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第3章 帰還編

魅了3

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「呪いのお茶はそのために……?」
「そうよ! 一度交われば魅了が終わるから、交わらないと解けない呪いをかけたのに、いつまでも交わらないどころか、あなたは逃げるし! その気にさせるために何度か魅了の薬も少しずつ飲ませていたのに……!」

時々甘い匂いがしていたのはそのせいだったのね……。
いまさらながら、結構危ないぐらいアーサー様に狙われていたとわかると背筋がぶるっと震えた。
旦那様に吹き飛ばされていたアーサー様をみると、怒っているのか、苦々しい顔で膝を立てて、キャシー様に嫌悪を表している。
魅了の薬は薄れていっても、自然に解けるまで時間はかかる。その他は普通の状態だったから誰にもアーサー様が魅了にかかっていることに気付かなかったのだろう。

しかも、キャシー様が言うことが本当なら、量は少量だった。
少量であんなに効くものかと思うが、いまさら確認は出来ない。
ロウさんがキャシー様が薬を作っていた部屋は、全て排除したと言ったからもうないのだ。

そして、キャシー様は解けるまで待てずに私を差し出すことで終わらせようとしたのだ。
それに、今は陛下のこともあり側近たちはアーサー様に何も言えなかったのかもしれない。私がいた妾部屋に来ていた使用人たちは、私に落ち込んでいたアーサー様をお慰めして欲しかったのかもしれない。

「リーファ様が逃げて、行方が分からなくなったから、強引に魅了を解こうとしましたか?」

ロウさんが、確認するようにそう聞いた。

「……解くのに時間がかかったわ! なにを飲ませてもアーサー様はリーファのことばかり……! ヘルハウスに嫁いだ時も、魅了がこれで自然に解けるのを待つつもりだったのに、その間もリーファのことばかり探して……! やっと今度こそ解けたかと思ったら、またリーファが目を合わせるし!」

本当に魅了の薬のせいだけなのだろうか、と不思議なほどアーサー様は私のことばかり気にしていた。
そして、私たちがここに来なければ、アーサー様はキャシー様の魅了にかかっていたのだろう。
でも、もうキャシー様は終わりだ。
王族に薬を盛るなんて許されることではない。
ロウさんは陛下に仕えていたといったから、言い逃れも出来ないし、旦那様は公爵様だから発言力はある。直々に仕事を頼まれるぐらいだから、陛下にも信用されているのは間違いない。
それに、ニール殿下を呼び捨てにするくらいだし、きっと以前から友人だったと思う。

「ガイウス様、このへんでキャシー嬢は引き渡しますよ。アーサー様も何か言いたいこともありますでしょうが、抑えてください。今は陛下が先です。アーサー様も一緒にきていただけますね?」
「……父上を必ず助けてくれるなら行こう……しかし、前みたいに母上に情けをかけるなら……」

アーサー様は薬を盛られているせいか、私を見据えながらそう言った。
薬を必死で抑えているのか、胸を抑えどうにもならない苦しい気持ちを抑えているようにみえる。
 それとも、私への想いが薬のせいだと知り、薬に抗おうと抵抗しているのだろうか。
アーサー様は、やっぱり悲しい人だ……。

「必ず王妃様を送ります」

旦那様にそう言われて、私たちは陛下の部屋へと移動した。
旦那様は、本当は私を連れて行きたくなかっただろうけど、決して私を離すことはなかった。






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