呪われた令嬢はヘルハウスに嫁ぎます。~執着王子から助けてくれた旦那様の為に頑張ります!~

屋月 トム伽

文字の大きさ
上 下
9 / 69
序章 呪われた令嬢

激昂する男と証明された結婚

しおりを挟む
ガイウス様は優しかった。
この邸から出られなくなり、いつアーサー様に何かされるかと、不安しかない毎日に救いが見えた気がした。
日が昇れば、アーサー様に何かされるという恐怖がなくなるのだ。

それに、ガイウス様は何故私を助けてくれるかはわからないけど、顔色一つ変えないガイウス様はきっと私に興味はない。
私には白い結婚でも何でもいいのだ。

「でも、荷造りと言われても、何もないのよね」

お茶会に来てそのまま倒れて一度も家には帰ってない。しかも、家族は私のもの一つ持って来ないのだから。
ガイウス様が戻るのを待つだけだ。

「…結婚したからガイウス様ではなくて、旦那様とお呼びしなくてはいけないわね。使用人もいないと言ったから頑張ってお料理も掃除もしなくては…」

アーサー様から離れられると思うと、どんな生活だろうが新しい生活に少しだけ期待していた。

そして、走って来る足音と共に乱暴に扉が開いた。

「リーファ!ガイウスが来たと聞いたぞ!何故部屋に入れたんだ!」

乱暴に大きな音を立てて開けたのはガウン姿のアーサー様だった。
ガイウス様が来たから、誰かが寝ているアーサー様を起こしたのだろう。

おそらく、結婚の話がさくさくっと進んだから、その間にきっと見張りのメイドが執事か誰かに報告して、アーサー様に報告という感じだろう。警備は寝てたからきっとそうだと思った。

「何の話だったんだ!?」
「け、結婚の話を…っ!」

扉を開けた勢いのまま、アーサー様は近付いて来ると今までにない怒った顔だった。
その剣幕にゾッとし、後退りしてしまう。

「結婚!?ガイウスが求婚してきたのか!?」
「し、しました!だから…私は…!」

窓際を背に追い詰められて、後ろに逃げ場が無くなる。そんな私をアーサー様は力任せに両腕を掴んできた。

「ガイウスと結婚なんかさせないぞ!!リーファには俺がいるだろ!?」
「痛い!離してください!!」
「リーファ!何故、拒否するんだ!?リーファ!」

両腕が折れそうなほど強い力で掴まれ、アーサー様は明らかに激昂していた。
嫌だと言っても離してくれない。
私を責めるようにリーファと呼ばれるのが、怖くて堪らない。
その時、アーサー様を止める叫び声がした。

「何をしているんだ!?リーファ!」

私とアーサー様を引き離してくれたのは、ガイウス様だった。

「リーファ、大丈夫か?」
「…っ!」

腰を抜かしたようにその場に座り込み、声にならない涙が溢れてしまった。
そして、アーサー様はロウさんに羽交い締めにされるように抑えられている。
初老のロウさんに若いアーサー様をどうやって抑えられるのか不思議にさえ思うほど、アーサー様はロウさんから抜け出せない。そんなアーサー様は、離せと叫び暴れている。

「ガイウス!リーファに近付くな!」
「…それはこちらのセリフだ。人の妻に許可なく近付かないでもらいたい」

ガイウス様は私の目の前にしゃがみこんだまま、怒りを秘めたように静かでそれでいて力強くハッキリと言った。
私を妻だと…。

「妻…妻だと!?何を言って…!」
「登記官!婚姻証明書の受理をしてくれ」
「は、はい!…女性は?リーファ・ハリストンご令嬢も間違いないですね!?」

登記官はこの現状に驚きを隠せないまま慌てふためくように確認してきた。
妙に迫力のあるガイウス様に負けたのかもしれない。

「間違いありません…私はガイウス・クローリー公爵様と結婚致します…!」

登記官に間違いなく聞こえるように、涙を抑えてそう言った。それでも登記官には震える声に聞こえただろう。

「待て!!結婚なんか認めないぞ!リーファは…!」
「アーサー様に認めてもらわなくて結構。この結婚は陛下もお認めになっていますから、これ以上不満があるなら陛下に談判されても問題ありませんよ」

ガイウス様はアーサー様を抑える為に、はなから陛下に話を通して来たのだろうか。
そうでなければ、いくら公爵様とはいえ、このアーサー様の邸に許可もなく入り込めるわけがない。
私が外壁にいたから、警備が手薄になったのかもしれないけど。

「リーファ…、荷物はまとめたか?」
「ありません…私の物は何も…この邸から出られなくて…何も…」
「荷物一つ持ってこさせなかったのか…」

涙を流している私にガイウス様は、ジロリとアーサー様を睨んだ。
アーサー様はバツが悪いのか、顔を背けた。

「リーファ、立てるか?すぐに邸を出るぞ」
「た、立ちます…!」
「では、行こう。ロウ、リーファが馬車に乗り込むまでアーサー様から目を離すな」
「承知していますよ」

ロウさんがアーサー様を抑えている間に私は、ガイウス様に付いて行った。

廊下にはリーファと私の名を叫ぶアーサー様の声が後ろからただ響いていた。





しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

戻る場所がなくなったようなので別人として生きます

しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。 子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。 しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。 そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。 見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。 でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。 リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

【完結】思い込みの激しい方ですね

仲村 嘉高
恋愛
私の婚約者は、なぜか私を「貧乏人」と言います。 私は子爵家で、彼は伯爵家なので、爵位は彼の家の方が上ですが、商売だけに限れば、彼の家はうちの子会社的取引相手です。 家の方針で清廉な生活を心掛けているからでしょうか? タウンハウスが小さいからでしょうか? うちの領地のカントリーハウスを、彼は見た事ありません。 それどころか、「田舎なんて行ってもつまらない」と領地に来た事もありません。 この方、大丈夫なのでしょうか? ※HOT最高4位!ありがとうございます!

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

【完結】愛していないと王子が言った

miniko
恋愛
王子の婚約者であるリリアナは、大好きな彼が「リリアナの事など愛していない」と言っているのを、偶然立ち聞きしてしまう。 「こんな気持ちになるならば、恋など知りたくはなかったのに・・・」 ショックを受けたリリアナは、王子と距離を置こうとするのだが、なかなか上手くいかず・・・。 ※合わない場合はそっ閉じお願いします。 ※感想欄、ネタバレ有りの振り分けをしていないので、本編未読の方は自己責任で閲覧お願いします。

処理中です...