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「ライアス様ぁーー! 探しましたわ!」
「オリビア!?」
ライアス様に突撃してきたせいで、私まで軽く衝撃を感じる。
ライアス様が後ろにしがみついているオリビアさんを見下ろすと、彼女はきらきらと目を輝かしている。
というか、ライアス様こそ一人で来てなかった。
「……待って頂戴」
「どうしました?」
「私も一緒に帰るわ」
「そうですか。俺はどちらでも構いませんけど」
そう言って、スノウが足を止めて持っていたシャンパンを取り上げて飲んだ。
「ちょっと待て! 帰すのはその男だけだ!」
「ライアス様には、オリビアさんがいるではありませんか。私は察して下がります」
大体このオリビアさんも危険なのだ。
二度目のループでは、私と一緒にいるところを見られてお父様に暗殺されかけていた。
私と一緒にいるところを見られても不味いのだ。あの時は、ライアス様が一生懸命に親戚のオリビアさんを心配して探していた。
今もライアス様を見つめているオリビアさんは、私と違って可愛い。
悪い娘ではない。二度目ループの時は、街で会った私にお菓子もご馳走してくれたし……別にお菓子につられていい娘だといっているわけではないのですけどね。
「察しているなら、俺といてくれ。大体どうしてオリビアがここにいるんだ?」
「付いて来ました。珍しく夜会に行ったとお聞きしましたので」
「付いて来なくていい。俺には連れがいるんだ」
「でも、そちらの方は今すぐにでも帰りたそうですけど?」
そう言って、オリビアさんが私を可愛いらしい大きな瞳で見る。
「気のせいだ」
「気のせいではありませんよ。ライアス様。私にも都合というものがあるのですから」
「ローズ。約束を破る気か? そういうつもりなら俺にも考えがある」
「何ですか?」
「今すぐに邸に連れ帰って、閉じ込める」
「ライアス様……ろくなこと考えてませんね。それは監禁です!」
「それくらい心配なんだ。君は目が離せない」
「毎日来ないでくださいと言っていることをお忘れですか?」
「追い出されたことはない。これからも通うつもりだ」
どうしよう。まったく話が通じてない気がする。こんなにおかしな方だったとは……。
私たちのやり取りを目の当たりにして、オリビアさんは頬を膨らませている。
「……ライアス様が毎日通うなんて信じられませんわ。もうすぐで結婚しますのに……! その婚約者も未だに姿一つ現さなくて非常識ですけどね! さすが、あのベラルド男爵家の令嬢ですわ!」
公爵位に執着した我が家はノルディス公爵家の一門からは爪弾きにされている。
非常識だというオリビアさんの言っていることはごもっともだ。
「オリビア。やめろ」
「どうしてですか……ライアス様は、婚約も破棄なさらないですし……」
冷たい物言いで止められたオリビアさんは、余計に怒ってしまい、私の持っていたシャンパングラスを一瞬で取り上げて飲もうとした。
それに、背筋が凍る。
「ダ、ダメっ!! オリビアさん飲まないで……!!」
「オリビアっ!?」
先ほど、私が口をつけてしまった。そんなグラスで飲むなど……っ。
私が止めるよりも先に、グラスがライアス様の手で叩き落された。割れたグラスが音を立てて足元に散乱する。
「オリビア!?」
ライアス様に突撃してきたせいで、私まで軽く衝撃を感じる。
ライアス様が後ろにしがみついているオリビアさんを見下ろすと、彼女はきらきらと目を輝かしている。
というか、ライアス様こそ一人で来てなかった。
「……待って頂戴」
「どうしました?」
「私も一緒に帰るわ」
「そうですか。俺はどちらでも構いませんけど」
そう言って、スノウが足を止めて持っていたシャンパンを取り上げて飲んだ。
「ちょっと待て! 帰すのはその男だけだ!」
「ライアス様には、オリビアさんがいるではありませんか。私は察して下がります」
大体このオリビアさんも危険なのだ。
二度目のループでは、私と一緒にいるところを見られてお父様に暗殺されかけていた。
私と一緒にいるところを見られても不味いのだ。あの時は、ライアス様が一生懸命に親戚のオリビアさんを心配して探していた。
今もライアス様を見つめているオリビアさんは、私と違って可愛い。
悪い娘ではない。二度目ループの時は、街で会った私にお菓子もご馳走してくれたし……別にお菓子につられていい娘だといっているわけではないのですけどね。
「察しているなら、俺といてくれ。大体どうしてオリビアがここにいるんだ?」
「付いて来ました。珍しく夜会に行ったとお聞きしましたので」
「付いて来なくていい。俺には連れがいるんだ」
「でも、そちらの方は今すぐにでも帰りたそうですけど?」
そう言って、オリビアさんが私を可愛いらしい大きな瞳で見る。
「気のせいだ」
「気のせいではありませんよ。ライアス様。私にも都合というものがあるのですから」
「ローズ。約束を破る気か? そういうつもりなら俺にも考えがある」
「何ですか?」
「今すぐに邸に連れ帰って、閉じ込める」
「ライアス様……ろくなこと考えてませんね。それは監禁です!」
「それくらい心配なんだ。君は目が離せない」
「毎日来ないでくださいと言っていることをお忘れですか?」
「追い出されたことはない。これからも通うつもりだ」
どうしよう。まったく話が通じてない気がする。こんなにおかしな方だったとは……。
私たちのやり取りを目の当たりにして、オリビアさんは頬を膨らませている。
「……ライアス様が毎日通うなんて信じられませんわ。もうすぐで結婚しますのに……! その婚約者も未だに姿一つ現さなくて非常識ですけどね! さすが、あのベラルド男爵家の令嬢ですわ!」
公爵位に執着した我が家はノルディス公爵家の一門からは爪弾きにされている。
非常識だというオリビアさんの言っていることはごもっともだ。
「オリビア。やめろ」
「どうしてですか……ライアス様は、婚約も破棄なさらないですし……」
冷たい物言いで止められたオリビアさんは、余計に怒ってしまい、私の持っていたシャンパングラスを一瞬で取り上げて飲もうとした。
それに、背筋が凍る。
「ダ、ダメっ!! オリビアさん飲まないで……!!」
「オリビアっ!?」
先ほど、私が口をつけてしまった。そんなグラスで飲むなど……っ。
私が止めるよりも先に、グラスがライアス様の手で叩き落された。割れたグラスが音を立てて足元に散乱する。
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