上 下
12 / 69
第一章 ヘルハウス編

脅かされてお花を摘むところでした

しおりを挟む
邸の中も真っ暗だった…。邸の中は何故だか白いものが漂っている。
あのボヤリと白いものは何でしょうか?
そして、視線を感じます!

視線を感じる方を見ると、廊下の角からカリカリと壁を掻きながら髪の結わえた貴族風の女性が覗くように睨んでいる!

「キャアァ!?」
「今度はなんだ?」

旦那様の掴んでいたマントを引っ張り叫んでしまった。

「旦那様!ああ、あ、あちらに女性が!?」
「女性?」

旦那様が、振り向くとお化けの女性が、勢い良く飛んできた。

『ガイウス!私というものがありながら、女を連れ込むなんて浮気ですわ!』

今度のお化けは、ハッキリと喋った。
しかも、浮気とは!?

「すみません!旦那様の恋人でしたか!?」
「………」

旦那様は私にマントを引っ張られたまま嫌そうに見下ろした。

「…恋人ではない。こいつはお化けだぞ」
「違いますか?」
『ひどいわ!ガイウス!私を捨てるなんて!』

そして、女性のお化けはまたキッと私を睨み付け脅かしてきた。

『出ーてーけー!?』
「キャアァ!?」

怖い!甲冑様よりも怖いですよ!

「ジュリア、止めんか。リーファは俺と結婚したんだ。妻を脅かすな」
『妻ー!?』

そして、また私を睨む。その表情にビクッとしてしまい、旦那様の後ろに隠れた。

『ガイウスのバカー!女ったらしー!!』

ジュリアと呼ばれた女性のお化けは、喚きながらどこかへ飛んでいってしまった。

「大丈夫か?」

旦那様は、やはり顔色一つ変えずに聞いてきた。

「…もうすぐで、ここでお花を摘むところでした…」
「………」

旦那様がいなかったら、危うくここで粗相しそうでした。怖いです。
震えが止まりません。

「ジュリア様は旦那様がお好きなのですね」
「ジュリアはただの男好きだ。何十年も前に痴情のもつれで殺されたらしいぞ」
「…ハ、ハイレベルですね…」

気がつけば、ロウさんはもういなくて旦那様がサロンでパンを食べようと言って来たけど、お化けの連続で足はすくんでいる。
それに気付いた旦那様は、怖がる私を庇うように連れて行ってくれようと肩に手を回して来たがそれにビクついてしまった。
旦那様が怖いのではない。毎日毎日アーサー様が私の肩を抱き密着しているのが嫌だったのだ。
それを嫌でも思い出してしまう。

「リーファ…」
「すみません…旦那様が嫌なのではないのです…でも…」
「アーサー様か?」
「………」

ふしだらな娘と思うだろうか。
夫を拒否するとなると、旦那様はどう思うだろうか。
旦那様を直視できず、俯いてしまった。

「手を繋ぐぐらいなら大丈夫か?一人で歩けるか?」
「だ、大丈夫です…手を…お願いします」

長い腕を伸ばし差し出してきた手にゆっくりと重ねるように乗せた。少しだけまだ震えていた。アーサー様のせいか、お化け2連続のせいかわからない。
でも、今の私にはこれが精一杯だった。

旦那様は、そんな私の手を引き、何も言わずサロンに連れて行ってくれた。




しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。 昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。 逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。 でも、私は不幸じゃなかった。 私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。 彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。 私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー 例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。 「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」 「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」 夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。 カインも結局、私を裏切るのね。 エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。 それなら、もういいわ。全部、要らない。 絶対に許さないわ。 私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー! 覚悟していてね? 私は、絶対に貴方達を許さないから。 「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。 私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。 ざまぁみろ」 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

再会した彼は予想外のポジションへ登りつめていた【完結済】

高瀬 八鳳
恋愛
お読み下さりありがとうございます。本編10話、外伝7話で完結しました。頂いた感想、本当に嬉しく拝見しました。本当に有難うございます。どうぞ宜しくお願いいたします。 死ぬ間際、サラディナーサの目の前にあらわれた可愛らしい少年。ひとりぼっちで死にたくない彼女は、少年にしばらく一緒にいてほしいと頼んだ。彼との穏やかな時間に癒されながらも、最後まで自身の理不尽な人生に怒りを捨てきれなかったサラディナーサ。 気がつくと赤児として生まれ変わっていた。彼女は、前世での悔恨を払拭しようと、勉学に励み、女性の地位向上に励む。 そして、とある会場で出会った一人の男性。彼は、前世で私の最後の時に付き添ってくれたあの天使かもしれない。そうだとすれば、私は彼にどうやって恩を返せばいいのかしら……。 彼は、予想外に変容していた。 ※ 重く悲しい描写や残酷な表現が出てくるかもしれません。辛い気持ちの描写等が苦手な方にはおすすめできませんのでご注意ください。女性にとって不快な場面もあります。 小説家になろう さん、カクヨム さん等他サイトにも重複投稿しております。 この作品にはもしかしたら一部、15歳未満の方に不適切な描写が含まれる、かもしれません。 表紙画のみAIで生成したものを使っています。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

処理中です...