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第二章
夫は早く帰るために頑張る
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陛下のいる書斎へ行くと、中にはアスラン殿下と王妃様もいた。
随分待たせたようだが、その間に陛下たちの話し合いは進んでいたようだった。
話し合いは、クレイグ殿下のこと。彼は、『殿下』でなくなり、アスラン殿下が王太子となることを近いうちに発表することが決まっていた。
陛下は、決断を変えないお人。それでも、王妃様は「せめて国外追放だけは……」と懇願しており、それに陛下は頭を悩ませているらしい。
アスラン殿下も国外追放は望んでいないのがわかる。
王族は普通の家族のように仲睦まじくとはいかないのはわかるが、親子の会話をこんなにすることはなかったのではないだろうか、とさえ思うほど三人でクレイグ殿下のことを話し合っているらしい。
せめて、クレイグ殿下が呪いをかける前に皆の気持ちがわかっていればいいが、人の気持なんか誰にもわからないことだ。先に結果などわからないのだから……。
誰も責められない。
だが、クレイグ殿下のしたことは許されることではなかった。
「陛下。クレイグ殿下の国外追放は少しお考えください。」
「何故だ? 何か考えでもあるのか?」
「クレイグ殿下の力は必要です。彼の魔法があれば後宮の破壊がいっそう進みます。どうぞクレイグ殿下の助力を頼みます」
「第二騎士団だけでは無理なのか? そんなはずはないだろう?」
「第二騎士団だけでも不可能ではありません。ですが、あれは呪いです。できるだけ早く破壊することが望ましいのです。そして、破壊には魔法が必須です」
早く壊せるならそれに越したことはない。
それに俺は一生に一度の問題に差し掛かっているんだ。
「父上。フィルベルドに賛成です。兄上の力を借りましょう。兄上の魔法は素晴らしいものです。それに、第二騎士団に協力するならなおのこと国外追放はしてはなりません。それでも国外追放にするなら、私が王位についた暁には一番最初にすることは兄上を連れ戻すことになりますよ」
「……もうよい! 好きにしろ。だが、クレイグの身分ははく奪だ」
アスラン殿下や王妃様の圧に負けたのか、多数決に負けたのか、疲れたように陛下は言った。
「では、クレイグを預かりとしてくれる貴族を探しましょう……私は、隣国ゼノンリード王国出身ですから、私の実家に預かってもらう事はできませんからね……」
王妃様が、陛下の言葉にホッとしたようにそう言うと、アスラン殿下も胸を撫でおろした。
「貴族なら、そこにおるだろ。クレイグの力を借りると言い出したのはフィルベルドだ。フィルベルドに任せればいい」
なんてことを言い出すんだ!
クレイグ殿下は絶対にディアナに好意を持っている。
そんなやつを側に置きたくない。絶対に嫌だ。
断固拒否する!!
ディアナのもとに早く帰ろうとすればするほど、クレイグ殿下がディアナに近づいてしまう気がする!
何故こんなことに!?
「陛下。私は、この任務が終われば休暇に入る予定です。そんな人間にクレイグ殿下を預けるのはいかがなものかと……」
「そうなのか?」
「陛下。大丈夫ですわ。フィルベルドの奥方は慈悲深い方です。それにあのクレイグと話ができる方ですよ。聡明な女性なのは間違いありません。塔から出てもクレイグはもう問題など起こしませんわ」
やめろ。とにかくやめろ。
ディアナを素晴らしい女性だと買ってくれるのは嬉しいが何か違う。
それは休暇にクレイグ殿下を一緒に連れて行けということか!?
陛下と王妃様では無かったら、止めを刺したくなる気がする。
この嫌そうな顔が見えんのか!?
「母上。フィルベルドは、奥方と二人で過ごさせてください。彼女は、6年もフィルベルドを健気に待っていたのです。フィルベルドがいなかったら、今の私はいませんでした。フィルベルド夫妻には労いが必要です。兄上の行き先はおいおい考えましょう。とりあえず、フィルベルドの希望通り、後宮破壊の手を借りましょう」
王妃様は残念だわ、とポツリと言う。
「そうだな……では、その働きによって国外追放はなし、ということにするか。無条件で国外追放を免除するわよりはいいだろう」
陛下の言う通りだ。いくら王族でも無条件で罪を免除はできない。
かと言って、あの呪いも公表できないから公には裁けない。
それに、あの曲者のクレイグ殿下のことだ。無条件で罰がなくなれば、プライドに触るだろう。
このような場合だけ贔屓して欲しいなど、あの男は思わない。
「では、クレイグ殿下をすぐにお借りします」
とにかくこの部屋を早く出なければ、クレイグ殿下の処遇に巻き込まれそうな気がしてくる。
そう思い、急いで部屋を後にして、クレイグ殿下の手を借りに行った。
随分待たせたようだが、その間に陛下たちの話し合いは進んでいたようだった。
話し合いは、クレイグ殿下のこと。彼は、『殿下』でなくなり、アスラン殿下が王太子となることを近いうちに発表することが決まっていた。
陛下は、決断を変えないお人。それでも、王妃様は「せめて国外追放だけは……」と懇願しており、それに陛下は頭を悩ませているらしい。
アスラン殿下も国外追放は望んでいないのがわかる。
王族は普通の家族のように仲睦まじくとはいかないのはわかるが、親子の会話をこんなにすることはなかったのではないだろうか、とさえ思うほど三人でクレイグ殿下のことを話し合っているらしい。
せめて、クレイグ殿下が呪いをかける前に皆の気持ちがわかっていればいいが、人の気持なんか誰にもわからないことだ。先に結果などわからないのだから……。
誰も責められない。
だが、クレイグ殿下のしたことは許されることではなかった。
「陛下。クレイグ殿下の国外追放は少しお考えください。」
「何故だ? 何か考えでもあるのか?」
「クレイグ殿下の力は必要です。彼の魔法があれば後宮の破壊がいっそう進みます。どうぞクレイグ殿下の助力を頼みます」
「第二騎士団だけでは無理なのか? そんなはずはないだろう?」
「第二騎士団だけでも不可能ではありません。ですが、あれは呪いです。できるだけ早く破壊することが望ましいのです。そして、破壊には魔法が必須です」
早く壊せるならそれに越したことはない。
それに俺は一生に一度の問題に差し掛かっているんだ。
「父上。フィルベルドに賛成です。兄上の力を借りましょう。兄上の魔法は素晴らしいものです。それに、第二騎士団に協力するならなおのこと国外追放はしてはなりません。それでも国外追放にするなら、私が王位についた暁には一番最初にすることは兄上を連れ戻すことになりますよ」
「……もうよい! 好きにしろ。だが、クレイグの身分ははく奪だ」
アスラン殿下や王妃様の圧に負けたのか、多数決に負けたのか、疲れたように陛下は言った。
「では、クレイグを預かりとしてくれる貴族を探しましょう……私は、隣国ゼノンリード王国出身ですから、私の実家に預かってもらう事はできませんからね……」
王妃様が、陛下の言葉にホッとしたようにそう言うと、アスラン殿下も胸を撫でおろした。
「貴族なら、そこにおるだろ。クレイグの力を借りると言い出したのはフィルベルドだ。フィルベルドに任せればいい」
なんてことを言い出すんだ!
クレイグ殿下は絶対にディアナに好意を持っている。
そんなやつを側に置きたくない。絶対に嫌だ。
断固拒否する!!
ディアナのもとに早く帰ろうとすればするほど、クレイグ殿下がディアナに近づいてしまう気がする!
何故こんなことに!?
「陛下。私は、この任務が終われば休暇に入る予定です。そんな人間にクレイグ殿下を預けるのはいかがなものかと……」
「そうなのか?」
「陛下。大丈夫ですわ。フィルベルドの奥方は慈悲深い方です。それにあのクレイグと話ができる方ですよ。聡明な女性なのは間違いありません。塔から出てもクレイグはもう問題など起こしませんわ」
やめろ。とにかくやめろ。
ディアナを素晴らしい女性だと買ってくれるのは嬉しいが何か違う。
それは休暇にクレイグ殿下を一緒に連れて行けということか!?
陛下と王妃様では無かったら、止めを刺したくなる気がする。
この嫌そうな顔が見えんのか!?
「母上。フィルベルドは、奥方と二人で過ごさせてください。彼女は、6年もフィルベルドを健気に待っていたのです。フィルベルドがいなかったら、今の私はいませんでした。フィルベルド夫妻には労いが必要です。兄上の行き先はおいおい考えましょう。とりあえず、フィルベルドの希望通り、後宮破壊の手を借りましょう」
王妃様は残念だわ、とポツリと言う。
「そうだな……では、その働きによって国外追放はなし、ということにするか。無条件で国外追放を免除するわよりはいいだろう」
陛下の言う通りだ。いくら王族でも無条件で罪を免除はできない。
かと言って、あの呪いも公表できないから公には裁けない。
それに、あの曲者のクレイグ殿下のことだ。無条件で罰がなくなれば、プライドに触るだろう。
このような場合だけ贔屓して欲しいなど、あの男は思わない。
「では、クレイグ殿下をすぐにお借りします」
とにかくこの部屋を早く出なければ、クレイグ殿下の処遇に巻き込まれそうな気がしてくる。
そう思い、急いで部屋を後にして、クレイグ殿下の手を借りに行った。
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