60 / 73
第二章
妻はお茶会へ行く
しおりを挟む
翌日から、クレイグ殿下の後宮はアスラン殿下に呪いをかけるための触媒に捧げたものだったために、フィルベルド様の主導のもと全て破壊されることになった。
クレイグ殿下が、フィルベルド様に捕らえられた時に言った『それは困るね。でも、もういらないかな……『真実の瞳』をフィルベルドが手に入れたから』この言葉も確信するきっかけとなっていたらしい。
クレイグ殿下は、『真実の瞳』が発見されて、フィルベルド様に捕らえられたから、もういらないと思ったのだ。
第二騎士団が調べに入ると、あちこちに魔法の仕掛けがしてあり、呪いを強める触媒としていたことは明白だったらしい。
フィルベルド様はそのせいでまだ休みが取れないままだった。
そして朝には、いつも通り仕事へと行く。お見送りに私も玄関に出ていた。
「フィルベルド様。……クレイグ殿下にお会いに行ってもいいですか?」
「……何故だ?」
「一人で寂しいと思うんです」
「会いに行って欲しくないんだが……」
フィルベルド様はそう言うけど、クレイグ殿下には話す相手が必要だと思う。
「でも、私では勝手にお会いできないんです」
城の塔に幽閉されているクレイグ殿下には、そう簡単に面会はできない。
でも、騎士団長のフィルベルド様なら、面会はできるはず。
片手で顔を覆いうつむき加減のフィルベルド様は、私がクレイグ殿下に会いに行きたいことが嫌らしい。
すると、鋭い眼で私を見て、思わずびくりと肩がすくんでしまった。
「な、何ですか?」
そう言うと、片腕で引き寄せられて唇をとられる。
まるで焼きもちを妬いているようにムスッとしているのがわかる。
「……行ってくる」
「はい……お気を付けて……」
コツンと額がくっつき目の前でそう言われ、フィルベルド様はお仕事に行かれた。
後ろを向くと、オスカーと目が合う。
「奥様。フィルベルド様は、心配されていたのですよ……今まで見たことないほど取り乱していましたから……」
ルトガー様も、フィルベルド様が狂っていたと言っていたし、また壊れていたんだろうか。
そう思うと、クレイグ殿下に会いに行きたいなどフィルベルド様にお願いするのは無神経だった気がする。
でも、他に頼れる人はいない。イクセルは伯爵家だけど、王族と付き合いがあるわけでは無いし……私から、アスラン殿下にお願いなどできない。
でも、無神経なことを言ってしまい、少し悪い気がしてきた。
「……フィルベルド様に差し入れでも持って行こうかしら?」
「はい。お喜びになります」
そのまま、厨房に行き、焼き菓子を作る。
一人暮らしだったから、簡単な焼き菓子くらいならすぐに作ることができ、もうすぐで焼きあがる頃に、城から使者が来た。
使者が持ってきた物は王妃様からのお茶会の招待状だった。
王妃様からの招待状なんて初めてで驚き、招待状を持つ手が震える。
「大変だわ! 準備しないと……!」
「ミリア! すぐに奥様の支度を! 品のある装いで!」
「は、はい!!」
オスカーは驚きながらも公爵家の副執事だったせいか、ミリアにテキパキと指示をする。
ミリアは、慌てふためき初めての王妃様からのお茶会の装いに戸惑っていた。
「ミリア。大丈夫よ。フィルベルド様がくださったお茶会用のドレスもあるから、それにしましょう。フィルベルド様が選んだものなら間違いないはず! 品のあるドレスだし……」
「は、はい! 髪型はどうしましょう?」
「あまり派手ではない髪型でお願いね。お茶会は、夜会と違って艶やかにしないようにするのよ。まだ、時間はあるから落ち着いてしましょう」
「かしこまりました!」
緊張しながらも、支度をすませて厨房に行くと、焼き菓子はすでに出来上がっている。
キッチンメイドたちが、それをいくつかに分けて紙袋に詰めてくれていた。
厨房の使用人たちにお礼を言うと、オスカーはすでに王妃様への手土産も準備しており、馬車の支度も滞りなく出来ている。
「オスカー。フィルベルド様のところにも寄るから馬車で待っていてくれる? ミリアはまだ慣れてないから、側にいてあげてね」
「かしこまりました」
王妃様のお茶会なんて緊張しかないけど、断るという選択はない。というかできない。
馬車の中でもドキドキしっぱなしで城に着くと、案内された先には王妃様が侍女たちと待っていた。
「アクスウィス夫人。よく来てくれたわ」
「ご招待ありがとうございます」
朗らかな笑顔で迎えてくれた王妃様は侍女たちを下げて、私に座るように促した。
「私も、クレイグやアスランのようにディアナと呼んでもいいかしら?」
「はい。もちろんです」
緊張しながら、そう返事をすると、王妃様は私に一つの箱を出してきた。
そして、お茶を入れていた王宮執事が箱を開けると、中には赤色に琥珀色、碧色に黄色にと宝石が入っている。
「ディアナ。ごめんなさい。私がふがないばかりに、クレイグがあなたに酷いことを……そして、アスランを助けてくれてありがとう。これは、あなたへの謝罪とお礼です。受け取ってちょうだい」
「王妃様……」
謝罪とお礼をするために、私をお茶に招待した王妃様。母親として、自分ができなかったことを申し訳ないと思っているのが伝わる。
「宝石は、王室御用達の宝飾店に持って行けば好きな宝飾品にしてくれるわ。ディアナの好きな宝石がなければ他にも贈るから、どうぞ遠慮なく言ってちょうだい」
遠慮なくと言われても、箱には四つも五つもあるのだから、ちょっと怖いくらいだ。
宝石をじっと見ても、これだけあれば平民の屋敷ぐらいおつりが来そうなくらい買えるんじゃないだろうかと思う。
いただくのが怖いけど、王妃様からの贈り物を断ることなんてできない。
「ありがとうございます」
緊張しながらもお礼を言うと、王妃様は目を細めて和らいだ笑顔を見せてくれた。
「……ディアナ。あなたに無礼なお願いとわかっているのだけど、どうしてもあなたにお願いがあるの」
「はい。私にできることなら……」
王妃様は伏目がちにそう言いい、話を続けた。
「どうかクレイグに会いに行って欲しいの……私が母親として不甲斐ないばかりに、私ではあの子の話し相手にすらなれない。監禁されたあなたにお頼みするのは間違っているとわかっているけど、どんな理由があれ、あなたはクレイグのために陛下を止めようとしてくれた。クレイグもあなたを見ていたから、もしかしたらディアナを気に入っているのかと……」
「お会いはしたいとは思っていました……でも、私たちに恋愛感情はありません。私とクレイグ殿下は似ていたのです。ただそれだけのことで……」
「えぇ、わかってます。あなたにはフィルベルドがいるものね」
王妃様は、後宮でのフィルベルド様の様子を思い出したようにフフッと笑った。
クレイグ殿下とは、お互いに好き合ってないとはわかっているようだ。
「でも、どうかお願いします。これは、王妃としてではなくて、クレイグの母親としてお願いします」
膝に手を置き、私に頭を下げる王妃様に胸がズキンとした。
本当なら、王妃様自身がクレイグ殿下を助けたかったのだろうと……。
そして、王妃様に頭を下げられるなんて恐ろしい。私は、一体どんな立場の人間なんだ、と慌てふためく。
「王妃様、どうか顔をあげて下さい! 私個人ではクレイグ殿下にお会いできなくて困っていたのです。王妃様の許可があればお会いできます。こちらこそありがとうございます。良ければお茶会のあとにクレイグ殿下の塔に伺ってもよろしいでしょうか?」
「えぇ、えぇ……もちろんよ……ありがとう。ディアナ……」
顔を上げた王妃様の眼の端には涙が浮かび、それをそっと拭っていた。
クレイグ殿下が、フィルベルド様に捕らえられた時に言った『それは困るね。でも、もういらないかな……『真実の瞳』をフィルベルドが手に入れたから』この言葉も確信するきっかけとなっていたらしい。
クレイグ殿下は、『真実の瞳』が発見されて、フィルベルド様に捕らえられたから、もういらないと思ったのだ。
第二騎士団が調べに入ると、あちこちに魔法の仕掛けがしてあり、呪いを強める触媒としていたことは明白だったらしい。
フィルベルド様はそのせいでまだ休みが取れないままだった。
そして朝には、いつも通り仕事へと行く。お見送りに私も玄関に出ていた。
「フィルベルド様。……クレイグ殿下にお会いに行ってもいいですか?」
「……何故だ?」
「一人で寂しいと思うんです」
「会いに行って欲しくないんだが……」
