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第二章
夫と幼馴染
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廃墟に住み着いた魔物を一掃して、壊れた砦の地下を探した。
文献を調べて、昔にこの砦でゼノンリード王国と武器の取引きをしており、宝物庫があるとわかり来たが……宝物庫にはほとんど残されてなかった。
「……遺物もありませんね」
騎士の1人がそう言った。
「魔物を一掃できただけで良しとするか……」
「この廃墟の魔物がいなくなれば、近隣の村は安心しますから、無駄ではありませんでしたね」
実際に、廃墟に住み着いた魔物退治と、騎士団本部には、そう届けている。
「では、後始末に数人残して俺たちはすぐに帰城するぞ!」
探している遺物『真実の瞳』はいまだに見つからない。
遺物は、人がその身に取り入れてしまうこともある。
その遺物を一度体に取り入れてしまえば、魔力も必要なくその能力を使うことが出来るために特殊能力持ちだと呼ばれている。
だから、そういう能力や魔法を使う者も同時に探していた。
『真実の瞳』の能力なら、何でも見通せる能力のはずだから鑑定師を中心にそれらしい能力の持ち主も探しているが、それさえも見つからない。
どこにあるのか、誰かがすでに取り入れているのか……手がかりすらなかった。
唯一あった手がかりは、100年ほど前に隣国ゼノンリード王国で噂があったという眉唾もの。記録にさえ残されていないから、事実はわからなかったが微かな希望を求めゼノンリード王国でも探したが、現在では所在不明のままだった。
急ぎ馬を走らせて王都の街に帰り、第二騎士団に戻る前にディアナの待つ邸へと先に顔を出そうと向かっていると、一頭の馬が街道を物凄い勢いで走ってきている。
「……あれはなんだ?」
「さぁ……暴れ馬でしょうか? 危険なので止めますか?」
「そうだな……」
暴れ馬にしては、手綱を取られてないような様子に違和感があった。
「そこの馬! 止まりなさい!!」
騎士たちがその荒々しい馬の足を止めると、焦った様子の貴族らしい男が、邪魔をするな、と言いたげに手綱を引いた。
男は汗だくで、どこか苦痛表情だった。
そして、鬼気迫る様子で叫んだ。
「第二騎士団に緊急の要件があります! どうぞお通しください!!」
「第二騎士団は、我々だ」
騎士の1人がそう答える。
「で、では、フィルベルド様は!? 第二騎士団長のフィルベルド・アクスウィス様はどちらに! すぐに取り次いでもらいたい!!」
「フィルベルドは俺だ。何用か?」
男の前に馬を寄せると、ほんの数秒だが姿を確認するように見られている。
「ディアナの言っていた金髪碧眼……」
男はそう呟くと、ハァッ……と息を吐くと同時に苦痛表情が緩んだ。
「ディアナを知っているのか? 貴殿は?」
「失礼いたしました! 火急のため馬から失礼します! 私は、イクセル・リンディスです!」
「君がイクセル殿か。先日はディアナにケーキを持って来てくれたと聞いている。幼馴染だそうだな」
「先日? いえ、一緒にお茶をしたのは今日です。リンディス伯爵家にディアナが来て……」
「今日?」
先日、うちに来てケーキを食べていたとオスカーから聞いたのは何だったんだ?
「そのディアナが大変なんです!!」
「ディアナに何かあったのか!?」
「連れて行かれました! クレイグ殿下がリンディス伯爵家まで来てディアナを後宮に連れて行ったのです!!」
「……っ!! クレイグ殿下!? 何故クレイグ殿下が!?」
クレイグ殿下がいつディアナと接触したんだ!?
