さんが電話をくれた時点では大丈夫だったけど、のちにダメだと気づいたのか? それとも、僕が逃げないよう、一度安心させておびき寄せた?
「すずめさん」
と、男が室内をのぞき込んで呼んだ。すると「はいはーい」と返事をした和泉さんが何やら運んでくる。カセットコンロの上に鍋とボールを積み上げていた。前が見えている状態ではなさそうで、僕が手を出そうとすると、「触らないで。バランスが崩れる」と怒られた。
「お待たせしました、皆川さん」
無事、窓際のテーブルに置いた和泉さんが、男に向かってそう言った。皆川さんは、「ありがとうございます」とこたえた。
追加で持ってくるものがあるらしい和泉さんを僕は追いかける。
「椿の件、大丈夫って言ってましたよね?」
小声で聞くと、和泉さんは大きくうなずいた。
「大丈夫。皆川さんの作る料理、おいしいから」
なんの説明にもなってない。ってか、料理ってもしかして、……これを食べるの? 僕は渡された椿を見た。なんで? 花の命を無駄にするなってこと?
呆然としている間に和泉さんが「はいこれ」と、取り皿と割りばしを渡してきた。あ、本当に食べるんだ?
和泉さんは菜箸と油きりバットを持っている。……まさか、揚げ物で?
皆川さんは、カセットコンロで油の入った鍋を熱している。外から吹く風が、火を揺らすと、風をふせぐように皆川さんが立ち位置をかえた。室内に入ればいいのにと思うのだが、作業着では入りにくいのだろう。マダムが優雅なアフターヌーンティーをしてそうな部屋だし。
皆川さんは僕の手から椿の花をつまみ、
「一般的に、椿はガクを木に残して落ちるんです。でもこれはついたまま。この意味が分かります?」
ガクとは、花と茎の付け根にある、イチゴでいうヘタの部分だそうだ。
「……自然に落ちた花じゃない?」
「その通り」
正答してもうれしくない。
和泉さんが確認した時点で「大丈夫」と思ったのは、椿の花は落ちるものだから、とくに違和感を抱かなかったが、皆川さんは落ちた花にこそ違和感を抱いた。
っていうか、顔のいい年上から敬語を使われるの、怖いな……。声も荒らげていない、淡々とした口調なのに、怒っているのがヒシヒシと伝わってくる。
皆川さんは水の入ったボールで花を軽く洗うと、クッキングペーパーで水気をきって、天ぷらの衣につけた。て、天ぷらだー。椿の天ぷらを僕は食べさせられるんだ。
「それって」
おいしいんですか、と聞きたかったが、やめた。皆川さんの心象をこれ以上悪くしたくない。罰ゲームだと思って食べるよう。
椿の天ぷらだろうと予想していても、それでもいざ衣をまとった椿が熱した油に投入された瞬間、うわ、椿の天ぷらだと愕然とした。
和泉さんはといえば、興味津々で見つめている。助けてくれる気はなさそうだ。
ほどなく、油きりバッドに天ぷらが置かれた。
「どうぞ」
と、皆川さんが言う。
ど、どうぞって。はあ、へえ。やっぱり食べるんだ? 僕が。
二人の視線を受け、僕は椿の天ぷらに箸を伸ばす。天ぷらの衣の下から、紫がかった花びらが透けていた。おそるおそる口に運び、そしゃくする。
「……」
びっくりした。揚げたての衣はパリッとした歯触りで、肉厚の花びらから、花の香りが口いっぱいに広がった。飲み込んだ後も、贅沢な香りの余韻が続く。ほんのりした甘味と、山菜のようなほどよい苦味。おいしいとかまずいとかじゃなく、美しいと思った食べ物は初めてだった。
「……すっごいです」
感動がうまく言葉にならない。でも皆川さんは優しくほほ笑んだ。目を細め、笑った顔は、キラキラと漫画の効果音でも聞こえそうにまぶしい。
「皆川さん、私も食べたいです!」
和泉さんが挙手をする。皆川さんの顔から笑みがすっと消え、
「ダメ。花が自然に落ちるまで待ってください」
「ですよねー。そうだと思いました」
言ってみただけです、と和泉さんはしゅんとする。
和泉さんを名前で呼ぶから、ふたりは付き合っているのかと思ったら、お互いに敬語だし、甘い雰囲気はない。花料理の師弟関係なのか?
