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心配と溺愛

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クライス達が、フィナールの邸に来てから、一週間、リアは少しは歩けるまでに回復した。
クライスが、毎晩、夜光草の所に通ったお陰様だろうとヒューゴ達は思っていた。

「クライスのおかげです。」
「二人の秘密にしたかったんだかな。」
「夜間も、邸の警備をしてるんだから、皆にばれるのは当然だよ。」
ヒューゴが突っ込むと、クライスは少しムッとした。

「少し、外にも出たくなってきました。」
「まだ、ダメだ。外には騎士団もいるし、リアを見せたくない。」
「庭に椅子を準備させて、休ませればいいだろう。日に当たるのはいい事だよ!」
「なら、カウチソファーを準備させる。」
「普通の椅子で大丈夫よ。」
「ダメだ。いや、それより、庭にベッドを運んだ方が休めるか?」
(庭にベッドなんて恥ずかし過ぎる!)

「…カウチソファーでいいです。」
ヒューゴは二人のやり取りを見てフフと笑った。
「ケインに伝えて来るから、ゆっくりクライスとおいで。」
ヒューゴは、すっと立ち、ケインに伝えに行った。

リアはベッドから降りて立とうとすると、クライスはリアを抱き抱え連れていこうとした。
「クライス、歩けます!」
「ダメだ。」
クライスの押しに負け、そのまま庭へ向かった。

庭に行くと、ケインの指示で下僕二人がカウチソファーを運んでいた。

「すみません、面倒な事を頼んでしまって。」

リアは何だか申し訳ない気持ちになった。

「クライス、もう降ろして下さい。皆見てます!」
「まだ、ダメだ。」

クライスはそのままリアをカウチソファーにつくとやっとリアをおろした。
リアを降ろすと、クライスは何故か警備の所に行った。

そこに、メイドのリリーとレオナがフルーツとアイスティーを持って来た。

「リア様、クライス様は心配してるのと離したくないのとで、お姫様抱っこする理由がいるんですわ。」

「でも、皆が見て恥ずかしいんです。」

「愛されているのはいい事ですわ」

そこに、クライスが戻って来た。
「なんだ?どうした?」

「リリーが、クライスに愛されているのはいい事だと、」

クライスはリリーにいい事を言うなと、笑顔になった。

「警備の方にご用があったんじゃないの?」

「少し離れているように言って来ただけだ。」

クライスはリアの横に座り、イチゴを食べながら言った。

そこにヒューゴがやって来た。
「クライスは、リアを他の男の目に触れさせたくなくて、警備を離したんだよ。」

クライスは、少し照れたようになった。
「お前の性格がマルクに移ってるぞ。」
「マルクは元々ああいう子だよ。」
「とにかく、リアと二人でいたいんだから、ヒューゴもどっか行ってくれ。」

「わかったよ。リア、少し何か食べなさい。」

ヒューゴは、持って来たスコーンとジャムをおいて、その場を離れた。

「クライス、もう狙われてないんだし大丈夫ですよ。」
「他の男が、リアを好きになったらどうする。本当は閉じ込めておきたいくらいだ。」
「…本当にやりそうで、怖いです」
「リアが嫌じゃないならそうする。」
「絶対止めて下さい。」

クライスはそう言いながら、リアの口にイチゴを食べさせた。

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