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しおりを挟む__結婚式。
産まれた時から決められている婚約者ライアス・ノルディス公爵様との結婚。
毎回繰り返されたループで身につけた同じウェディングドレスは、何度でも美しい。
今までと違うのは、白いブーケの中にライアス様の希望で私があげたスズランを一輪追加したこと。
「お嬢様からのスズランが、よほど嬉しかったのでしょう」
「スノウ……白々しいわ」
すべてライアス様に話した。ライアス様を亡き者にするために私の毒に侵された身体のことも、何度もループを繰り返していることも……それを聞いたうえで、ライアス様は結婚してくれと言った。
「お嬢様。良かったではないですか」
スノウがにこりとして言う。それをうるさいという目つきで照れを隠して睨んだ。
でも、ふと一抹の不安がよぎる。
また死ねば、ループが起こるかもしれない。そうすれば、今のライアス様はいないかもしれない。結婚もこの先のことも賭けのように思える。
「賭けは好きじゃないのよね……」
ぽつりと呟いた。
「何か言いました?」
「いいえ。なんでもないわ」
「そうですか。では、行きましょうか」
スノウが控え室の扉を開けて、その先に進んだ。
お父様は、ライアス様が呼んだ竜騎士団に捕縛されて、すでに牢屋の中にいる。いても、私に触れることなどないから、父親と一緒にバージンロードを歩くことはなかっただろう。
でも、進んだ先で待っているライアス様は、私に手を伸ばしてくれる。
その手を取ることができずに、そっと静かにライアス様の隣に立った。
そして、結婚式が始まる。
「病める時も健やかなるときも……」
神父様が結婚の誓約を告げる。参列者のほとんどいない結婚式で結婚を誓い、ベールがあげられる。これで私はライアス様の妻になれる。
「夢のようだ……やっと、ループが終わって君がいる」
「まだ、身体の毒が解毒されていませんけどね……」
「感動しているから、水を差さないでくれないか」
そう言って、思わず笑みが零れると、ライアス様の額がコツンと当たった。
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