断罪された勇者は舞い戻る。~聖女はどこに行った!?~

屋月 トム伽

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聖女は?

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心臓を貫かれたのに何故か俺は動いている。
胸を見ると段々貫かれたところがふさがり、心臓の音が聞こえる。

まるで不死身の身体を実感するようだった。

「…ハハッ…笑えるな…」

自分が何者かわからないが、このまま済ます気はない。
理性が以前よりなくなっている気がしてきた。



そして、エンディスの城につくと、隠れる気もなく堂々と正面から入ることにした。

門番は俺の姿に驚き怯え始めた。

「まさかっ…!?ゆ、勇者シグルド!?」
「しょ、処刑されたはずだ!?」

そして、怯える門番が持っている槍を向けられるが恐怖はない。
何故か死なないと確信がある。
今生きて動いているし。

ジリジリと近づくと、槍が身体をズブリと突き刺すが全く死なない。

「レティシアはどこだ?」

門番にそう一言聞いた。
槍に突き刺されたまま、恐怖の表情の門番の首を乱暴に掴み上げ壁に叩きつけると、殺されたくないのかあっさり口を割った。

「レ、レティシア様はっ…東の塔に…幽閉されてっ…」

何が忠実な臣下だ。
あっさり口を割るじゃないか。
バカバカしい。

自分の命惜しさにあっさり口を割る門番にそう思わずにはいられなかった。

そのままサクッと止めをさして、東の塔に向かうと、昼に比べて少ないが、深夜にも関わらず衛兵はいた。

しかし、衛兵ごとき敵ではない。

向かって来なければ多少は寿命が伸びただろうに、叫びながら向かって来る。

だが、斬られても死ぬことはない。
死なないからか、恐怖さえなくなっている気がしていた。

この身体は不死身なのか、斬られてもすぐに再生する。
おかしな身体だ。
まるで魔王のようだった。

屍を越えて、東の塔につくと見張りもいたが関係無い。
向かってきた衛兵と同じ末路だった。

もう衛兵もいない階段昇ると扉が一枚あった。

扉は鍵がかかっていた為に、右手を掲げ小さな爆発を魔法で起こし扉を壊すと、部屋の中には薄絹姿のレティシアがベッドの柱に両手を一纏めにして縛られていた。

「レティシア…大丈夫か?」

そう言いながらレティシアに近付くと、何だか雰囲気が違う。

「た、助けて下さい!勇者様!?」
「は?」

何の冗談なんだ。
レティシアは俺を勇者様なんて呼び方はしない。
いつもはシグルドと呼ぶ。

「レティシア…?頭でも打ったか?」
「打ってません!いいから、早くほどいて下さい!」

レティシアらしくない。
…レティシアではない気がしてきた。
姿形はレティシアで間違いないが、雰囲気というかなんか違う。
とりあえず危険は無さそうだから、ほどいてやると、急に叫ばれた。

「危ない!!」

一人の衛兵が後ろから忍び足で近づき俺を殺そうとしたらしい。

斬られても死なないから、そのまま返り討ちにして斬ってやった。

「血が…!?斬られましたよ!?」
「大丈夫だ。俺は死にはしない」

心配そうに、斬られた背中をシーツで止血しようとしていた。
だがレティシアならすぐに回復術を使うはずだと思った。

「お前…誰だ?」

レティシアもどきの彼女の腕を掴み、真正面から目を見据えて言った。

「…さすが勇者様です…大正解ですよ!私はレティシア様じゃありません!レティシア様は私と身体を入れ替えて逃げたのですよ!」

心臓を貫かれて俺は生きているし、レティシアは身体を入れ替えて逃げたと言う。

何がなんだかわからなくなってきた。


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