フィルベルド様はそう言うけど、クレイグ殿下には話す相手が必要だと思う。
「でも、私では勝手にお会いできないんです」
城の塔に幽閉されているクレイグ殿下には、そう簡単に面会はできない。
でも、騎士団長のフィルベルド様なら、面会はできるはず。
片手で顔を覆いうつむき加減のフィルベルド様は、私がクレイグ殿下に会いに行きたいことが嫌らしい。
すると、鋭い眼で私を見て、思わずびくりと肩がすくんでしまった。
「な、何ですか?」
そう言うと、片腕で引き寄せられて唇をとられる。
まるで焼きもちを妬いているようにムスッとしているのがわかる。
「……行ってくる」
「はい……お気を付けて……」
コツンと額がくっつき目の前でそう言われ、フィルベルド様はお仕事に行かれた。
後ろを向くと、オスカーと目が合う。
「奥様。フィルベルド様は、心配されていたのですよ……今まで見たことないほど取り乱していましたから……」
ルトガー様も、フィルベルド様が狂っていたと言っていたし、また壊れていたんだろうか。
そう思うと、クレイグ殿下に会いに行きたいなどフィルベルド様にお願いするのは無神経だった気がする。
でも、他に頼れる人はいない。イクセルは伯爵家だけど、王族と付き合いがあるわけでは無いし……私から、アスラン殿下にお願いなどできない。
でも、無神経なことを言ってしまい、少し悪い気がしてきた。
「……フィルベルド様に差し入れでも持って行こうかしら?」
「はい。お喜びになります」
そのまま、厨房に行き、焼き菓子を作る。
一人暮らしだったから、簡単な焼き菓子くらいならすぐに作ることができ、もうすぐで焼きあがる頃に、城から使者が来た。
使者が持ってきた物は王妃様からのお茶会の招待状だった。
王妃様からの招待状なんて初めてで驚き、招待状を持つ手が震える。
「大変だわ! 準備しないと……!」
「ミリア! すぐに奥様の支度を! 品のある装いで!」
「は、はい!!」
オスカーは驚きながらも公爵家の副執事だったせいか、ミリアにテキパキと指示をする。
ミリアは、慌てふためき初めての王妃様からのお茶会の装いに戸惑っていた。
「ミリア。大丈夫よ。フィルベルド様がくださったお茶会用のドレスもあるから、それにしましょう。フィルベルド様が選んだものなら間違いないはず! 品のあるドレスだし……」
「は、はい! 髪型はどうしましょう?」
「あまり派手ではない髪型でお願いね。お茶会は、夜会と違って艶やかにしないようにするのよ。まだ、時間はあるから落ち着いてしましょう」
「かしこまりました!」
緊張しながらも、支度をすませて厨房に行くと、焼き菓子はすでに出来上がっている。
キッチンメイドたちが、それをいくつかに分けて紙袋に詰めてくれていた。
厨房の使用人たちにお礼を言うと、オスカーはすでに王妃様への手土産も準備しており、馬車の支度も滞りなく出来ている。
「オスカー。フィルベルド様のところにも寄るから馬車で待っていてくれる? ミリアはまだ慣れてないから、側にいてあげてね」
「かしこまりました」
王妃様のお茶会なんて緊張しかないけど、断るという選択はない。というかできない。
馬車の中でもドキドキしっぱなしで城に着くと、案内された先には王妃様が侍女たちと待っていた。
「アクスウィス夫人。よく来てくれたわ」
「ご招待ありがとうございます」
朗らかな笑顔で迎えてくれた王妃様は侍女たちを下げて、私に座るように促した。
「私も、クレイグやアスランのようにディアナと呼んでもいいかしら?」
「はい。もちろんです」
緊張しながら、そう返事をすると、王妃様は私に一つの箱を出してきた。
そして、お茶を入れていた王宮執事が箱を開けると、中には赤色に琥珀色、碧色に黄色にと宝石が入っている。
「ディアナ。ごめんなさい。私がふがないばかりに、クレイグがあなたに酷いことを……そして、アスランを助けてくれてありがとう。これは、あなたへの謝罪とお礼です。受け取ってちょうだい」
「王妃様……」
謝罪とお礼をするために、私をお茶に招待した王妃様。母親として、自分ができなかったことを申し訳ないと思っているのが伝わる。
「宝石は、王室御用達の宝飾店に持って行けば好きな宝飾品にしてくれるわ。ディアナの好きな宝石がなければ他にも贈るから、どうぞ遠慮なく言ってちょうだい」
