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2つの心臓
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不死王が俺の父親と言うヴィルヘルムと、ティナを横に抱き寄せ向かい合って話を始めた。
死体の横は嫌だとティナが泣くので村の入り口に木を倒し椅子代わりにしてお互いに座っていた。
座った後ろの村の中には死体が溢れるほど転がっているから、ティナは怖がり絶対に振り向かなかった。
「不死王様は昔から放浪癖がありまして、なんというか自由な方だったのです。その時も突然フラッと出ていかれまして、シグルド様のお母上と出会ったそうでして…その後は我が邸でよく逢い引きしていました。お子が産まれた時にはお母上が人間として育てると言われましてその時に不死王様とお母上はお別れを致しました。」
不死王様が居なくなった時は随分探したものです。と家出少年を探すように呆れた顔でヴィルヘルムは言った。
ヴィルヘルムの話で俺が人間と魔族のハーフだと始めて知った。
母上は死ぬまで何も言わなかったから。
「…俺が死んで生き返ったのは…?」
「一度死んだんですか?どうせ死んだのは、人間の心臓でしょう。シグルド様にも心臓が2つあったはずです。不死王様はシグルド様にご自分の力をお譲りするつもりで、術をかけていたそうですよ。」
ヴィルヘルムは、俺が人間として生きられなくなったら、魔族としての心臓が覚醒するようになっていたはずです。と定時連絡のように淡々と説明した。
人間として生きられなくなったら、とは色々な可能性があったのかも知れないが俺は人間として処刑されたのがきっかけだったのは間違いない。
「魔族の心臓が動き出した時が覚醒ですから、その時に不死王様は全ての力をシグルド様にいくように術をかけてました。だから不死王様は死にましたので俺の次の主はシグルド様です」
いきなり、父親も亡くなった事実をさらりと伝えられてしまった。
「不死なのに死ぬのか?」
「だから、不死王様の力を全てシグルド様に譲渡したのですからもう生きてませんね。崩れ落ちました」
この身体は父親のおかげだった。
母親が父親のことを何も言わなかったのもよくわかった。
魔族と密通していたということを人に知られるわけにはいかない。
魔族との密通にハーフの子供なんて母親だけでなく子供も迫害されたかも知れないからだ。
母親は俺を案じていたのだろう。
そして、この身体のおかげでショーンに復讐が出来る。
処刑される前なら魔族とのハーフを恨んだかも知れんが今は違う。
この不死身の身体に感謝すらしている気がしていた。
「…シグルド?どうしましたか?…大丈夫?」
ニヤリと口角を上げた俺に、横にくっついているティナが恐る恐る聞いて来た。
心配そうに見上げてくるティナの声で少し我を忘れそうだったものが戻って来た気がした。
復讐はするが今は村の後始末が先だと。
このまま、村人達を捨てて行ってはいけなかったと………忘れそうだったことをティナのおかげで思い出した。
死体の横は嫌だとティナが泣くので村の入り口に木を倒し椅子代わりにしてお互いに座っていた。
座った後ろの村の中には死体が溢れるほど転がっているから、ティナは怖がり絶対に振り向かなかった。
「不死王様は昔から放浪癖がありまして、なんというか自由な方だったのです。その時も突然フラッと出ていかれまして、シグルド様のお母上と出会ったそうでして…その後は我が邸でよく逢い引きしていました。お子が産まれた時にはお母上が人間として育てると言われましてその時に不死王様とお母上はお別れを致しました。」
不死王様が居なくなった時は随分探したものです。と家出少年を探すように呆れた顔でヴィルヘルムは言った。
ヴィルヘルムの話で俺が人間と魔族のハーフだと始めて知った。
母上は死ぬまで何も言わなかったから。
「…俺が死んで生き返ったのは…?」
「一度死んだんですか?どうせ死んだのは、人間の心臓でしょう。シグルド様にも心臓が2つあったはずです。不死王様はシグルド様にご自分の力をお譲りするつもりで、術をかけていたそうですよ。」
ヴィルヘルムは、俺が人間として生きられなくなったら、魔族としての心臓が覚醒するようになっていたはずです。と定時連絡のように淡々と説明した。
人間として生きられなくなったら、とは色々な可能性があったのかも知れないが俺は人間として処刑されたのがきっかけだったのは間違いない。
「魔族の心臓が動き出した時が覚醒ですから、その時に不死王様は全ての力をシグルド様にいくように術をかけてました。だから不死王様は死にましたので俺の次の主はシグルド様です」
いきなり、父親も亡くなった事実をさらりと伝えられてしまった。
「不死なのに死ぬのか?」
「だから、不死王様の力を全てシグルド様に譲渡したのですからもう生きてませんね。崩れ落ちました」
この身体は父親のおかげだった。
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母親は俺を案じていたのだろう。
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この不死身の身体に感謝すらしている気がしていた。
「…シグルド?どうしましたか?…大丈夫?」
ニヤリと口角を上げた俺に、横にくっついているティナが恐る恐る聞いて来た。
心配そうに見上げてくるティナの声で少し我を忘れそうだったものが戻って来た気がした。
復讐はするが今は村の後始末が先だと。
このまま、村人達を捨てて行ってはいけなかったと………忘れそうだったことをティナのおかげで思い出した。
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