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ステラヒール

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就寝時は昨日と同じようにした。
エスカは疲れているのか、やはりすぐに眠ってしまった。
やっぱりエスカの寝顔は可愛くて、昨日と同じように、手を握り眠った。


朝目が覚めると、ビックリした。
フィンの手と私の手が握りあっている。
何故こんな事に!?
フィンを見ると長い睫毛に美しいサラサラの金髪、端正な顔つきだが、男らしい感じだ。それにどこか品もある。
いやいや、見とれている場合じゃない。
昨日可愛い石鹸を買ってくれたし今のうちに水浴びをしよう!

そっと手を離して、タライを持って裏の小川に行った。
水はやっぱり冷たいが、気にせず服を脱ぎ頭から水を浴びた。
この石鹸可愛いし、いい匂いがする。
こんなの使ったことなかったわ。
タライに座り、もう一度ジャバーと頭から水をかけると、クシュンクシュンと冷たさのあまりくしゃみが出た。

水浴びを終えフィンの所に戻るとフィンは起きてた。

「やっぱり水浴びしてたのか?石鹸のいい匂いがする。」

フィンが近づくと、石鹸の匂いがしたらしい。

「凄くいい匂いで綺麗になりました。ありがとう、フィン。」

フィンは何故か赤くなっていた。

いつも通りに村のパン屋でパンを食べた後、村人に声をかけられた。
どうやら一昨日の子供を治したことを知り、夫を治してほしいと言われた。
ヒールをかけるとあっという間に治り、やっぱり、少ないですが、とお金を出したが見習いの分際でお金は受け取れなかった。

「エスカ、どうやら一昨日の医者は旅の医者だったらしく、この村には医者も回復師(ヒーラー)もいないみたいだ。」
「じゃあ、一昨日のお医者様は?」
「もう旅立ったらしい。」

フィンから話を聞いているとまた村人がきた。
今度は寝たきりのおじいさんを癒してほしいらしい。
その方の家に行くと、おじいさんは苦しそうだった。

「私には病気は治せませんが少しでも苦しみが癒されますように…」

「ステラヒール」

優しい星のような光が現れ、おじいさんを包むと、おじいさんの苦しみが和らぐのがわかった。

「これで苦しみは楽になると思いますが、すみません、私では病気は治せません。」

「いいんです。病気は治らないと言われていました。父が苦しまないようにしていただければ。」

娘さんは涙を流し、安堵した表情だった。

フィンと家に帰り、家の修理をやっと始められた。
フィンは屋根に登り、空いた屋根をカンカンとトンカチ片手にふさいでいた。
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