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彼と彼女の過去……
第37話共通の敵……
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合唱コンクールまでついにあと一日……。
明日は合唱コン本番だというのに、このクラスは……。
「また合唱練かよ……」
「もう俺たち不戦敗でよくね?」
……。
もう合唱コンクールが始まるというのに、このざまである……。
結局このクラス、ほとんどの生徒が最後まで歌いきることが出来ない……。
それもそのはず、練習は歌わないどころかサボる始末で、仮に参加しても喋っているか、携帯をいじっているだけなのだから……。
男子も女子もやる気がない……。
女子が泣いてクラスを出ていくイベントもなければ、最初はやる気のなかった男子が、女子の声援でやる気を出して優秀賞を取り、クラスの仲が深まるなんてこともない……。
明日は合唱コンだからといって、担任が無理やり全員残らせたが、居てもいなくても変わらない……。
みんなやらないので、やる気のある生徒もやらなくなる……。
そんななか、一人だけは違った生徒がいた……。
「皆さん、今から男女で合わせて歌います。指揮者の井上さんの合図で始めてください……」
みんながだらだらしてるのに、花だけは違っていた……。
なんて言うか、コイツの周りに流されないところって本当にすごいと思う……。
俺にはそんな精神力はない……。
周りが本気でやっていたら俺も本気で取り組んだが、流石に一人だけ本気で取り組むのは恥ずかしい……。
指揮者の合図で、花が合唱曲を弾き始める……。
最初は女子のアルトが歌い始めるが、とても小さくピアノの音にかき消されていた……。
続いてソプラノ……。
これもまた酷かった……。
ソプラノの方が人数が少ないからか、全くと言っていいほど歌声が聞こえなかった……。
めんどくさいから歌ってないのか、歌詞を覚えてないから歌えないのか、声が小さくて聞こえないだけなのか知らないが、とにかく何も聞こえない……。
今のところ、合唱がメインではなく、伴奏がメインになってしまっている……。
そして女子達と合わせるように、男子が歌い始めるのだが……。
まあ分かってはいたけど、俺以外の声が聞こえない……。
これは俺の声が大きいから聞こえないとかではなく、普通に俺以外歌ってない……。
せめて男子のパートリーダぐらいは歌えよ! っと心の中で憤怒する……。
そして合唱……というより伴奏は、何事もなくに終わった……。
本当になんもなかった……。
だって誰も歌わないんだもの……。
「えーと、皆さんもう少し歌詞を覚えてください。あと覚えている人は、声をもっと出してください」
ピアノから離れて、教卓の前に立った花は、呆れた感じでアドバイスというか、注意をした……。
「それじゃあ今日はここらへんで解散にしたいと思います。皆さん、明日までには歌詞をしっかりと覚えておいてください……」
号令をかけずにクラスメイトは帰っていく……。
俺もほとんど習慣になった施錠をするために、全員が教室から出ていくのを待っていた……。
すると、呆れた様子の花がこちらに向かってきた……。
「ねぇ優太。私今日は少し用事があるから先に帰るわ」
「そうか……。分かった」
そういうと、花はすぐに教室を出ていった……。
俺もすぐに帰りたいが、まだ帰れそうにない……。
たいていの生徒が教室を出ていったなか、またもや陽キャの女子AとBが話している……。
ちなみに名前は知らない。
この教室はその女子二人と、数人の生徒しかいない……。
別にその二人の会話を聞きたかったわけではないが、こう静かだと嫌でも耳に入る……。
「はぁ……今日もまじだるかったー」
「ほんと、別に合唱コンで賞取ったからなんだよ? って話だよね!」
それ言ったら終わりだろ……。
「てかさー、なんだっけ? 矢木澤さん? あの子何なの? チョー偉そうじゃない?」
「あ、それ私も思った! 上から目線だし、指図してくるし」
最初は合唱コンの愚痴だったのに、急に花の愚痴に変わった……。
あいつはただ本気でこの合唱コンに臨んでるだけだと思うけど……。
「てかさ、毎回思うんだけど、うちらのこと舐めすぎじゃない? なんか男に話しかけられても平然としてるし……」
「なんかお高く留まってるよね」
それからその愚痴トークが盛り上がり、ニ十分ほどしてようやく彼女らは教室を出ていった……。
自分と仲のいい奴を悪く言われると、無性に腹が立つ……。
花は多分、見下したりしているつもりは一切ない……。
じゃあ何故彼女らがそう言ってしまうのか……。
それは、自分の方が劣っているという自覚があるからだ……。
だが、彼女らはそれを認めようとしないだろう……。
矢木澤花という人間には、どうあがいても勝てないという事実を、矢木澤花に嫉妬しているということを悟られたくないんだ……。
だから陰口を仲間と言い合うことにより、自分を強く見せる……。
何故陰口なのか……。
それは矢木澤花という共通の敵を作り、仲間を増やすためだ……。
陰口を言うことにより、矢木澤花をよく思っていない女子を仲間に引き入れることが出来る……。
でもそれは仕方のないことなのかもしれない……。
人間は、優秀な人間に勝つ努力は怠るのに、排除する努力はする……。
嫉妬して蹴落そうとする……。
でも矢木澤花は、何も感じないのだろう……。