困惑すると同時に胸が締め付けられるようにざわついた。
「……っ……!」
「怪我をしているのか?」
「クレイグ殿下に魔法で……」
「イクセル殿の回復を! そのまま騎士団に連れて行け!」
馬上で胸を鷲掴みにして痛みに耐えているイクセルを回復魔法の使える騎士に任せて馬の方向を変える。
「他の者は、ついて来い!! クレイグ殿下の後宮へ行く!!」
「「「ハッ!!」」」
一体なぜディアナを連れて行ったのかわからない。
あの男のお手付きになっていたのはディアナの親戚のナティだったはずだ。
いや、もうそんなことはどうでもいい。
ディアナに手を出すことは許せるものではなかった。
街道に粉塵が上がるほど馬を走らせて、クレイグ殿下の後宮へとわき目も降らずに向かっていた。
文献を調べて、昔にこの砦でゼノンリード王国と武器の取引きをしており、宝物庫があるとわかり来たが……宝物庫にはほとんど残されてなかった。
「……遺物もありませんね」
騎士の1人がそう言った。
「魔物を一掃できただけで良しとするか……」
「この廃墟の魔物がいなくなれば、近隣の村は安心しますから、無駄ではありませんでしたね」
実際に、廃墟に住み着いた魔物退治と、騎士団本部には、そう届けている。
「では、後始末に数人残して俺たちはすぐに帰城するぞ!」
探している遺物『真実の瞳』はいまだに見つからない。
遺物は、人がその身に取り入れてしまうこともある。
その遺物を一度体に取り入れてしまえば、魔力も必要なくその能力を使うことが出来るために特殊能力持ちだと呼ばれている。
だから、そういう能力や魔法を使う者も同時に探していた。
『真実の瞳』の能力なら、何でも見通せる能力のはずだから鑑定師を中心にそれらしい能力の持ち主も探しているが、それさえも見つからない。
どこにあるのか、誰かがすでに取り入れているのか……手がかりすらなかった。
唯一あった手がかりは、100年ほど前に隣国ゼノンリード王国で噂があったという眉唾もの。記録にさえ残されていないから、事実はわからなかったが微かな希望を求めゼノンリード王国でも探したが、現在では所在不明のままだった。
急ぎ馬を走らせて王都の街に帰り、第二騎士団に戻る前にディアナの待つ邸へと先に顔を出そうと向かっていると、一頭の馬が街道を物凄い勢いで走ってきている。
「……あれはなんだ?」
「さぁ……暴れ馬でしょうか? 危険なので止めますか?」
「そうだな……」
暴れ馬にしては、手綱を取られてないような様子に違和感があった。
「そこの馬! 止まりなさい!!」
騎士たちがその荒々しい馬の足を止めると、焦った様子の貴族らしい男が、邪魔をするな、と言いたげに手綱を引いた。
男は汗だくで、どこか苦痛表情だった。
そして、鬼気迫る様子で叫んだ。
「第二騎士団に緊急の要件があります! どうぞお通しください!!」
「第二騎士団は、我々だ」
騎士の1人がそう答える。
「で、では、フィルベルド様は!? 第二騎士団長のフィルベルド・アクスウィス様はどちらに! すぐに取り次いでもらいたい!!」
「フィルベルドは俺だ。何用か?」
男の前に馬を寄せると、ほんの数秒だが姿を確認するように見られている。
「ディアナの言っていた金髪碧眼……」
男はそう呟くと、ハァッ……と息を吐くと同時に苦痛表情が緩んだ。
「ディアナを知っているのか? 貴殿は?」
「失礼いたしました! 火急のため馬から失礼します! 私は、イクセル・リンディスです!」
「君がイクセル殿か。先日はディアナにケーキを持って来てくれたと聞いている。幼馴染だそうだな」
「先日? いえ、一緒にお茶をしたのは今日です。リンディス伯爵家にディアナが来て……」
「今日?」
先日、うちに来てケーキを食べていたとオスカーから聞いたのは何だったんだ?
「そのディアナが大変なんです!!」
「ディアナに何かあったのか!?」
「連れて行かれました! クレイグ殿下がリンディス伯爵家まで来てディアナを後宮に連れて行ったのです!!」
「……っ!! クレイグ殿下!? 何故クレイグ殿下が!?」
クレイグ殿下がいつディアナと接触したんだ!?
困惑すると同時に胸が締め付けられるようにざわついた。
「……っ……!」
「怪我をしているのか?」
「クレイグ殿下に魔法で……」
「イクセル殿の回復を! そのまま騎士団に連れて行け!」
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「他の者は、ついて来い!! クレイグ殿下の後宮へ行く!!」
「「「ハッ!!」」」
一体なぜディアナを連れて行ったのかわからない。
あの男のお手付きになっていたのはディアナの親戚のナティだったはずだ。
いや、もうそんなことはどうでもいい。
ディアナに手を出すことは許せるものではなかった。
街道に粉塵が上がるほど馬を走らせて、クレイグ殿下の後宮へとわき目も降らずに向かっていた。
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