白い結婚なので離縁を決意したら、夫との溺愛生活に突入していました。いつから夫の最愛の人なったのかわかりません!

屋月 トム伽

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第二章

予言

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このヴェレス国では、陛下もしくは王太子が騎士団のトップに立つことから、陛下になる人間は代々騎士になっていた。それは、殿下二人も例外ではなかった。
二人とも幼い頃から、騎士の訓練を積んでいたのだ。
王族だからと怠けることは許されず、上に立つ者として誰よりも励まなければならなかった。

そしてある日。
王妃主催の貴婦人たちのお茶会に余興で占い師を呼んだらしい。
そのお茶会が済んだ後で、その楽しそうにしていた様子に陛下たちが自分たちの休憩中のお茶の席に、その占い師をそのまま呼んだらしい。

その場には、陛下の他にお義父様であるアクスウィス公爵に筆頭公爵のエイマール公爵。他にも数人の高官に、アスラン殿下の友人であるフィルベルド様もお義父様と一緒に来ていて、その場で聞いていたらしい。
もちろんその場には、クレイグ殿下もいたという。

王妃様は、お茶会で楽しく過ごした後に、子供たちにも元気で過ごせるようにと思い、占い師にアスラン殿下たちも見てもらうことになんの反対もなかった。

「王妃様は、すくすく成長するとか、そんな予言を期待していたのに、あろうことか、占い師はアスラン殿下を見て、『将来は立派な騎士王になられる』と予言してしまったんだ。それは、将来クレイグ殿下ではなく、アスラン殿下が陛下になるということだと、その場にいた者が誰もがそう思ったのだ」

フィルベルド様がそう言うと、アスラン殿下が落ち込むように頭を抱えた。

「……母上は、ただ兄上を元気づけようとしていただけなんだ。その頃の兄上は魔物退治に同行して大怪我をおい、以前よりも腕の力が入らなくなっていたから……本当にただそれだけだったんだ。でも、私は子供心にそう大したことだとも思わず、兄上のことなどその時は考えなかったんだよ」

「アスラン殿下のせいではありません。陛下は、もともとクレイグ殿下よりも健康的で剣の才もあるアスラン殿下に目をかけていました。それでもクレイグ殿下は、自分も『殿下』として恥じない騎士になろうとしていたのに、運がなかったんですよ」
「……クレイグ殿下は、騎士になれなかった王子、と言っていました……」

騎士になれなかった王子。期待されなかった王子とクレイグ殿下はそう言っていた。
その時の様子を思い出すと切なくなる。

「……魔物退治に同行した時に不意打ちをくらい回復要員が一番先にやられてしまって……すぐに怪我を治せなかったせいで、腕の力を失ってしまったんだ。予定時間に帰って来ないから、すぐに応援を行かせたのに、クレイグ殿下が発見されたときには酷い怪我だったらしい」
「そんな……」

それでクレイグ殿下は、騎士の道を断たれたのだ。

「それでも、クレイグ殿下は、腕の力を補うように今度は魔法に力を入れていたんだが、陛下は、あの予言で確信を持ったようにクレイグ殿下に期待することは止めてアスラン殿下にだけ騎士になることを求めたんだ」

「兄上は魔法に努力していて、私はさすが兄上、と尊敬していたが父上はそうじゃなかった。父上は魔法が使えてもいいが、それでも、先陣を切るような勇猛果敢で誰もが認める騎士が好ましい、と思っていたんだよ。……私は、兄上に恨まれても当然なのだよ。兄上のことなど考えずに、将来は騎士王になろうとしていたのだから……」

実際にアスラン殿下には、その資質が間違いなくあった。
この燃えるような赤髪には、勇敢さを連想させるほどで、誰もが惹きつけられる。人はそれをカリスマ性が備わっているとさえ思うだろう。
その上、アスラン殿下はそれに見合うどころかそれ以上に才能があったのだ。
そして、クレイグ殿下には騎士の才能がなかったのだ。

陛下からクレイグ殿下に愛情を感じなかったのがわかった。陛下は、自分の子が騎士になれないことを恥じ、疎ましく思っていたのだ。

王妃様は、占い師を呼んだことを酷く後悔し、二度と占いに頼らなくなったそうだ。
クレイグ殿下の腕も治り、元気になれると期待していたのだろうに……。

クレイグ殿下は、王になることにこだわっているわけでは無い。そんな風には見えなかった。
ただ、ひたすらに努力して来たものが壊れて、何とかやり直そうとしても、もう自分の居場所がなかったのだ。
アスラン殿下に、全てを奪われた、と言っていた事もわかった。

そして、6年前に予言が成就するかどうか、アスラン殿下を暗殺しようとして試したのだ。
暗殺から逃れようとしても、呪いがどうなるか……。
あの予言が、間違っていればアスラン殿下が、騎士になれないか、もしくはそのまま死に至るか……でも、予言通りになると確信した。

呪いを解くために必要な『真実の瞳』が見つかったから。
予言を否定したくても、フィルベルド様は私を取り返しに来た。

クレイグ殿下は、もう変えられないと理解したのだ。






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