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彼と彼女の過去……

第32話新学期の憂鬱……

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 新学期早々もう学校へ行きたくなくなった……。
 そんな気分で家に着くと、自分の部屋に行きすぐに寝てしまった……。
 それからどれほどたっただろうか……?
 俺はいきなり布団をがされて目を覚ます……。

「お兄ちゃん、いつまで寝てんの?」
 
 いつも通りに万葉が起こしに来た……。
 コイツはもっと普通に起こせないのかな……。
 なんて思いながら、体を起こす。

「そろそろ夕食の時間か?」

 昼間っから寝てしまったので、そろそろそんな時間だと思ったが……。

「お兄ちゃん寝ぼけてんの? もう朝だよ!」

「へ?」

 俺は間抜けな声を出してしまった……。
 いやいや……。
 だって俺が寝た時間は、昼の一時だぞ?
 仮にもし万葉の言った通り朝だとしたら、俺は17時間寝てることになる……。
 いくら何でも有り得ないだろ……。
 俺は恐る恐る目覚まし時計に手を伸ばす……。

「7時40分!?」

 嘘だろ?
 いや、きっと夜の7時40分に違いない……。
 でもそれだと19時40分ってなってないとおかしいし……。
 これは夢だな!
 俺は夢だということに気づいて、再びベッドに横たわる。

「はぁ……。お兄ちゃん、現実を受け止めようよ」

 万葉は強引に俺の服を引っ張って、ベッドから落とそうとしてくる……。
 俺はそれに抵抗するように、シーツにしがみつく。

「いい加減早く起きないと花ちゃん来ちゃうよ!」

「あいつには今日休むって伝えといてくれ」

往生際おうじょうぎわが……わるうわわわわ!」

 俺はシーツをつかんでる手に限界がきて、シーツを放してしまった……。
 いきなり手を放してしまったので、万葉は床に尻もちをついてしまった……。

「大丈夫か?」

「いたた……。全く! 不出来な兄を持つと苦労するのは誰だと思ってるの? 早く下に行って!」

 万葉は立ち上がると俺の背中を押して、無理やり連れてこうとする……。

「分かった、自分で歩くから押すな」

 こうして、妹との激しい戦いも終わり、朝の支度を済ませる。
 制服に着替えて全ての支度が終わったころに、インターホンが鳴った。

「じゃあ行ってくる」

「行ってらっしゃい」

 母親に見送られて、家を出る……。
 玄関の外には、いつも通り花がカバンを両手で持って待っていた。

「あら? なんか疲れた顔をしてるわね?」

「あぁ分かるか。妹と激しい戦いをしてきてな……」

「そう……。こんな不出来な兄を持つなんて、万葉も苦労してるわね……」

 なんかさっきも似たようなこと言われた気がするんだけど……。
 
「それにしてもよく学校へ行く気になったわね。私ならあんな醜態しゅうたいをさらしたら、学校なんてとてもじゃないけど行けないわ」

「俺だって行きたくなかったよ……。でも流石に不登校になったら親に迷惑かかるし……」

「何言ってるのよ。あなたはもう取り返しのつかないぐらい、いろんな人に迷惑をかけてるじゃない」

 そんなことを言った花は、クスクス笑っていた……。
 取り返しのつかない迷惑って、俺どんなことしたんだよ……。
 そうしていつも通りのくだらない会話をしながら、俺達は学校に向かう。
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