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婚約破棄
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カレディア国。この国には聖女が幾人もおり、豊穣や聖なる力で国を栄えさせていた。
そして、聖女になるには、この国の守護獣であった光の聖獣様が造り上げた聖なる力が宿っているという光のシード(魔法の核)を受け入れることができる人間だけだった。
私__セレスティア・ウィンターベルも、その聖女の一人だった。
幼い頃から聖女としての資質を認められて、大聖女候補と言われた私はすぐに王太子殿下マティアス・カレディア様と婚約が結ばれた。
私が18歳、マティアス殿下が20歳になり、結婚も近いかと思われたが……目の前でその彼が目をつり上げて私を睨んでいる。
「セレスティア。すぐに婚約破棄をしてもらおう。今すぐに書類にサインをするんだ」
「……どうしてもですか?」
「当たり前だ! 婚約しておきながら、不埒な真似をするような聖女とは結婚しない!」
目の前のマティアス殿下が、感情のままに机に拳を叩きつける。
やられた。これでは、私は現行犯も同然で、私の有責で婚約破棄をされてしまう。
すでに、それを覆すことができない。
天井から崩れた瓦礫のせいで、服は破れて乱れていた。いかにも、逢引きをしていたような現場を押さえられてしまったのだ。
どうしてあんなところで、探索のシードを使ってしまったのか……でも、シード(魔法の核)を身体に埋め込もうとして、まさか、天井に向かって飛んでいくなんて思わなかった。
いや、まさか天井に人が潜んでいるなん予想もつかなかった。
あの男はいったい何をしていたのでしょうか。
「セレスティア。すぐにサインしろ」
……うるさい男です。
偉そうに。私にサインを求める理由なんて、私のせいではないのに。
そもそも、私が探索のシードを使わなければならない状況になったのは、マティアス殿下の浮気を探るためだった。
どうしても現場を押さえられなくて、居場所を探すために探索のシードを造ったのだ。
造るのに、三ヶ月もかかったのですよ。苦労したのです。
マティアス殿下の有責にして、私から婚約破棄を申し出ようとしていたのに……。
マティアス殿下が王太子殿下という身分だから、聖女とはいえ私から婚約破棄を出来なくて、どうしても誰もが納得する証拠を突き詰めるはずが……いったいなぜ、こんなことに。
しかも、天井から落ちてきた男……早くもう一度会わなければ。
そんな私などお構いなしに、マティアス殿下がサラサラとサインをしていた。
「セレスティア。次はお前の番だ」
「……慰謝料は?」
「ない! 後日こちらから請求しよう!」
浮気をしていたのは、マティアス殿下なのに。
一年以上前から、黒髪が現れた。聖女に有るまじき髪色に聖女の資質を疑われた私に対して、彼は聖女だと疑わしいという噂を信じてしまい、私に素っ気ない態度を取り始めた。
そして、いつごろからか、聖女のエリーゼと一緒にいるところを目撃してしまった。
肩を抱き寄せて、城の奥へと向かう二人を何度も見た。でも、マティアス殿下が人払いをしているせいで、しかも、誰も入れないように近衛騎士を見張りにつけていたために、私はその奥に行けなかったのだ。
私から婚約破棄をしようと思っていただけなのに、なぜ反対の立場になるんですか。
それでも、もうサインをするしかないのだと思う。
目の前に突き付けられた書類にサインをすれば、お互いの同意を得たことになる。
その書類に、セレスティア・ウィンターベルと力いっぱい書いた。
その姿を見ているマティアス殿下がにやりと口角を上げる。
苛つく。腹立たしい気持ちで最後の一文字を書いて、思いっきりペンを書類に刺した。
そして、聖女になるには、この国の守護獣であった光の聖獣様が造り上げた聖なる力が宿っているという光のシード(魔法の核)を受け入れることができる人間だけだった。
私__セレスティア・ウィンターベルも、その聖女の一人だった。
幼い頃から聖女としての資質を認められて、大聖女候補と言われた私はすぐに王太子殿下マティアス・カレディア様と婚約が結ばれた。
私が18歳、マティアス殿下が20歳になり、結婚も近いかと思われたが……目の前でその彼が目をつり上げて私を睨んでいる。
「セレスティア。すぐに婚約破棄をしてもらおう。今すぐに書類にサインをするんだ」
「……どうしてもですか?」
「当たり前だ! 婚約しておきながら、不埒な真似をするような聖女とは結婚しない!」
目の前のマティアス殿下が、感情のままに机に拳を叩きつける。
やられた。これでは、私は現行犯も同然で、私の有責で婚約破棄をされてしまう。
すでに、それを覆すことができない。
天井から崩れた瓦礫のせいで、服は破れて乱れていた。いかにも、逢引きをしていたような現場を押さえられてしまったのだ。
どうしてあんなところで、探索のシードを使ってしまったのか……でも、シード(魔法の核)を身体に埋め込もうとして、まさか、天井に向かって飛んでいくなんて思わなかった。
いや、まさか天井に人が潜んでいるなん予想もつかなかった。
あの男はいったい何をしていたのでしょうか。
「セレスティア。すぐにサインしろ」
……うるさい男です。
偉そうに。私にサインを求める理由なんて、私のせいではないのに。
そもそも、私が探索のシードを使わなければならない状況になったのは、マティアス殿下の浮気を探るためだった。
どうしても現場を押さえられなくて、居場所を探すために探索のシードを造ったのだ。
造るのに、三ヶ月もかかったのですよ。苦労したのです。
マティアス殿下の有責にして、私から婚約破棄を申し出ようとしていたのに……。
マティアス殿下が王太子殿下という身分だから、聖女とはいえ私から婚約破棄を出来なくて、どうしても誰もが納得する証拠を突き詰めるはずが……いったいなぜ、こんなことに。
しかも、天井から落ちてきた男……早くもう一度会わなければ。
そんな私などお構いなしに、マティアス殿下がサラサラとサインをしていた。
「セレスティア。次はお前の番だ」
「……慰謝料は?」
「ない! 後日こちらから請求しよう!」
浮気をしていたのは、マティアス殿下なのに。
一年以上前から、黒髪が現れた。聖女に有るまじき髪色に聖女の資質を疑われた私に対して、彼は聖女だと疑わしいという噂を信じてしまい、私に素っ気ない態度を取り始めた。
そして、いつごろからか、聖女のエリーゼと一緒にいるところを目撃してしまった。
肩を抱き寄せて、城の奥へと向かう二人を何度も見た。でも、マティアス殿下が人払いをしているせいで、しかも、誰も入れないように近衛騎士を見張りにつけていたために、私はその奥に行けなかったのだ。
私から婚約破棄をしようと思っていただけなのに、なぜ反対の立場になるんですか。
それでも、もうサインをするしかないのだと思う。
目の前に突き付けられた書類にサインをすれば、お互いの同意を得たことになる。
その書類に、セレスティア・ウィンターベルと力いっぱい書いた。
その姿を見ているマティアス殿下がにやりと口角を上げる。
苛つく。腹立たしい気持ちで最後の一文字を書いて、思いっきりペンを書類に刺した。
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