上 下
34 / 79

騎士団の到着

しおりを挟む
フィンに抱かれたまま、二人の周りを回っている光を見ていると、騎士団がやってきた。

「あれは騎士団か!?団長もいる!」

フィンは騎士団に向かって、ここです!団長!、と叫んだ。

騎士団はフィンに気付き一目散に向かってきた。

「フィン!無事か!」

騎士団長が颯爽と馬からおりると、二人の前で足を止めた。

「フィン、その娘は?その光はなんだ?」
「星の乙女エスカです。この光は、星の乙女が祈りを捧げる豊穣と加護の双神様です。」
「まさか…聖女様か?」

騎士団長が驚くと、後ろの騎士達も、聖女だ、と騒ぎだした。

光は少し上に上がると急に弾けたように何ヵ所かに分かれて崩れた砦の瓦礫に飛んでいった。

光が落ちた所に皆が目を追いかけると、そこから、人が動き始めた。

「団長!エスカ誘拐犯はエレナです。その父親バーンズ侯爵ならびに商人らしき男達と私兵を確認してます。」

騎士団長はフィンの言葉にハッとした。

「そのバーンズ侯爵を捕縛しに来た。」

騎士団長は騎士達に向き、手を上げ指示を出した。

「目標、バーンズを捕縛せよ!ならびに、その娘エレナ、闇商人達を直ちにに捕縛せよ!」

騎士団長のかけ声にて騎士達が光を元に瓦礫から捕縛対象を探し始めた。

光の元には皆が思ったとおり、バーンズ侯爵にエレナ、商人達が見つかった。

「フィン、騎士団長様、オリビアさんもいたんです。早く助けて下さい。お願いします。」
「オリビア?」
「エスカ殿、オリビアとはまさかサジタリアス村の乙女ですか?」
「はい、一緒にいました。」

エスカが話していると、オリビアさんの声がした。

「エスカ!」
「オリビアさん!?よかった!無事だったんですね!?」

オリビアさんは足を怪我したのか引きずりながら来た。

「君がオリビア殿か」
「は、はい!」
「君も騎士団が保護する。」

騎士団長の言葉にオリビアさんはまた泣き始めた。

「エスカ、無事でよかった。先に逃げてごめんなさい!」
「オリビアさんこそ無事でよかったです。」

教会にいた頃と違いオリビアさんはずっと謝っていた。
騎士団長様はオリビアさんには騎士をつけ、手当てされていた。

フィンには、エスカ殿とそこにいなさい、と言って二人にしてくれた。


フィンはずっと抱き抱えてくれていた。

「エスカ、痛みは大丈夫か?かわいそうに、怖い思いをさせてすまない。」
「フィンが来てくれたからもう大丈夫です。」
「腕以外は痛まないか?」
「…実は足も挫いたようで、痛みがあります。」

フィンは優しくまた抱き締めた。

フィンの心臓の音を聞きながらまた眠ってしまった。

まだフィンの顔がみたいのに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

愛する旦那様が妻(わたし)の嫁ぎ先を探しています。でも、離縁なんてしてあげません。

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
【清い関係のまま結婚して十年……彼は私を別の男へと引き渡す】 幼い頃、大国の国王へ献上品として連れて来られリゼット。だが余りに幼く扱いに困った国王は末の弟のクロヴィスに下賜した。その為、王弟クロヴィスと結婚をする事になったリゼット。歳の差が9歳とあり、旦那のクロヴィスとは夫婦と言うよりは歳の離れた仲の良い兄妹の様に過ごして来た。 そんな中、結婚から10年が経ちリゼットが15歳という結婚適齢期に差し掛かると、クロヴィスはリゼットの嫁ぎ先を探し始めた。すると社交界は、その噂で持ちきりとなり必然的にリゼットの耳にも入る事となった。噂を聞いたリゼットはショックを受ける。 クロヴィスはリゼットの幸せの為だと話すが、リゼットは大好きなクロヴィスと離れたくなくて……。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

私の恋が消えた春

豆狸
恋愛
「愛しているのは、今も昔も君だけだ……」 ──え? 風が運んできた夫の声が耳朶を打ち、私は凍りつきました。 彼の前にいるのは私ではありません。 なろう様でも公開中です。

【完結】伯爵の愛は狂い咲く

白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。 実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。 だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。 仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ! そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。 両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。 「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、 その渦に巻き込んでいくのだった… アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。 異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点) 《完結しました》

旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。

バナナマヨネーズ
恋愛
 とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。  しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。  最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。  わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。  旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。  当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。  とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。    それから十年。  なるほど、とうとうその時が来たのね。  大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。  一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。 全36話

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

処理中です...