彼女は完璧で、とても強いのだから……。
おれは机の上においてあったカバンを肩にかけて、教室を出る。
明日は合唱コン本番だというのに、このクラスは……。
「また合唱練かよ……」
「もう俺たち不戦敗でよくね?」
……。
もう合唱コンクールが始まるというのに、このざまである……。
結局このクラス、ほとんどの生徒が最後まで歌いきることが出来ない……。
それもそのはず、練習は歌わないどころかサボる始末で、仮に参加しても喋っているか、携帯をいじっているだけなのだから……。
男子も女子もやる気がない……。
女子が泣いてクラスを出ていくイベントもなければ、最初はやる気のなかった男子が、女子の声援でやる気を出して優秀賞を取り、クラスの仲が深まるなんてこともない……。
明日は合唱コンだからといって、担任が無理やり全員残らせたが、居てもいなくても変わらない……。
みんなやらないので、やる気のある生徒もやらなくなる……。
そんななか、一人だけは違った生徒がいた……。
「皆さん、今から男女で合わせて歌います。指揮者の井上さんの合図で始めてください……」
みんながだらだらしてるのに、花だけは違っていた……。
なんて言うか、コイツの周りに流されないところって本当にすごいと思う……。
俺にはそんな精神力はない……。
周りが本気でやっていたら俺も本気で取り組んだが、流石に一人だけ本気で取り組むのは恥ずかしい……。
指揮者の合図で、花が合唱曲を弾き始める……。
最初は女子のアルトが歌い始めるが、とても小さくピアノの音にかき消されていた……。
続いてソプラノ……。
これもまた酷かった……。
ソプラノの方が人数が少ないからか、全くと言っていいほど歌声が聞こえなかった……。
めんどくさいから歌ってないのか、歌詞を覚えてないから歌えないのか、声が小さくて聞こえないだけなのか知らないが、とにかく何も聞こえない……。
今のところ、合唱がメインではなく、伴奏がメインになってしまっている……。
そして女子達と合わせるように、男子が歌い始めるのだが……。
まあ分かってはいたけど、俺以外の声が聞こえない……。
これは俺の声が大きいから聞こえないとかではなく、普通に俺以外歌ってない……。
せめて男子のパートリーダぐらいは歌えよ! っと心の中で憤怒する……。
そして合唱……というより伴奏は、何事もなくに終わった……。
本当になんもなかった……。
だって誰も歌わないんだもの……。
「えーと、皆さんもう少し歌詞を覚えてください。あと覚えている人は、声をもっと出してください」
ピアノから離れて、教卓の前に立った花は、呆れた感じでアドバイスというか、注意をした……。
「それじゃあ今日はここらへんで解散にしたいと思います。皆さん、明日までには歌詞をしっかりと覚えておいてください……」
号令をかけずにクラスメイトは帰っていく……。
俺もほとんど習慣になった施錠をするために、全員が教室から出ていくのを待っていた……。
すると、呆れた様子の花がこちらに向かってきた……。
「ねぇ優太。私今日は少し用事があるから先に帰るわ」
「そうか……。分かった」
そういうと、花はすぐに教室を出ていった……。
俺もすぐに帰りたいが、まだ帰れそうにない……。
たいていの生徒が教室を出ていったなか、またもや陽キャの女子AとBが話している……。
ちなみに名前は知らない。
この教室はその女子二人と、数人の生徒しかいない……。
別にその二人の会話を聞きたかったわけではないが、こう静かだと嫌でも耳に入る……。
「はぁ……今日もまじだるかったー」
「ほんと、別に合唱コンで賞取ったからなんだよ? って話だよね!」
それ言ったら終わりだろ……。
「てかさー、なんだっけ? 矢木澤さん? あの子何なの? チョー偉そうじゃない?」
「あ、それ私も思った! 上から目線だし、指図してくるし」
最初は合唱コンの愚痴だったのに、急に花の愚痴に変わった……。
あいつはただ本気でこの合唱コンに臨んでるだけだと思うけど……。
「てかさ、毎回思うんだけど、うちらのこと舐めすぎじゃない? なんか男に話しかけられても平然としてるし……」
「なんかお高く留まってるよね」
それからその愚痴トークが盛り上がり、ニ十分ほどしてようやく彼女らは教室を出ていった……。
自分と仲のいい奴を悪く言われると、無性に腹が立つ……。
花は多分、見下したりしているつもりは一切ない……。
じゃあ何故彼女らがそう言ってしまうのか……。
それは、自分の方が劣っているという自覚があるからだ……。
だが、彼女らはそれを認めようとしないだろう……。
矢木澤花という人間には、どうあがいても勝てないという事実を、矢木澤花に嫉妬しているということを悟られたくないんだ……。
だから陰口を仲間と言い合うことにより、自分を強く見せる……。
何故陰口なのか……。
それは矢木澤花という共通の敵を作り、仲間を増やすためだ……。
陰口を言うことにより、矢木澤花をよく思っていない女子を仲間に引き入れることが出来る……。
でもそれは仕方のないことなのかもしれない……。
人間は、優秀な人間に勝つ努力は怠るのに、排除する努力はする……。
嫉妬して蹴落そうとする……。
でも矢木澤花は、何も感じないのだろう……。
彼女は完璧で、とても強いのだから……。
おれは机の上においてあったカバンを肩にかけて、教室を出る。
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