3 / 53
聖女は?
しおりを挟む
心臓を貫かれたのに何故か俺は動いている。
胸を見ると段々貫かれたところがふさがり、心臓の音が聞こえる。
まるで不死身の身体を実感するようだった。
「…ハハッ…笑えるな…」
自分が何者かわからないが、このまま済ます気はない。
理性が以前よりなくなっている気がしてきた。
そして、エンディスの城につくと、隠れる気もなく堂々と正面から入ることにした。
門番は俺の姿に驚き怯え始めた。
「まさかっ…!?ゆ、勇者シグルド!?」
「しょ、処刑されたはずだ!?」
そして、怯える門番が持っている槍を向けられるが恐怖はない。
何故か死なないと確信がある。
今生きて動いているし。
ジリジリと近づくと、槍が身体をズブリと突き刺すが全く死なない。
「レティシアはどこだ?」
門番にそう一言聞いた。
槍に突き刺されたまま、恐怖の表情の門番の首を乱暴に掴み上げ壁に叩きつけると、殺されたくないのかあっさり口を割った。
「レ、レティシア様はっ…東の塔に…幽閉されてっ…」
何が忠実な臣下だ。
あっさり口を割るじゃないか。
バカバカしい。
自分の命惜しさにあっさり口を割る門番にそう思わずにはいられなかった。
そのままサクッと止めをさして、東の塔に向かうと、昼に比べて少ないが、深夜にも関わらず衛兵はいた。
しかし、衛兵ごとき敵ではない。
向かって来なければ多少は寿命が伸びただろうに、叫びながら向かって来る。
だが、斬られても死ぬことはない。
死なないからか、恐怖さえなくなっている気がしていた。
この身体は不死身なのか、斬られてもすぐに再生する。
おかしな身体だ。
まるで魔王のようだった。
屍を越えて、東の塔につくと見張りもいたが関係無い。
向かってきた衛兵と同じ末路だった。
もう衛兵もいない階段昇ると扉が一枚あった。
扉は鍵がかかっていた為に、右手を掲げ小さな爆発を魔法で起こし扉を壊すと、部屋の中には薄絹姿のレティシアがベッドの柱に両手を一纏めにして縛られていた。
「レティシア…大丈夫か?」
そう言いながらレティシアに近付くと、何だか雰囲気が違う。
「た、助けて下さい!勇者様!?」
「は?」
何の冗談なんだ。
レティシアは俺を勇者様なんて呼び方はしない。
いつもはシグルドと呼ぶ。
「レティシア…?頭でも打ったか?」
「打ってません!いいから、早くほどいて下さい!」
レティシアらしくない。
…レティシアではない気がしてきた。
姿形はレティシアで間違いないが、雰囲気というかなんか違う。
とりあえず危険は無さそうだから、ほどいてやると、急に叫ばれた。
「危ない!!」
一人の衛兵が後ろから忍び足で近づき俺を殺そうとしたらしい。
斬られても死なないから、そのまま返り討ちにして斬ってやった。
「血が…!?斬られましたよ!?」
「大丈夫だ。俺は死にはしない」
心配そうに、斬られた背中をシーツで止血しようとしていた。
だがレティシアならすぐに回復術を使うはずだと思った。
「お前…誰だ?」
レティシアもどきの彼女の腕を掴み、真正面から目を見据えて言った。
「…さすが勇者様です…大正解ですよ!私はレティシア様じゃありません!レティシア様は私と身体を入れ替えて逃げたのですよ!」
心臓を貫かれて俺は生きているし、レティシアは身体を入れ替えて逃げたと言う。
何がなんだかわからなくなってきた。
胸を見ると段々貫かれたところがふさがり、心臓の音が聞こえる。
まるで不死身の身体を実感するようだった。
「…ハハッ…笑えるな…」
自分が何者かわからないが、このまま済ます気はない。
理性が以前よりなくなっている気がしてきた。
そして、エンディスの城につくと、隠れる気もなく堂々と正面から入ることにした。
門番は俺の姿に驚き怯え始めた。
「まさかっ…!?ゆ、勇者シグルド!?」
「しょ、処刑されたはずだ!?」
そして、怯える門番が持っている槍を向けられるが恐怖はない。
何故か死なないと確信がある。
今生きて動いているし。
ジリジリと近づくと、槍が身体をズブリと突き刺すが全く死なない。
「レティシアはどこだ?」
門番にそう一言聞いた。
槍に突き刺されたまま、恐怖の表情の門番の首を乱暴に掴み上げ壁に叩きつけると、殺されたくないのかあっさり口を割った。
「レ、レティシア様はっ…東の塔に…幽閉されてっ…」
何が忠実な臣下だ。
あっさり口を割るじゃないか。
バカバカしい。
自分の命惜しさにあっさり口を割る門番にそう思わずにはいられなかった。
そのままサクッと止めをさして、東の塔に向かうと、昼に比べて少ないが、深夜にも関わらず衛兵はいた。
しかし、衛兵ごとき敵ではない。
向かって来なければ多少は寿命が伸びただろうに、叫びながら向かって来る。
だが、斬られても死ぬことはない。
死なないからか、恐怖さえなくなっている気がしていた。
この身体は不死身なのか、斬られてもすぐに再生する。
おかしな身体だ。
まるで魔王のようだった。
屍を越えて、東の塔につくと見張りもいたが関係無い。
向かってきた衛兵と同じ末路だった。
もう衛兵もいない階段昇ると扉が一枚あった。
扉は鍵がかかっていた為に、右手を掲げ小さな爆発を魔法で起こし扉を壊すと、部屋の中には薄絹姿のレティシアがベッドの柱に両手を一纏めにして縛られていた。
「レティシア…大丈夫か?」
そう言いながらレティシアに近付くと、何だか雰囲気が違う。
「た、助けて下さい!勇者様!?」
「は?」
何の冗談なんだ。
レティシアは俺を勇者様なんて呼び方はしない。
いつもはシグルドと呼ぶ。
「レティシア…?頭でも打ったか?」
「打ってません!いいから、早くほどいて下さい!」
レティシアらしくない。
…レティシアではない気がしてきた。
姿形はレティシアで間違いないが、雰囲気というかなんか違う。
とりあえず危険は無さそうだから、ほどいてやると、急に叫ばれた。
「危ない!!」
一人の衛兵が後ろから忍び足で近づき俺を殺そうとしたらしい。
斬られても死なないから、そのまま返り討ちにして斬ってやった。
「血が…!?斬られましたよ!?」
「大丈夫だ。俺は死にはしない」
心配そうに、斬られた背中をシーツで止血しようとしていた。
だがレティシアならすぐに回復術を使うはずだと思った。
「お前…誰だ?」
レティシアもどきの彼女の腕を掴み、真正面から目を見据えて言った。
「…さすが勇者様です…大正解ですよ!私はレティシア様じゃありません!レティシア様は私と身体を入れ替えて逃げたのですよ!」
心臓を貫かれて俺は生きているし、レティシアは身体を入れ替えて逃げたと言う。
何がなんだかわからなくなってきた。
5
お気に入りに追加
367
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる