異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!

コスモクイーンハート

文字の大きさ
上 下
20 / 75
第3章 ダンジョン脱出から約二週間、早朝に誘拐されました‼

第十八話 お仲間さん登場

しおりを挟む

(……うん。ロンは助けを求めに行ってくれたんだよね。きっとそうにちがいない‼)
 結菜はロンを信じることにした。
 結菜が納得するためぶつぶつ呟きながら自己暗示している間にどうやら誘拐犯はどこかに到着したようである。何度も定期的な胃に食い込むような痛みが止まったのだ。まだ痛いけど‼てかまだ担がれてるけど‼
 誘拐犯は扉を開けると屋内に入った。食べ物のいい匂いがする。どうやら、ここは何処かの食事処らしい。
(屋内に入っちゃったよ‼マジでヤバイじゃん‼……あっ誰かいる。お願い気づいて‼そんで助けて‼)
 だが、誰も気づいてくれない。
(そうだよね……。この誘拐犯いっちょ前に気配消してるんだもん)
 結菜はため息をつきながら、肩を落とした。しかし、しょんぼりしているが今まさに逃げなくてはいけない時なのではなかろうかと思いなおす。
 逃げようと思いっきり犯人を叩こうとするが、手がカタカタ震えてできないことに結菜は気づいた。
(止まって‼震え止まってよ‼今逃げないと本当に私は…………‼)
 焦りと恐怖でうまく行かない。結菜はそこで初めてロンがにいた事の有り難さを実感した。今更であるが……。
 心臓がドクドクと嫌な音を立てている。口の中がカラカラに乾き、うまく呼吸ができない。結菜は今まで生まれてから一度も日本でもこんな事にあったことなどなかった。恐怖をうまく飲み込むことができない。
 誘拐犯はしばらくすると食事処の奥の方の席に向かって行った。どうやら誰か他にもいるらしい。結菜の恐怖が一段階上がる。
「おい、連れてきた」
「あぁ、おかえりなさい。遅かったですね。いったい今まで何処に…………………えっ?」
 誘拐犯はひょいと担いでいた結菜を持ち上げると、椅子に座らせた。ちょうどお仲間さんの向かい側に……。
 誘拐犯のお仲間さんが自分を見てぽかんとしている。もしかして知らないの?と結菜は真っ白な頭の片隅で思った。無くならない恐怖と焦りでブワリとあわだっている肌を擦る。

「帰りが遅いと思ったら、いったい何しているんですか⁉君は‼」
(もっと言ってぇぇぇーーーーーー‼)

 意外とまともな事を言ったお仲間さんに結菜は心の中で泣き叫んだ。
「だから連れてきた」
「いや、そうだとしてもあの担ぎ方はないでしょう⁉彼女を見てください‼こんなに恐がって震えているじゃないですか‼」
 違ーーーーーーう‼何か違ーーーーーーう‼結菜はそのツッコミ所満載の発言に鋭いツッコミを入れた。まずは見知らぬ人間を許可なく…………いや、許可があったとしてもだめなのだが、いきなり誘拐したことについて言ってほしいと結菜は思ったのであった。
「すいません、うちの連れが盛大にご迷惑をかけて……。その、大丈夫ですか?」
「…………は、い。大丈夫です、一応」
「……そうですか。本当にすいませんでした。ほら君も‼」
 お仲間さんは誘拐犯の頭をガッと掴んで頭を下げさせた。
(…………悪い人じゃない、のかな……?誘拐されたけど……)
 その姿を見てだんだん心が落ち着いてくる。まぁ、警戒を解いたわけではないのだが……。
 しかしながら、思考が戻ってくると早く帰らなきゃという思いが次第に大きくなってゆく。お仲間さんが誘拐犯にひたすら頭を下げさせたり、お説教したりしているのだが当然のことながら全然頭に入ってこない。
(しまった‼こんな事なら朝ご飯のおかずちゃんと盛り付けてきたらよかった‼)
 結菜は呑気にそんなことを考えていた。本当に切り替えが早いことである。


しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。

武雅
ファンタジー
この世界では8歳になると教会で女神からギフトを授かる。 人口約1000人程の田舎の村、そこでそこそこ裕福な家の3男として生まれたファインは8歳の誕生に教会でギフトを授かるも、授かったギフトは【器用貧乏】 前例の無いギフトに困惑する司祭や両親は貧乏と言う言葉が入っていることから、将来貧乏になったり、周りも貧乏にすると思い込み成人とみなされる15歳になったら家を、村を出て行くようファインに伝える。 そんな時、前世では本間勝彦と名乗り、上司と飲み入った帰り、駅の階段で足を滑らし転げ落ちて死亡した記憶がよみがえる。 そして15歳まであと7年、異世界で生きていくために冒険者となると決め、修行を続けやがて冒険者になる為村を出る。 様々な人と出会い、冒険し、転生した世界を器用貧乏なのに器用貧乏にならない様生きていく。 村を出て冒険者となったその先は…。 ※しばらくの間(2021年6月末頃まで)毎日投稿いたします。 よろしくお願いいたします。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

処理中です...