遠慮なくと言われても、箱には四つも五つもあるのだから、ちょっと怖いくらいだ。
宝石をじっと見ても、これだけあれば平民の屋敷ぐらいおつりが来そうなくらい買えるんじゃないだろうかと思う。
いただくのが怖いけど、王妃様からの贈り物を断ることなんてできない。
「ありがとうございます」
緊張しながらもお礼を言うと、王妃様は目を細めて和らいだ笑顔を見せてくれた。
「……ディアナ。あなたに無礼なお願いとわかっているのだけど、どうしてもあなたにお願いがあるの」
「はい。私にできることなら……」
王妃様は伏目がちにそう言いい、話を続けた。
「どうかクレイグに会いに行って欲しいの……私が母親として不甲斐ないばかりに、私ではあの子の話し相手にすらなれない。監禁されたあなたにお頼みするのは間違っているとわかっているけど、どんな理由があれ、あなたはクレイグのために陛下を止めようとしてくれた。クレイグもあなたを見ていたから、もしかしたらディアナを気に入っているのかと……」
「お会いはしたいとは思っていました……でも、私たちに恋愛感情はありません。私とクレイグ殿下は似ていたのです。ただそれだけのことで……」
「えぇ、わかってます。あなたにはフィルベルドがいるものね」
王妃様は、後宮でのフィルベルド様の様子を思い出したようにフフッと笑った。
クレイグ殿下とは、お互いに好き合ってないとはわかっているようだ。
「でも、どうかお願いします。これは、王妃としてではなくて、クレイグの母親としてお願いします」
膝に手を置き、私に頭を下げる王妃様に胸がズキンとした。
本当なら、王妃様自身がクレイグ殿下を助けたかったのだろうと……。
そして、王妃様に頭を下げられるなんて恐ろしい。私は、一体どんな立場の人間なんだ、と慌てふためく。
「王妃様、どうか顔をあげて下さい! 私個人ではクレイグ殿下にお会いできなくて困っていたのです。王妃様の許可があればお会いできます。こちらこそありがとうございます。良ければお茶会のあとにクレイグ殿下の塔に伺ってもよろしいでしょうか?」
「えぇ、えぇ……もちろんよ……ありがとう。ディアナ……」
顔を上げた王妃様の眼の端には涙が浮かび、それをそっと拭っていた。
42
お気に入りに追加
6,011
あなたにおすすめの小説
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
あなたの愛が正しいわ
来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~
夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。
一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。
「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
「あなたの好きなひとを盗るつもりなんてなかった。どうか許して」と親友に謝られたけど、その男性は私の好きなひとではありません。まあいっか。
石河 翠
恋愛
真面目が取り柄のハリエットには、同い年の従姉妹エミリーがいる。母親同士の仲が悪く、二人は何かにつけ比較されてきた。
ある日招待されたお茶会にて、ハリエットは突然エミリーから謝られる。なんとエミリーは、ハリエットの好きなひとを盗ってしまったのだという。エミリーの母親は、ハリエットを出し抜けてご機嫌の様子。
ところが、紹介された男性はハリエットの好きなひととは全くの別人。しかもエミリーは勘違いしているわけではないらしい。そこでハリエットは伯母の誤解を解かないまま、エミリーの結婚式への出席を希望し……。
母親の束縛から逃れて初恋を叶えるしたたかなヒロインと恋人を溺愛する腹黒ヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:23852097)をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる