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小さな狼と大きな狼!?

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ヴォルフラム殿下がいなくなると、戻ってきた聖獣様。聖獣様を、子供のように私の部屋にある聖獣様用のベッドに寝かせた。そっと撫でると、満足げに鼻を微かに鳴らして身体を丸めて眠った。

もふもふ誘拐罪で逮捕されて、この離宮に囚われの身になっているけど……待遇は良いものだと思う。
この部屋と離宮しか出入り自由ではないけど、部屋は貴族が使うような豪華なものだし、ドレスも食事も囚人とは思えないほど立派だった。

「ヴォルフラム殿下は、いったい何を考えているのかしら?」

聖獣様に問うても、寝ている聖獣様は返事すらしなかった。そして、そのまま温かいベッドで私も眠りについた。

__深夜。
真っ暗なベッドで寝ている私の鼻がくすぐったい。ふと目を開けば、あの大きな狼が私を慈しむように舐めていた。

「聖獣様……ずいぶん大きくなりましたね」

聖獣フェンリル様はもっと小さい。目の前の狼は私を乗せられるほどの大きさだった。

「……聖獣様。二匹いましたかね?」

二匹いるなどヴォルフラム殿下から聞いてない。でも、こんな綺麗なシルバーアッシュの毛並みで凛々しい狼は普通の狼と違う。

「まぁ、あの意地悪ヴォルフラム殿下が、私に言うわけないですよね」

はぁ、とため息がでる。
大きな狼は、なぜかイラッとしたように鼻で私をつついてきた。大きな狼を見れば、ヴォルフラム殿下と同じ緋色の瞳。その眼に惹かれるようにそっと大きな狼を撫でた。
大きな狼は、照れるようにそっと目を閉じる。

「……綺麗な眼です。ヴォルフラム殿下は、この眼が嫌いみたいだけど……」

ヴォルフラム殿下は、自分の緋色の瞳をずっと嫌っている。

この氷の国と言われた寒い国を治めるルティナス王国の陛下は、代々青い目だった。
でも、ヴォルフラム殿下だけは違った。どこから見ても、炎のような緋色の瞳。陛下は王妃の不貞を疑い、誰も王妃を庇うことなどなかった。

幼い頃から婚約していた私は、王妃に何度も会いに行ってお茶をした。温室で一緒に花を摘んだり、散策を一緒にしたことがあった。物静かな王妃はいつも儚げに微笑んでいて優しかったのだ。

妹を可愛がり、私の苦労を脱ぎらうこともなく、出来て当然だと言うお父様たちに癒されることもなく、実家が居心地が悪かった私には、優しい王妃様が大好きだった。

良い王妃だったんだけど……でも、眼が違うだけで、陛下は王妃もヴォルフラム殿下も嫌っていた。

でも、髪色は間違いなく陛下と同じ珍しい銀髪だったのだ。
だから、陛下はヴォルフラム殿下を捨てられずに、王子として育てたのだ。

「でも、私はこの眼が好きなの……」

幼い頃に、落ち込んでいたヴォルフラム殿下にしたことがあった。その時と同じようにこの大きな狼の眼にそっと口づけをした。そして、ベッドの上で大きな狼に抱かれるように身体をもたれた。すると、大人しい大きな狼は、そっと尻尾を丸めて私を包んでくれた。





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