上 下
15 / 70
彼女の心境……

第15話彼女の真意……

しおりを挟む
「もっかい言ってくれ……」

 俺は矢木澤の発言が幻聴ではないと確認するために聞き返すと……。

「だから、私があなたの分からない問題を教えてあげるって言ったのよ」

 やはり聞き間違いではなかった。
 急にどうしたのコイツ?
 いつも暴言のオンパレードな矢木澤から、まさか『教える』なんて言葉が出てくるなんて思いもしなかった。

「どうしたんだお前? 俺のこと好きなの?」

 冗談めいた感じで言うと、矢木澤は……。

「はぁ……。あなたに嫌われる要素はあっても、好かれる要素なんてどこにもないでしょう?」

 深いため息をついた後に、いつも通り俺を傷つける暴言を飛ばしてきた。
 それから矢木澤は時計をちらっと見てから、机をばんばんと急かすように叩いた。

「くだらないこと言ってないで早く問題集を出しなさい」
 
 言われてかばんに手を突っ込むが、なかなか見当たらない……。
 そういえば教室のロッカーに入れっぱなしだった。
 そもそも家に帰ってゲームする気満々だった俺の鞄に、問題集なんて入っているわけがなかった。

「教室に問題集取りに言っていいか?」

「数学だけ持ってきなさい」

俺は言われるがまま数学の問題集を持ってくる。

「数学と英語は教えるけど、後は基本暗記科目だから自分でやってちょうだい。じゃあ早速一問目だけど……」

 そういって矢木澤は、問題のやり方を丁寧に教えてくれた……。
 てかコイツ、いつも授業中寝てるくせに何で勉強できるんだ?

「何でいつも寝てるのに、分かるんだよ?」

「そんなの家で勉強してるからに決まってるじゃない……。私教えられたり指図されるのが嫌いなの……。だから家で勉強してるのよ……」

 確かにコイツは、命令する側だしな……。
 そのあとも、俺の分からない問題を丁寧に教えてくれて、気づけば午後七時だった。

「今日はもうお開きにしましょう。また明日もやるわよ」

「なんかありがとな、すごくわかりやすかった……」

「当り前じゃない。私に教えてもらえるなんて、光栄に思うことね」

 そう言って矢木澤は教室を出ていく……。
 彼女が何故、俺のためにわざわざ勉強を教えてくれたのか……。
 その真意はよくわからないが、彼女がそう望むなら俺も勉強を頑張ろうとおもった……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

私が死ねば楽になれるのでしょう?~愛妻家の後悔~

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢オリヴィアは伯爵令息ダーフィトと婚約中。 しかし結婚準備中オリヴィアは熱病に罹り冷酷にも婚約破棄されてしまう。 それを知った幼馴染の伯爵令息リカードがオリヴィアへの愛を伝えるが…  【 ⚠ 】 ・前半は夫婦の闘病記です。合わない方は自衛のほどお願いいたします。 ・架空の猛毒です。作中の症状は抗生物質の発明以前に猛威を奮った複数の症例を参考にしています。尚、R15はこの為です。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

ままならないのが恋心

桃井すもも
恋愛
ままならないのが恋心。 自分の意志では変えられない。 こんな機会でもなければ。 ある日ミレーユは高熱に見舞われた。 意識が混濁するミレーユに、記憶の喪失と誤解した周囲。 見舞いに訪れた婚約者の表情にミレーユは決意する。 「偶然なんてそんなもの」 「アダムとイヴ」に連なります。 いつまでこの流れ、繋がるのでしょう。 昭和のネタが入るのはご勘弁。 ❇相変わらずの100%妄想の産物です。 ❇妄想遠泳の果てに波打ち際に打ち上げられた、妄想スイマーによる寝物語です。 疲れたお心とお身体を妄想で癒やして頂けますと泳ぎ甲斐があります。 ❇例の如く、鬼の誤字脱字を修復すべく激しい微修正が入ります。 「間を置いて二度美味しい」とご笑覧下さい。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

処理中です...