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彼と彼女の過去……
第51話自己嫌悪……
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放課後になり、いつも通り教室でクラスメイトが出ていくのを待っている。
俺はすることもなく教室の壁に寄りかかっていると、花が俺の隣の空いているスペースの壁に寄りかかってきた。
物憂げな表情の花は、壁に寄りかかったままずっと下を向いていた。
「どうしたんだ?」
そんなことを聞くが、どうして花がこんな暗い表情なのかは分かりきっている。
夏休みが明けても花への嫌がらせは続いており、何なら夏休み後の方が酷くなっている……。
俺の心配そうな声音にはっと顔を上げた花は、そのままこちらを向く。
「ねえ優太。これからは登下校別々にしない?」
「え……!?」
その言葉に驚きの声が出る。
「ど、どうしてだよ?」
そう聞かれた花は、とても弱弱しい声で喋りだす。
「だって……。私と一緒だと優太にまで迷惑がかかるわ」
「そんなこと……」
俺は全て喋りきる前に言葉が詰まった。
『そんなことない』とは言い切れなかった……。
実際その心配はしていたから……。
花と一緒だと俺までいじめにあってしまうのではないか。
そんなことを心のどこかで思っていた。
そして花が距離を置くと言った時、安堵した自分がいた……。
そんな自分に心底腹が立つ。
俺は唇を噛みしめて花に一言『分かった』とだけ伝えた。
花はうなずくと教室を出ていった。
誰もいなくなった教室の中で俺は、一人うずくまる形で床に座る。
何もしてやれない自分の無力さと、花が距離を置くことで俺に危害が加わらないと思い安堵した自分に怒りを感じた。
でも、だからと言って俺は何もしない……。
何もできない……。
弱い自分をいくら攻めたところで、余計自己嫌悪に陥るだけだ……。
俺は立ち上がり、誰もいない静かな教室にカギを閉める……。
誰もいない廊下をただ一人歩いて家に向かう……。
俺はすることもなく教室の壁に寄りかかっていると、花が俺の隣の空いているスペースの壁に寄りかかってきた。
物憂げな表情の花は、壁に寄りかかったままずっと下を向いていた。
「どうしたんだ?」
そんなことを聞くが、どうして花がこんな暗い表情なのかは分かりきっている。
夏休みが明けても花への嫌がらせは続いており、何なら夏休み後の方が酷くなっている……。
俺の心配そうな声音にはっと顔を上げた花は、そのままこちらを向く。
「ねえ優太。これからは登下校別々にしない?」
「え……!?」
その言葉に驚きの声が出る。
「ど、どうしてだよ?」
そう聞かれた花は、とても弱弱しい声で喋りだす。
「だって……。私と一緒だと優太にまで迷惑がかかるわ」
「そんなこと……」
俺は全て喋りきる前に言葉が詰まった。
『そんなことない』とは言い切れなかった……。
実際その心配はしていたから……。
花と一緒だと俺までいじめにあってしまうのではないか。
そんなことを心のどこかで思っていた。
そして花が距離を置くと言った時、安堵した自分がいた……。
そんな自分に心底腹が立つ。
俺は唇を噛みしめて花に一言『分かった』とだけ伝えた。
花はうなずくと教室を出ていった。
誰もいなくなった教室の中で俺は、一人うずくまる形で床に座る。
何もしてやれない自分の無力さと、花が距離を置くことで俺に危害が加わらないと思い安堵した自分に怒りを感じた。
でも、だからと言って俺は何もしない……。
何もできない……。
弱い自分をいくら攻めたところで、余計自己嫌悪に陥るだけだ……。
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