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序章 呪われた令嬢
悲しい提案
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何の呪いか不明のまま解呪の方法がわからずにアーサー様の邸から帰られなくなっていた。
呪いを調べる為だと理由をつけられて、毎日専門家が調べにくる。
そして数日経ち私の呪いは、日が昇ると眠り、日が沈むと眠れなくなる呪いだと、わかった。
実際、朝日が昇ると、抗えない眠りに襲われてしまい、月夜の広がる時間には全く眠れなくなっていた。
でも解呪方法はわからない。今すぐに命に関わるものではないから、じっくり調べているのかもしれない。
でも、そんな事よりもアーサー様の邸にいるのが怖かった。
寝ている時に何をされるかわからない。日が沈み、目が覚めるころには、よく私の手を握ったりしていると、いつ何かをされるのかと不安に襲われる。
そして、何故か家族であるハリストン一家も毎日来ていたらしい。おそらく、アーサー様に取り入りたいのだろう。最初はアーサー様も家族をもてなしていたらしい。しかし、来ても私を心配するどころか、ノーラに至ってはアーサー様と庭の散策まで誘っていたらしく、その上アーサー様は相手にもしない。しかもアーサー様がいない時にも私の見舞いと言って来たのに、私の顔一つ見なかったと、アーサー様の執事の方が言っていた。
そんな日々の中、私は益々籠の鳥のようにこの邸から出られなくなっていた。使用人まで廊下に配置して、少し夜の庭を歩いただけでもアーサー様に報告されて、夜にしか動けない私に自由はなかった。私を助けてくれる人もいない。
そしてとうとう、ある夜にアーサー様に告げられた。
「リーファ…俺の側室になって欲しい」
「………っ!無理です!!」
「やはり…正妃でないと駄目か…」
「違います!」
一体この人は何を言っているのか!?
「アーサー様、陛下に私のお話は?」
「しているぞ。父上を毎日のように説得しているのだが…日中に呪いで起きられない者を妃には出来んと反対されているのだ。婚約者にもなれんと…」
「陛下の言う事は当然です!公務が出来ない妃なんていません!」
呪いのせいとはいえ、日中にどんな事をしても起きられない妃がどこにいますか!?
妃としての公務が全く出来ないんですよ!?
「だから、側室になれば公務はしなくていいから、側室になって欲しい。夜は起きているのだから、側室なら問題ないだろう?」
「…い、嫌です…!」
「何故だ?急な提案で驚いているのか?」
何故?それは将来夜伽の為だけにアーサー様の宮に入れと言う事ですよね!?
今でさえ自由もないのに…アーサー様の宮に入ればどうなる事か…側室になるという事は、正妃は別の方になるのに将来の正妃に悪いと思わないのですか?
「リーファ…何故泣く?」
「…側室なんて嫌です…私の事は諦めて下さい…どうか…」
「諦めるつもりはない…!」
アーサー様に一度も好きだなんて言った事もないし、初対面で追いかけられたからか、どうしてもアーサー様を受け入れられない。
ただでさえ、あの家で暮らし、いつか大人になればどこかに行って家族から解放されたいと、秘かに願っていたのに、今度は籠の鳥なんて…。
顔を両手で覆い泣いている私をアーサー様は、慰めようと抱き寄せて来た。
これが恋人なら当たり前の体勢だろうが、どうしても受け入れられない。
むしろ、背筋がゾッとした。
「リーファ…」
「止めて下さい!」
抱き寄せられたまま、益々密着して来ようとしてくるアーサー様に必死で抵抗した。
でも、アーサー様は細い割にはやはり男で意外と頑丈だった。力で敵うはずもなく首筋をアーサー様の唇に捕らえられてしまう。
「止めて!」
気が付けばアーサー様の頬に平手打ちした音が響いた。でも、アーサー様は怒ることもない。
「リーファ、君を諦めるつもりはない。…だが、今日は引こう…今夜はゆっくり休みなさい」
