結婚したくなくて自分に眠りの魔法をかけたら幽体離脱してしまいました。

突然の婚約者

「結婚なんてしません！」

19歳の私は、そうお父様に言いました。

てゆうか、お父様は何を考えているの！
私に結婚の申し込みに来た、ユリウス様は魔導師団の将来有望株。
しかも、金髪碧眼の容姿端麗。

誰もが羨ましがる方だけど！
私は絶対イヤ！
だって、女たらしなんだもの！

しかも、私を選んだ理由は、私の魔力が高いから。

この国では、魔力の高い貴族の娘は引く手あまただ。
特に魔導師の家系では、魔力の高い相手を求めている。
ユリウス様の家系も代々魔導師の家系だけど。
女をとっかえひっかえする方は絶対無理！
大体、お父様ったら支度金いくら頂いたのよ！

まさか、支度金に目が眩んだんじゃないでしょうね！？

ベッドの枕をボスボスと殴り倒していると、ドアのノックの音がした。

コンコン。

「イーディス、ちょっといいか？」

お父様の声だわ。
考え直してくれたのかしら。
ハァーと呼吸を整え、ドアに向かった。

「お父様、私はですねっ…」

ドアを開けると、ビックリして、すぐにバンッと閉めた。

だって、お父様の後ろには、あの女たらしのユリウスがいたんだもの！

「こら！イーディス！開けなさい！」
「い、今取り込み中です！」
「たった今、ドアを開けたじゃないか！」
「乙女の部屋に男性は入れません！」
「婚約者が来ているのだぞ！」
「私に婚約者はいません！」

ドアを開けようとするお父様に抵抗し、必死でドアを抑えた。

ガチャガチャガチャガチャ！！

大きな音が、勢いを増し響きわたる。

その状態を、ユリウス様が止めた。

「今日は帰ります。イーディス嬢、明日はお会いして頂けますか？」

ドアごしで静かに話すユリウス様。
このドア一枚向こうに、婚約者となるユリウス様がいる。

フッ。
私は絶対騙されませんからね！
さっさと、帰ってよー！

「明日も、その明日もずっとお忙しいですわ！」
「また来ます。」

ユリウス様はそう言うと、お帰りになられたけど、私はしっかり見ました。
窓から帰る姿を見ると、馬車には、女性がいました。
婚約者に会いに来るのに女性と来るなんて失礼だわ！

一体何を考えているのかしら！
とにかく婚約はなかったことにして頂きたい！