毒はお好きですか? 浸毒の令嬢と公爵様の結婚まで

屋月 トム伽

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「は? 夜会……?」

「そうだ? 友人に呼ばれているんだが……行かないか?」



この人はいったい何を考えているんでしょう。結婚式まであと二日ですよ。

結婚式前にうろうろしてどうするのでしょうか。しかも、何度も思いますけど、あなたが誘って口説いているのは、まだ見ぬ婚約者である私です。



「お断りです。私はドレスを持ってませんので……」

「それなら、心配いらない。ローズのドレスは俺が準備しよう」

「……」



呆れて眉根を寄せた。いったい何を考えているのか……。



「スズランの礼がしたいんだ」

「では、お金をください」

「金が欲しいなら、いくらでも準備するが……ローズに何かをしたい」



いつもの通りライアス様は薬屋のカウンターに座っている。そのテーブルには彼がスズランの礼だと言って持って来たバラがあるのに……。



「バラはローズのために持ってきたものだ。礼でもあるが……足りなくないか?」



バラをじっと見た意図を感づいたようにライアス様が言う。



「薬作りで忙しいので……」

「明日には出来ると言っただろう?」

「お誘いを受けるまで帰らない気ですか?」

「そうしようと思っている」



しつこいにもほどがある。



「わかりました」

「来てくれるのか?」



嬉しそうにするライアス様をしつこいと思いながら、ジッと睨んだ。



「でも、条件があります」

「ああ。何でも叶える。ローズの望む通りに……」

「良かったですわ。では、私を見つけられたらご一緒しますね」

「は?」

「ですから、夜会には行きます。でも、ご一緒には行きませんので、夜会で私を見つけてください」

「夜会で君を探せと?」

「そう言ったつもりです。私を好きなら見つけられますよね」

「当然だ」



私の出した条件に驚いたくせに自信満々で言うライアス様はやっと腰を上げた。



「では、ドレスは一緒に選びにいけないな……仕方ない。街のオートクチュールに伝えておくから、好きなドレスを選んで夜会に来てくれ」

「お値段は?」

「ローズのためのドレスを渋る男に見えるか?」



どれほど私を見つける自信があるのか……でも、この人は私を斬った男だ。

そんな人が私を見つけられるわけがない。



「……もういいです。では、ごきげんよう」

「そうする。では、明日のデートを楽しみにしてる」



デートではありません。私を見つけられたら……です。








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