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掌握 1

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ある晩━━━━。

「シグルド…このお邸の方達はどこに行ったんですか?」


「旅行だろう」
「メイド数人だけ残して他の使用人も含めて家族全員で旅行ですか?」

ティナは、この邸の人気の無さを不審に思っていた。

そして、不審に思うのも無理はない。
実際もうメイド数人と俺達三人しかいないしんと静まり返った屋敷なのだから。




前日━━━━━━。

「ティナを置いて来て良かったんですか?シグルド様」
「ティナが何の役に立つんだ。今からすることを見ればティナは悲鳴を上げて倒れるだろ」

ティナを隠れ家に置いてヴィルヘルムと二人でバリィ公爵家に向かっていた。
バリィ公爵はエンディスの宰相で、ショーンの右腕とも言われている。
エンディスの王が病で伏せってからは、ショーンと二人で国を回しているから、俺の処刑に関わりがないわけがなかった。

ティナは来ても役に立たないから、ヴィルヘルムの霧の魔法で隠れ家を覆わせ誰にも見つからないようにしてきた。

食材も置いてきたし、ティナは買い物に行くこともないだろう。
ティナは食べ物さえあれば大丈夫だろうと思う。

「ヴィルヘルム…行くぞ。上手くやってくれよ!」
「お任せ下さい」

そして、ヴィルヘルムの吸血鬼の能力でバリィ公爵家のメイドの一人を吸血すると目は虚ろになり、ヴィルヘルムの傀儡のようになった。
ヴィルヘルムがいうには、吸血だけなら明日には元に戻るそうだ。

このメイドは洗濯物を干しているからランドリーメイドだろう。

「さて、お嬢さん…使用人の休憩室にご案内をよろしくお願いしますよ」
「はい…」

メイドを先頭に、旨かったと言いながらまだ血が足りない様子のヴィルヘルムとついて歩いていた。

「血なんか旨いのか?」
「吸血鬼にとったら極上のワインと一緒ですよ…シグルド様も魔族として覚醒してますから何かの欲が増幅していると思いますけどねぇ。不死王様は面倒くさいと言ってよく寝てましたよ」

そう言えば、動き出してからエンディスの兵を引き裂いた後はとにかく眠い。
ティナが言っていた三大欲求の睡眠欲が強くなっているのだろうか…。

「俺は睡眠欲か…?」
「そうかもしれませんね。不死王様はよく寝てましたから」

休憩室の扉の前につくと、メイドがこちらです。と抑揚のない声で扉を開けた。

「ヴィルヘルム…やるぞ」

どこか、気分が高ぶり、それに合わすようにヴィルヘルムは楽しそうに、勿論です。とニヤリと牙を見せ笑った。





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