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第2章 ダンジョン崩壊の後
第十三話 ダンジョン崩壊後の騒ぎ〜アデレードの憂鬱①〜
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ルーベルト王国王城のある一室にて、一人の男が大きなため息をついていた。
部屋には大金が使用されているのがひと目でわかるほど、上質な代物がふんだんに置かれている。
そこは王の執務室であった。
大理石でできた床がシャンデリアの放つ柔らかい光をうつす。
ふかふかだが、程よい硬さをもつソファー。細かい細工が施された木製の本棚や机。
どれも黄金が施されていないにもかかわらず、素人が見ても上質なものだとはっきりわかる。
その部屋のソファーに身を深くして座っている男の名はアデレード·クルス·ルーベルト、ルーベルト王国現国王である。彼の顔には疲労が伺えた。
実は先日、というかつい一週間前、王国のとある高難度ダンジョンが一つ崩壊したのだ。
その事後処理がやっと今日終わったのである。
「国王陛下‼ただいま情報が入りました‼」
「む、よい。申せ」
眉間にしわをよせて頭を抱えている国王のもとに、一人の文官が駆け寄ってくる。
「報告します‼現在ダンジョンの崩壊は収まっている模様。これ以上崩落することもないようです。原因は数名の冒険者がダンジョンマスターを討伐したことによるものだと推測されます」
「そうか。報告ご苦労であった。下がってよいぞ」
「はっ‼」
文官の姿が消え、誰もいなくなったのを確認すると、アデレードは誰もいないはずの空間にふと声をかけた。
「ふむ。それは本当なのか?」
『はい。彼の報告はほとんどあっておりますな』
アデレードの背後の影が盛り上がり、問いに答える。
それは闇夜を写し込んだかのように闇をまとい、実体があるのかないのかわからないほど輪郭がゆらゆらと揺らめいている。
それは王直属の暗部の者、いわゆる影と呼ばれる者であった。
主に人には言えないような裏仕事も引き受ける王家専属の密偵のことである。
彼らは、魔術師同様に珍しく魔法が使える者達が集まっている。使うのは闇属性の魔法がほとんどである。
よって、常に自身を闇に紛れ込ませるために、彼らはいつも闇を纏う。
そのためか、彼らの輪郭はぼやけ、揺らめく暗闇と化しているのであった。
アデレードは影の方に振り返った。
「ほとんど?どういうことだ」
『詳細を報告いたしましょう』
そう言って影はアデレードに事の経緯を細かく説明した。
ダンジョンが崩壊したその詳細を。
当時、誰がダンジョンに入っていたか。
ダンジョンを崩壊させるに至った経緯。
そして、崩壊した後どうなったか。
報告書などにさえ載っていないような所までこと細かく報告してくれる。
アデレードは彼の報告を重い空気をまといながら聞いていた。
やがて、呆れたように息をつくアデレード。
「なるほど、そういうことだったのか……。……まったくアルのやつ、何をしてくれるんだか」
『それと、もう一つご報告がございます』
「何だ?」
まだあるのか?と目で問う。
影はゆっくりと口を開いた。………どこか言いたくなさげなのは気のせいであろうか?
