異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!

コスモクイーンハート

文字の大きさ
上 下
8 / 75
第1章 ダンジョン内に放置されたようです……

第六話 思いがけないこと

しおりを挟む
 目の前の景色が凄い速さで後ろへと抜けていく。アルに抱えられながら結菜はスキル、風の耳を詳しく知りたく思った。
(風の耳の消音ってどこまでが範囲内なんだろ?周辺って言っても曖昧すぎだよね)

《鑑定。術者から半径百メートル圏内なら使用可能。術者の承認しだいで調節可能。》

 ……本当に便利な鑑定さんである。勝手に自分が疑問に思ったことを調べてくれるとは……。
 いつか話し出すのではないだろうか?結菜の頬に冷たい汗が流れた。
 
《調節を行いますか?―Yes · NO》

 じゃあYesで……。
 結菜は自分の周りのみに発動していた消音を範囲限界まで広げた。もちろん対象を選ぶのも忘れない。
 結菜は消音される対象をダンジョンマスターに指定した。風が吹くはずがないのに自分から風が巻き起こる。自然に音もなく身体から風が吹き出していく感じだ。
 結菜は意識をダンジョンマスターへと向けた。
 その途端、ダンジョンマスターは音が聞こえなくなるのを感じた。
 ダンジョンマスターはクリード達からの攻撃を予測することができなくなってしまった。しかし、その間もクリード達による攻撃の雨は降り続く。
 攻撃が決まりやすくなったのをクリード達は実感した。
「やっと攻撃が効いた‼」
「あぁ、突然やりやすくなったな」
「でもどうして……?」
 ミリー、クリード、サアシャは不思議そうな顔をしている。
 もちろん、攻撃の手は一切休めない。むしろ攻撃しやすくなってから容赦なく剣や魔法を振るっていた。それも喜々として。……鬼畜である。
 その一方、アルは戸惑っていた。
 クリード達がいきなり攻撃を決めることができ始めたのもあるが、それよりもとてつもない魔力が自分が抱えている少女から発せられている。
(…………何なんだ?この魔力の量は…………………)
 少女から魔力が放出された後から、突然クリード達の攻撃が決まりやすくなった。何かをこの少女がしているらしい。アルはそう感じた。
 そう、実際結菜がスキルを発動してから状況は一変した。
 結菜は自分の身体から何かが大量に流れ出していくのを感じた。これが魔力らしい。水を含んだスポンジを絞って水がたくさん出ていくような感覚だった。
(こんなに魔力放出して大丈夫なのかな?)

《魔力放出をスキル《風の耳》が隠蔽しています。スキルの付与効果です。対象には術者の魔力放出を認識できません。間近にいなければ認識不可能です。》

 はい。ありがとうございます。鑑定さんがついに話しました。ただの鑑定ではないみたいだね。
 結菜は考えるのをやめた。ザ·思考放棄である。
 「いざという時は思考を放棄せよ‼」そう、合田家家訓第二条に結菜は頼ることにしたのだった。………合田家家訓結構ヤバいのではなかろうか。っていうか熱苦しい。
 えっ?どうしてただの鑑定が話すのかって?
 もう一度よくステータスを見てほしい。ステータスには"鑑定"ではなく"鑑定+"と書かれている。このプラスが原因だと思われる。
 そもそもこのスキル自体あの宝珠の実から得たスキルなのだ。つまり今更なのである。
(あれ?でも間近にって、……アルさんもしかして気づいてるんじゃ?)
 ふとそう思って、顔を上げる結菜。
 そこには驚きを顔に浮かべ、何かに気づいたかのような表情をしたアルの姿があった。
(………うん、だよね~。そりゃ抱えられてるんだもん。気づくよね~)
 結菜は頬を引きつらせながら、心の中で力なく笑った。
「おい、今がチャンスだ‼全力で攻撃しろ‼」
 アルが指示を出す。
 それに従ったクリード達の攻撃によりダンジョンマスターは崩れ落ちるように倒れた。



しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。

武雅
ファンタジー
この世界では8歳になると教会で女神からギフトを授かる。 人口約1000人程の田舎の村、そこでそこそこ裕福な家の3男として生まれたファインは8歳の誕生に教会でギフトを授かるも、授かったギフトは【器用貧乏】 前例の無いギフトに困惑する司祭や両親は貧乏と言う言葉が入っていることから、将来貧乏になったり、周りも貧乏にすると思い込み成人とみなされる15歳になったら家を、村を出て行くようファインに伝える。 そんな時、前世では本間勝彦と名乗り、上司と飲み入った帰り、駅の階段で足を滑らし転げ落ちて死亡した記憶がよみがえる。 そして15歳まであと7年、異世界で生きていくために冒険者となると決め、修行を続けやがて冒険者になる為村を出る。 様々な人と出会い、冒険し、転生した世界を器用貧乏なのに器用貧乏にならない様生きていく。 村を出て冒険者となったその先は…。 ※しばらくの間(2021年6月末頃まで)毎日投稿いたします。 よろしくお願いいたします。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

処理中です...