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第4章 ルーベルト王国王都
第二十三話 王都へと……
しおりを挟む「【空間を彩る時空の数々よ。ルーベルト王国王城《転移の間》に我等を運べ。許しある者、賢者の名のもとに。……空間転移!】」
賢者が転移魔法陣を構築していく。呪文とともに魔法陣が青白く光り始めた。
結菜は後ろを振り向き、クランのメンバー達を見た。
「短い間でしたがありがとうございました。お世話になりました」
ペコリと頭を下げる。その少し寂しそうな姿を見てアルは結菜を慰めた。
「そんな顔をするな。今生の別れとかじゃねぇんだから、な?それにここはもうお前の家だ。帰って来たかったらいつでも帰ってこい」
「えぇ、そうです。私達はユーナが大好きなんですから」
「そうそう‼またすぐに会えるって‼」
「帰って来たらまた美味しい飯でも作ってくれよな‼」
「いつでも帰って来いよ‼」
口々に皆が言う。結菜は何だか嬉しくてちょっと笑ってしまった。
「うん、ありがとう皆。また来るから」
「魔法陣の構築が終わりました。ユーナさん忘れ物はないですね?」
賢者が最後の確認をしてくれたみたいだ。もちろんのことながら自分にはアイテムボックスがあるので忘れ物どころか荷物さえない。あるとしても、せいぜい申し分程度であった。
頷くと賢者が最後の呪文を唱える。結菜はロンを抱えると、勇者達が魔法陣の中に入るのについていった。
―キィィィィィィィィィィィ―
青白い光りが結菜達を包み込む。だんだん視界が歪んでいくのに結菜は気がついた。
「あっ……」
勇者がおもむろに口を開いた。何か伝えたいことがあるらしい。
「転移をする時、たまに酔う人がいる。気をつけろ」
えっ、もしかして心配してくれた?と結菜はびっくりした。勝手に誘拐した人が言うこととは思えなかったのだ。……相変わらずの無表情だけど‼
「酔うってどれくらいですか?」
少し引っかかって恐る恐る質問をした。何か猛烈に嫌な予感がする。
「そうですね……個人差はありますが、だいたい船酔いみたいな感じでしょうか。嵐の時の」
付け足されるように言われた言葉に、結菜の血の気がさぁぁと引く。
(転移する前に先に言ってよぉぉぉぉ……‼)
もう半泣きである。今日はことごとく嫌な予感が当たる日だと結菜はがっくりと肩を落としたのであった。
呪文の最後の言葉を賢者が言い終わった瞬間、歪んでいた視界がザァァァァァと音を立てて崩壊していった。ひぃぃ……‼思わずロンをぎゅうっと抱きしめる。
(なっ、何これ⁉何がどうなってるの⁉)
『ぁ、主‼苦しい……‼』
「えっ、あっごめん‼」
そのうち、崩れ去っていた景色がザァァと音を立てて元に戻っていった。パズルみたいに構築されていく。
気がついたら何処かの部屋にいました。はい。もちろん酔いましたよ‼移動した瞬間に強烈な酔いが襲ってきたので‼今も吐き気を堪えてるしね‼
落ち着いて周りの状況を確認すると、そこはとんでもない空間だった。
「……天井高っっか‼」
室内なのに広くて天井が高い。あり得ないとしか言いようがない。
(何ですか⁉驚きで私を窒息させる気ですか⁉)
本日四度目のお口ぱっかーんである。これぞ、乙女にあるまじき……えっ?もうそれはいいって?はい、失礼致しました。
結菜はその部屋に何人も人がいるのも忘れて、ただひたすら驚くことしかできなかった。
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