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深夜のスズラン畑は、私が改良したせいで、淡く光り輝いていた。
光りを放つようにはしてなかったけど、なぜか光りを放っているスズランは夜に映えて美しい。
「綺麗だ……」
「魔法薬を使って、幾世代も成長を早めました」
本当なら、改良するのに何年もかかるけど、私にはそれさえも待つ時間はなかった。
「綺麗なのは、ローズだ。スズランの光が君を美しく引き立てている」
「そんなことを言う人はいません……私は、お父様にも愛されませんでした。ただの道具です。母もお父様に嫌われたくなくて、私への所業を止めませんでした」
「辛かっただろう……」
「お父様は、ライアス様を亡き者にしないと現れません。だから、私が呼んでも結婚式まで姿を見せないでしょう」
私の呼び出しなど、受けるわけもない。お父様が姿を現すのは自分の都合だけだ。
「君の父親だから、悪く言わないでおこうと思ったが……少々お灸をすえてやろう」
「……いいのですか? ライアス様が死んでしまいますよ」
「ローズ。君が好きだ。君のためならなんでもしよう」
スズランが足元に光る中で、ライアス様が私を愛おしそうに抱きしめる。
人の温もりは、ライアス様だけが私に教えてくれる。
「ローズ。一緒に死のう」
「はい……」
すぐにスノウがお父様を連れてここにやって来るだろう。
迷っている暇も止める時間ももうない。
ライアス様だけを殺しても、残った私もお父様に殺される。
だから、一緒に死のうとライアス様が私を腕の中に隠したままで言う。
ライアス様の逞しい胸板に押しつぶされそうな腕の中で、そっと彼を見上げれば、私だけを見つめている意志の強い瞳と視線が交わる。
そして、薬屋から持っていたガラスの薬瓶を開けてスズランを一粒入れて飲むと、ライアス様が私に口付けをする。
私と口付けをするということは毒を飲むことそのものだ。でも、ライアス様に迷いはなくて……。
ガラスの薬瓶は、音もなくスズランの上に落ちた。
何度もループで経験した結婚式での誓いのキスと違う。通じ合ったキスに唇から身体を震わせた。
「君が好きだよ。二度と一人にはさせない」
「はい……今度こそは……」
もしかしたら、またループが起こるかもしれない。でも、違うかもしれない。
私とライアス様のループが交差したことないし、結婚式前日にキスを交わしたことなどない。
そして、私とのキスでライアス様が苦痛に襲われて、私も自分の飲んだ薬で苦痛に襲われた。
それでも、握られた手は離せなくて、ライアス様に寄り添い、そのまま二人で倒れた。
光りを放つようにはしてなかったけど、なぜか光りを放っているスズランは夜に映えて美しい。
「綺麗だ……」
「魔法薬を使って、幾世代も成長を早めました」
本当なら、改良するのに何年もかかるけど、私にはそれさえも待つ時間はなかった。
「綺麗なのは、ローズだ。スズランの光が君を美しく引き立てている」
「そんなことを言う人はいません……私は、お父様にも愛されませんでした。ただの道具です。母もお父様に嫌われたくなくて、私への所業を止めませんでした」
「辛かっただろう……」
「お父様は、ライアス様を亡き者にしないと現れません。だから、私が呼んでも結婚式まで姿を見せないでしょう」
私の呼び出しなど、受けるわけもない。お父様が姿を現すのは自分の都合だけだ。
「君の父親だから、悪く言わないでおこうと思ったが……少々お灸をすえてやろう」
「……いいのですか? ライアス様が死んでしまいますよ」
「ローズ。君が好きだ。君のためならなんでもしよう」
スズランが足元に光る中で、ライアス様が私を愛おしそうに抱きしめる。
人の温もりは、ライアス様だけが私に教えてくれる。
「ローズ。一緒に死のう」
「はい……」
すぐにスノウがお父様を連れてここにやって来るだろう。
迷っている暇も止める時間ももうない。
ライアス様だけを殺しても、残った私もお父様に殺される。
だから、一緒に死のうとライアス様が私を腕の中に隠したままで言う。
ライアス様の逞しい胸板に押しつぶされそうな腕の中で、そっと彼を見上げれば、私だけを見つめている意志の強い瞳と視線が交わる。
そして、薬屋から持っていたガラスの薬瓶を開けてスズランを一粒入れて飲むと、ライアス様が私に口付けをする。
私と口付けをするということは毒を飲むことそのものだ。でも、ライアス様に迷いはなくて……。
ガラスの薬瓶は、音もなくスズランの上に落ちた。
何度もループで経験した結婚式での誓いのキスと違う。通じ合ったキスに唇から身体を震わせた。
「君が好きだよ。二度と一人にはさせない」
「はい……今度こそは……」
もしかしたら、またループが起こるかもしれない。でも、違うかもしれない。
私とライアス様のループが交差したことないし、結婚式前日にキスを交わしたことなどない。
そして、私とのキスでライアス様が苦痛に襲われて、私も自分の飲んだ薬で苦痛に襲われた。
それでも、握られた手は離せなくて、ライアス様に寄り添い、そのまま二人で倒れた。
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