「ごちそうさまでした。……すみません、そのお守り、返してもらえますか?」
僕が言うと、「これがきみのものだという証拠は?」と皆川さんが問われた。落とし物における身分確認は当たり前だ。でも京都御所の西にある護王神社の健脚お守りだから、僕の名前なんかもちろん書いていない。
「……大吉のおみくじが三枚入っていたら、僕のです」
「おみくじ?」
と、聞いたのは和泉さんだ。
「僕、陸上部で、四百メートルリレーの選手だったんです。チームメンバーにこのお守りをもらいました」
「陸上部なんだ。どうりで、すらっとしている」
和泉さんが言い、僕はあいまいにうなずく。幽霊部員だけど、陸上部にはまだ在籍している。
「ふつう、大会前にもらうもんでしょうけど、もらったのは大会後です。バトンミスした僕を励ますために。おみくじは『俺らの運も込めた』って意味で、入れてくれたそうです」
三年の先輩二人と、二年二人のチームだった。
引退試合を台無しにした僕を、先輩たちは責めなかった。
僕が周りから孤立したのは、大会での失敗ではなく、大会での失敗を取り戻そうとしないせいだ。先輩から思いを託されたのに、その期待にこたえようとしないからだ。
チームメンバーでもある小出には、「部活に来いよ」と夏以降、毎日誘われた。でも行けなかった。あの日から、左手にうまく力が入らない。スクールバッグやスマホを簡単に横取りされてしまうぐらいには。
野球では、ボールが手から離れなかったり、思い通りに動かなかったりすることを「イップス」というらしい。名前がつくぐらいありふれたことならば、克服できるんじゃないかと思った。
でも、がんばりたくなかった。
だって、これ以上ないぐらいがんばった上で、僕はバトンミスをした。努力が報われるとはかぎらない。……そして他人の努力まで、僕が台無しにした。
「一枚しか入ってない」
遠慮なくお守りの中身を見た皆川さんが言う。
「え、一枚?」
びっくりして僕も覗き見る。ばちあたりなことをしていると思ったが、ほんとにおみくじは一枚だけだ。
「どっかにまだ落ちてるのかも」
僕が靴を履き替えに玄関に向かおうとすると、「靴、こっちにもあるよ」と和泉さんが下駄箱のつっかけを指さす。庭の散策用らしい。下駄が石畳で鳴るのは風流……って、場合じゃない。
カランカラン足音を鳴らしながら、和泉さんが言った。
「バッグを投げ入れたのは、もしかして部活仲間?」
「……そうですけど」
「周りに相談できる人、いる?」
何を言いたいのか察して、僕は笑った。
「いじめじゃないです。じゃれただけ。悪ノリがすぎちゃっただけです。掃除当番みたいなもので、たまたまいじられる番になっただけです」
「当番だっていうなら、友達に同じことをできる?」
僕が口ごもると、和泉さんは真剣な顔で続ける。
「他人にしたくないような嫌なことは、されなくたっていいんだよ」
ふつう、逆じゃないか。自分がされて嫌なことを他人にしない。
「庭にボールが飛び込んでくることは、あるよ。野球ボールもサッカーボールも。でもバッグなんて、しかも重いスクールバッグをわざわざ投げるなんて、悪意しかない」
和泉さんは自分事のように怒る。たぶん、昨日の時点から、僕が置かれている境遇を察していたのだ。
他人にしたくないような嫌なことは、されなくたっていい。
彼女の言葉が心にじんわりと入ってくる。
がんばれと言ってくれた先輩や小出に背中を向けた僕は、そういうこと、望んじゃいけないと思っていた。
椿の場所につくと、そこには先客がいた。昨日の狸が椿の花をもしゃしゃ食べている。
「……、椿が落ちたの、僕のせいだけとは言い切れないんじゃ?」
僕が狸を指さすと、皆川さんは「そうですね」とうなずく。
「そうですねって」
「きみのせいとは言い切れないけれど、きみに責任がまったくないとも言い切れないと思いますが」
まあ、うん。それはそうなんだけど。
狸は人なれしているようで、近寄ってきて皆川さんのつまさきをかぐ。皆川さんは動物園の飼育員みたいに動じない。
「こいつ、花を食べるぐらいなら、紙も食べますか?」
まさかおみくじをこいつに食べられたのかと思って皆川さんに聞くと、皆川さんは首をかしげた。
「きみは花を食べましたが、紙も食べます?」
「……食べないです」
「今、そこにいるんですか?」
と、聞いたのは和泉さんだ。
そこにいる、とは?