平手打ちされた頬を抑えて、私を見据えるアーサー様が益々怖い。
私への執着が加速していくようで、私の涙はまた頬を伝っていた。
呪いを調べる為だと理由をつけられて、毎日専門家が調べにくる。
そして数日経ち私の呪いは、日が昇ると眠り、日が沈むと眠れなくなる呪いだと、わかった。
実際、朝日が昇ると、抗えない眠りに襲われてしまい、月夜の広がる時間には全く眠れなくなっていた。
でも解呪方法はわからない。今すぐに命に関わるものではないから、じっくり調べているのかもしれない。
でも、そんな事よりもアーサー様の邸にいるのが怖かった。
寝ている時に何をされるかわからない。日が沈み、目が覚めるころには、よく私の手を握ったりしていると、いつ何かをされるのかと不安に襲われる。
そして、何故か家族であるハリストン一家も毎日来ていたらしい。おそらく、アーサー様に取り入りたいのだろう。最初はアーサー様も家族をもてなしていたらしい。しかし、来ても私を心配するどころか、ノーラに至ってはアーサー様と庭の散策まで誘っていたらしく、その上アーサー様は相手にもしない。しかもアーサー様がいない時にも私の見舞いと言って来たのに、私の顔一つ見なかったと、アーサー様の執事の方が言っていた。
そんな日々の中、私は益々籠の鳥のようにこの邸から出られなくなっていた。使用人まで廊下に配置して、少し夜の庭を歩いただけでもアーサー様に報告されて、夜にしか動けない私に自由はなかった。私を助けてくれる人もいない。
そしてとうとう、ある夜にアーサー様に告げられた。
「リーファ…俺の側室になって欲しい」
「………っ!無理です!!」
「やはり…正妃でないと駄目か…」
「違います!」
一体この人は何を言っているのか!?
「アーサー様、陛下に私のお話は?」
「しているぞ。父上を毎日のように説得しているのだが…日中に呪いで起きられない者を妃には出来んと反対されているのだ。婚約者にもなれんと…」
「陛下の言う事は当然です!公務が出来ない妃なんていません!」
呪いのせいとはいえ、日中にどんな事をしても起きられない妃がどこにいますか!?
妃としての公務が全く出来ないんですよ!?
「だから、側室になれば公務はしなくていいから、側室になって欲しい。夜は起きているのだから、側室なら問題ないだろう?」
「…い、嫌です…!」
「何故だ?急な提案で驚いているのか?」
何故?それは将来夜伽の為だけにアーサー様の宮に入れと言う事ですよね!?
今でさえ自由もないのに…アーサー様の宮に入ればどうなる事か…側室になるという事は、正妃は別の方になるのに将来の正妃に悪いと思わないのですか?
「リーファ…何故泣く?」
「…側室なんて嫌です…私の事は諦めて下さい…どうか…」
「諦めるつもりはない…!」
アーサー様に一度も好きだなんて言った事もないし、初対面で追いかけられたからか、どうしてもアーサー様を受け入れられない。
ただでさえ、あの家で暮らし、いつか大人になればどこかに行って家族から解放されたいと、秘かに願っていたのに、今度は籠の鳥なんて…。
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これが恋人なら当たり前の体勢だろうが、どうしても受け入れられない。
むしろ、背筋がゾッとした。
「リーファ…」
「止めて下さい!」
抱き寄せられたまま、益々密着して来ようとしてくるアーサー様に必死で抵抗した。
でも、アーサー様は細い割にはやはり男で意外と頑丈だった。力で敵うはずもなく首筋をアーサー様の唇に捕らえられてしまう。
「止めて!」
気が付けばアーサー様の頬に平手打ちした音が響いた。でも、アーサー様は怒ることもない。
「リーファ、君を諦めるつもりはない。…だが、今日は引こう…今夜はゆっくり休みなさい」
平手打ちされた頬を抑えて、私を見据えるアーサー様が益々怖い。
私への執着が加速していくようで、私の涙はまた頬を伝っていた。
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