どうやらまだ報告はあるようである。
『我が一族の者の力を使い、崩落を起こした原因と思われる者を突き止めました』
「何⁉アル達ではないのか⁉」
予想を裏切られ、驚愕するアデレード。
てっきり手加減を知らない破天荒な自分の親友であるアルと彼のもつクランの者達が起こしたものだと思っていたアデレードは驚いて声をあげた。
影は頷くように揺らめいた。
『王の御友人たる彼の者達もその件に関係しております。しかしながら、彼の者達やダンジョンマスターからではない魔力を感知いたしました次第でございます』
「その者があのダンジョンを崩壊させたのか?」
『いえ、そういうわけではないのです。その者がダンジョンマスターと従魔契約を結んだ際、ダンジョンマスターがさらに崩壊を進めるような行動をしたようでございます』
「……………………」
アデレードは言葉を発することができなかった。
そもそも、アデレードはダンジョンマスターを使役したという話は今まで聞いた試しがなかったのだ。
ダンジョンのモンスターは野にいるモンスターとは違い従魔にしにくい。その上、野にいるモンスターとは比べ物にならないほど強く凶暴なのだ。
ましてやダンジョンマスターともなれば別格になる。そもそも保有している魔力総量が桁違いなのだ。
従魔契約をした途端、魔力が枯渇し死に至ることもあるであろう。
(それを従魔にしただと…………⁉)
アデレードは冷たい汗を自分がかいているのを感じた。
部屋には大金が使用されているのがひと目でわかるほど、上質な代物がふんだんに置かれている。
そこは王の執務室であった。
大理石でできた床がシャンデリアの放つ柔らかい光をうつす。
ふかふかだが、程よい硬さをもつソファー。細かい細工が施された木製の本棚や机。
どれも黄金が施されていないにもかかわらず、素人が見ても上質なものだとはっきりわかる。
その部屋のソファーに身を深くして座っている男の名はアデレード·クルス·ルーベルト、ルーベルト王国現国王である。彼の顔には疲労が伺えた。
実は先日、というかつい一週間前、王国のとある高難度ダンジョンが一つ崩壊したのだ。
その事後処理がやっと今日終わったのである。
「国王陛下‼ただいま情報が入りました‼」
「む、よい。申せ」
眉間にしわをよせて頭を抱えている国王のもとに、一人の文官が駆け寄ってくる。
「報告します‼現在ダンジョンの崩壊は収まっている模様。これ以上崩落することもないようです。原因は数名の冒険者がダンジョンマスターを討伐したことによるものだと推測されます」
「そうか。報告ご苦労であった。下がってよいぞ」
「はっ‼」
文官の姿が消え、誰もいなくなったのを確認すると、アデレードは誰もいないはずの空間にふと声をかけた。
「ふむ。それは本当なのか?」
『はい。彼の報告はほとんどあっておりますな』
アデレードの背後の影が盛り上がり、問いに答える。
それは闇夜を写し込んだかのように闇をまとい、実体があるのかないのかわからないほど輪郭がゆらゆらと揺らめいている。
それは王直属の暗部の者、いわゆる影と呼ばれる者であった。
主に人には言えないような裏仕事も引き受ける王家専属の密偵のことである。
彼らは、魔術師同様に珍しく魔法が使える者達が集まっている。使うのは闇属性の魔法がほとんどである。
よって、常に自身を闇に紛れ込ませるために、彼らはいつも闇を纏う。
そのためか、彼らの輪郭はぼやけ、揺らめく暗闇と化しているのであった。
アデレードは影の方に振り返った。
「ほとんど?どういうことだ」
『詳細を報告いたしましょう』
そう言って影はアデレードに事の経緯を細かく説明した。
ダンジョンが崩壊したその詳細を。
当時、誰がダンジョンに入っていたか。
ダンジョンを崩壊させるに至った経緯。
そして、崩壊した後どうなったか。
報告書などにさえ載っていないような所までこと細かく報告してくれる。
アデレードは彼の報告を重い空気をまといながら聞いていた。
やがて、呆れたように息をつくアデレード。
「なるほど、そういうことだったのか……。……まったくアルのやつ、何をしてくれるんだか」
『それと、もう一つご報告がございます』
「何だ?」
まだあるのか?と目で問う。
影はゆっくりと口を開いた。………どこか言いたくなさげなのは気のせいであろうか?
どうやらまだ報告はあるようである。
『我が一族の者の力を使い、崩落を起こした原因と思われる者を突き止めました』
「何⁉アル達ではないのか⁉」
予想を裏切られ、驚愕するアデレード。
てっきり手加減を知らない破天荒な自分の親友であるアルと彼のもつクランの者達が起こしたものだと思っていたアデレードは驚いて声をあげた。
影は頷くように揺らめいた。
『王の御友人たる彼の者達もその件に関係しております。しかしながら、彼の者達やダンジョンマスターからではない魔力を感知いたしました次第でございます』
「その者があのダンジョンを崩壊させたのか?」
『いえ、そういうわけではないのです。その者がダンジョンマスターと従魔契約を結んだ際、ダンジョンマスターがさらに崩壊を進めるような行動をしたようでございます』
「……………………」
アデレードは言葉を発することができなかった。
そもそも、アデレードはダンジョンマスターを使役したという話は今まで聞いた試しがなかったのだ。
ダンジョンのモンスターは野にいるモンスターとは違い従魔にしにくい。その上、野にいるモンスターとは比べ物にならないほど強く凶暴なのだ。
ましてやダンジョンマスターともなれば別格になる。そもそも保有している魔力総量が桁違いなのだ。
従魔契約をした途端、魔力が枯渇し死に至ることもあるであろう。
(それを従魔にしただと…………⁉)
アデレードは冷たい汗を自分がかいているのを感じた。
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