「いますよ。椿の花を食べていました」
皆川さんがそう答えると、和泉さんは椿のそばまで行った。
「見えない……、本当にいます?」
くやしそうに顔をしかめるから、訳が分からない。
「和泉さんって、何を捜しているんですか?」
皆川さんに聞いたら、「こいつです」と足元の狸をゆびさした。……どういうこと?
皆川さんは両手でひょいと狸を持ちあげる。狸は宙で足をばたつかせた。
「何が見えます?」
「狸です」
「ふつうは見えないんです」
見えないって、何?
「だって、いるじゃないですか」
皆川さんは赤ん坊でも抱くみたいに狸を胸に抱きなおした。
「いますね。でも見えないんです」
「哲学ですか? なぞなぞ?」
もう意味がわからん。
「一般的な動物ではないんです。鬼、化物、妖怪、物の怪、あやかし。呼び名はなんでもいいですが、そういうものが集まる庭なんです、ここは」
つらつらと聞きなれない単語が並べられる。鬼って、……この、イケメンにだっこされてあやされる狸があ?
「鬼なら、角があるでしょ?」
「海外の幽霊に足があって、日本の幽霊に足がないのは、幽霊画の影響です。鬼に角があると考えるのは、鬼を描いたイラストを見たからです」
そうは言われても、目の前のもふもふ狸と鬼がイコールにはならない。
「イメージと実際が解離することは多いと思いますけれどね。たとえば、学園ラブコメ漫画の学校生活ときみの学校生活は同じですか?」
「ぜんぜん違います」
すごくわかりやすい! さえない高校生がかわいい女の子に好かれまくる漫画は多いが、僕にそんなことは起きない。
皆川さんはさもありなんとうなずいて、
「見える人間には条件があります。まず未成年。次に今いる場所を離れ、どこかへ行きたいという願望を持っていること」
「あ、でも生まれながらの素質もあるそうです。皆川さんは代々その家系で、そういう地脈スポットに出入りする庭師なんですって」
和泉さんがそうつけたした。
京都というまちは、いたるところにお地蔵様がいて、神社仏閣も多く、生活と信仰の距離が近いとはいえ、すんなりと受け入れられない。
妖怪スポットの庭師の家系ってつまり、陰陽師みたいなこと?
皆川さんは狸を僕に渡そうとする。でも狸は嫌がって逃げて行った。しかもふわっと空気中にとけていなくなる。……聞かされた話も、今見た光景も、どう解釈していかわからない。
ただ間違いなく言えるのは、美術館の悪評に繋がるような嘘を、地元の人間相手につくわけがないってこと。横のつながりが強固な京都で、そんな振る舞いは命取りだ。新しい店ができては、土地のしきたりになじめず、つぶれていく。
戸惑う僕に皆川さんは続ける。
「狸には他を抜くという意味があります。店頭に狸の置物が飾られるのは、商売繁盛の縁起物だからです。きみに狸が見えたのは走りたい気持ちが強いからこそでしょうね」
「……」
他人に負けたくない。走りたい。
そんなこと、僕が望んでいいのだろうか?
とっさに言葉にならず、僕は視線を下げる。皆川さんの腰には、先輩たちから贈られたお守りがある。
「お守り、返してもらっていいですか?」
「なぜですか?」
きょとんとした顔で言われたから、こっちこそびっくりした。
「めっちゃいい感じの流れでしたよね? 陸上部に戻って、がんばれみたいな」
「戻るってなんです?」
聞き返されて、やっと気づいた。和泉さんはそういう言いづらい部分を敏感に察知したが、皆川さんは全然、察していない。和泉さんがすまなさそうにフォローした。
「ごめんね、そっち系の知識が豊富なぶん、ほかのことには鈍いの」
せめて、お守りを所持している写真でも持ってきてほしいと言われ、帰るしかなかった。自宅に向かって歩きながら考える。お守りの写真って、ないなあ。自撮りする習慣がない。
……となると、頼れるのは、やはり購入者か?
