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リヒトの方が一枚上手

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翌朝、クライス達はさっさと旅行に出掛けており、リヒトが部屋に行くとすでにいなかった。

「勘づいたかな。」

リヒトは一人そう呟いた。

朝一で出発した為、昼には馬車は目的地の海についた。
海のそばには、ホテルやコテージもあり、大きな観光地だった。

荷物を部屋に運び入れると、下僕のヘンリーが、執事のケインに頼まれたとクライスに手紙を渡した。
ケインは海が苦手で来なかった為ヘンリーに頼んだらしい。

クライスは何だ?と手紙を開けると、ワナワナと手が振るえていた。

「やっぱりリヒトの奴仕事を頼む気だったな!全部手配済みだからおかしいと思ったんだ!」
「クライス、もしかして、早く出たのはリヒト様に仕事を頼まれないようにですか?」
「当たり前だ!何で休暇中に仕事なんだ!」

(リヒト様もクライスがさっさと逃げるのわかってケインさんに手紙を渡してたのね。)

どうやらリヒトの方が一枚上手だった。

「ずっと仕事なのですか?」
「ずっとじゃないけど…寂しいか?」 
「せっかく来ましたから、クライスが怒っているのは嫌ですよ。」

リアの言葉にクライスは深呼吸をし、少し落ち着こうと思った。

「怒ってはいない。少し出るだけだ。」
「じゃあ待ってます。」
「帰ったら、リヒトにほしいものを要求してやろう!」
「またお花を持ってくるかもしれませんね。」
「花はもう要らん。」

マルク達がもう、つく頃なので二人でロビーに迎えに降りると、マルク達はロビーで待っていた。

マルクはクライスを見ると何か察したようで、どうしたんですか?と聞いてきた。

(さすがマルクだわ、クライスの事がよくわかるのね。)

リアは感心していた。

「マルク、仕事だ。リヒトにやられた。」
「仕事?休暇をくれるんじゃないんですか?」

クライスがリヒトの手紙をマルクに差し出しマルクは読み上げていた。

「俺も行くんですか?」
「仕事だからな。」

マルクは眉間にシワを寄せ明らかに嫌そうだった。
それもそのはず、マルクは休暇だからイーディスと一緒に来ているのだ。

「イーディス、クライス達が仕事に行っている間一緒に遊びましょう。」

リアはイーディスを誘い海に行こうと考えていた。
イーディスは、嬉しそうに返事をしてくれリアは安心した。

「二人で海に行く気ですか?」
「そうだけど、マルクはクライスと仕事でしょ?私はイーディスと遊ぼうと思うんだけど、」
「…クライス一人で行って下さい。」
「俺もお前一人に行かせたいのだが。」

クライスもマルクも女二人だけで行かせるのが心配で仕事に行きたくなかった。

「変な事言ってないで早く帰って来て下さい。」
「リア、俺がいない時に海に入るなよ。」

クライスは真剣にリアに詰め寄った。

「クライス、近いですよ!」
「心配だ。」
「マルク、クライスと早く行って下さい!」

リアの言葉にクライスとマルクはしぶしぶ仕事に行った。

残されたリアとイーディスはどうしようか話していた。

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