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闇のシード 2
しおりを挟むヴェイグ様とヘルムート陛下の会話に思考が止まっていた。
シュタルベルグ国は、カレディア国が闇のシード(魔法の核)を隠していたことを知っていたのだ。
そのうえ、私が関わっていることも……じゃあ……ヴェイグ様が私を連れ出してくれたのは、カレディア国のどこにあるかわからない闇のシード(魔法の核)を手に入れるためで……。
「だが、セレスティアは、今は俺の手の中にある。セレスティアと引き換えにカレディア国が闇のシード(魔法の核)を出すと、俺は確信しています」
「では、早々に取り引きを持ち掛けるか……ちょうどいいところに、聖騎士ロクサス殿が来ているからな……彼の地位なら、聖女機関も無視できないだろう」
ヴェイグ様が私と逃げたのは、私のためではなかった。自惚れていたわけではない。
突然の告白に、戸惑いもした。でも、それが私を連れ出すための甘い誘い文句だったら……。
胸が刺されたように痛い。重くて息が止まりそうなほど重く感じる。ギュッと胸を押さえても、何も変わらなくて……。
違う。そうじゃない。
早くここから逃げないと、私はカレディア国に闇のシード(魔法の核)と引き換えに差し出されてしまう。
「それにしても、よく見つけられたな……」
「闇の気配をたどっていたら、偶然にもセレスティアに行きついたんですよ」
私が、闇に侵されていたから、ヴェイグ様が気付いたのだ。天井を通っていたのは、微かな闇の気配をたどっていたということで……その時に私が探索のシードを自分に埋め込もうとして、偶然にもヴェイグ様に向かって飛んで行ったのだ。
確かに、ヴェイグ様は驚いただろう。私も天井から男が落ちてきて驚いた。
ヴェイグ様が落ちてきた理由を言わなかったのも、わかってしまった。
「兄上」
突然、ヴェイグ様が強い声音でヘルムート陛下の言葉を止めた。ヴェイグ様の制止にハッとしてしまう。
しまった……ヴェイグ様は、探索のシードを持っているのだ。ここに私が隠れていることがバレてしまう。そう思うと、背筋がひやりとした。
「王妃……」
「相変わらず鋭いこと……」
すると、私が隠れている場所と違うところから、王妃様がやって来ていた。
ヴェイグ様は、王妃をじろりと睨んでいる。
「何の用ですか?」
「リリノアのことですよ。わかっているでしょう?」
王妃様が現れてくれたから、私が隠れていることはバレることはなかった。でも、これ以上ここにはいられない。
そして、ヴェイグ様たちに気付かれずに私はその場を逃げるように離れた。
以前から、聖女機関の地下に封印されている闇のシード(魔法の核)の封印が弱くなっていた。光の国と呼ばれるカレディア国では、あれは毒だった。
その証拠のように、光のシード(魔法の核)が弱くなっていた。
だから、聖女の能力も弱くなっているとイゼル様が言っていた。そのせいで、大聖女候補だった私が、大聖女になる前に呼ばれてあの闇のシード(魔法の核)の存在を知り、闇が溢れないように魔法をかけた。
あれの存在を知って封印を強めるのは、大聖女か筆頭聖騎士のどちらかなのだ。それ以外には秘密だった。知っているのは、他には陛下だけ。マティアス様はまだ王太子殿下であったから、知らなかったのだ。
そして、闇に触れたせいで私は闇に穢された。それから黒髪が出現し、いつも怯えていた。
闇は負の感情を増幅させて、かき乱す。
マティアス様と別れたいと願っていたことに隙があったのだろう。
誰とも懇意になることもなく、嘲笑や妬みが今まで以上に敏感になっていた。
でも、誰にも言えないままで、自分を一人で抑えていた。
あの存在が知られるわけにはいかなかったのだ。
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