先輩たちか、小出か。いっそ取り返さなくてもいいんじゃないか、という気持ちも正直あった。何言われるかわかんないし。これ以上こじれたくもなかったし。
それでもスマホを取りだし、僕は小出に電話をかける。
鬼を見る力があるなら、どうか、その力でつながってくれ。
無視される可能性も考えていたけど、意外にも小出は電話に出て言った。
「……いくら?」
「へ?」
「だから、弁償金?」
ああ、そういう話、たしかにした。払う気はあるのか。律儀だな。
「いやそれは大丈夫だった。花を食べさせられたけど」
「は?」
「意味わかんないよね。僕もよくわかんない。……去年もらったお守りの中におみくじが一枚しか入ってなかったんだけど、本当に三枚入れた?」
怒るかな、と思いつつ聞くと、「……見た?」と笑った。鼻にかかった声が懐かしい。
「うん」
「一枚しか入れなかった」
「なんで?」
三枚から一枚になったんじゃなくて、はじめから一枚だった?
お守りをもらってから半年以上、三枚あると思い込んでいたからびっくりして聞き返す。
「大吉が出るまでひこう、ってノリになったんやけど、いざひけたら、先輩たち受験やから、俺の運だけでいいや、どうせ中身なんか見ないからって一枚だけ」
どうせ中身なんか見ない、か。たしかにそうだ。
「わざわざ文句言いに電話してきたんか?」
「ちがっ……」
「俺の運を持ってったくせに、部活来ないとか、ありえへん。……こっちだけ必死みたいで、あほらしい」
僕の反論を待たず、小出が言った。文句なんて言わせないぞ、と宣誓するようだった。
スクールバッグもそうだが、最近の小出は、小出らしくなかった。
実力行使に出るなんて、他人に迷惑をかけるような行動をとるなんて、大会に出たい人間がすることじゃない。やるならばれないように、もっとうまくやってほしい。
僕はせめて、小出に勝ってほしかった。
だが小出はきっと、僕と勝ちたかったのだ。
そんな思いを僕はずっと裏切っていた。
「……ごめん」
謝るのはなんか違うと思って、ずっと言えなかった。
バトンミスしてごめん。声かけてくれたのに何もできなくてごめん。お守りをなくしてごめん。取り返せなくてごめん。
いろんなごめんを一言に込めた。そしたら小出は「おせえよ」と言った。
ほんとに、そうだ。その通りだ。
観念して左手のことを打ち明ける。すると小出は、
「バトンを握れないなら、個人種目やれば?」
「短距離で伸び悩んだものあって、リレー始めたのに?」
知ってるだろ? と僕が言い返すと、「負けてこい」と小出が言った。
「仲間の期待にこたえられないようなやつ、一年にこっぴどく負けろ」
ひどい言い草だ。でも、今の僕にぴったりのアドバイスだと思う。
「……試験明けに行く」
「わかった」
「絶対だな」
と、小出はくぎを刺す。「絶対だ」と返して電話を切る。
お守りについて相談しそびれた、と気づいたのは、切ったあとだ。まあでも、急がなくてもいい気がする。和泉さんはもちろん、皆川さんもお守りを捨てる人じゃないだろう。庭にお地蔵様の祠があるし、陰陽師だというし、それに椿の花の命をいかす料理を作る人だ。きっと、ちゃんと保管してくれる。
僕はスマホをスクールバッグに入れ、ファスナーをしっかりしめてから、リュックを背負うみたいにスクールバッグを背負う。
ぐっと踏み出した足は重い。駆け出しても、以前のように体は動かない。それでもいい。いや、よくはないけど、練習していないんだから仕方ない。
ふっと吐いた息に、甘美な椿の花の味がよみがえる。これから椿を見るたび、風流と思うより先においしそうと思っちゃいそうで、笑いがこみ上げた。
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