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序章 呪われた令嬢
呪われた令嬢
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「リーファ…君は可愛いね」
「は、はぁ…あの…ありがとうございます…」
緑と柔らかな花の広がる美しい庭園で、アフタヌーンティーを並べられ、二人だけのお茶会をしている。
いや、時間的にはイレブンシスのお茶です。むしろまだ朝の方が近いのです。何時だと思っているのですか。
そして、私の隣で甘い台詞を吐いているのは、この国の第2殿下アーサー様。
誰が見ても見目麗しいアーサー様に見初められたらしい私は、どうしていいのか困惑中だった。
「リーファ、早く君と婚約したい」
「…あの、アーサー様には婚約者候補の方々がおられるので私とは…」
「リーファも婚約者候補に入って欲しい。必ず君を選ぼう」
「………い、一度陛下とご相談なさって下さい」
「勿論だ。必ず父上を説得してみせよう!」
アーサー様…違いますよ。陛下を説得されたら困ります!
陛下に私は無理だと諭して頂きたいのです!
私は田舎のハリストン伯爵家の長女リーファ。そんな田舎貴族の私がアーサー様と婚約なんて滅相もない。
それに、私は家族から厄介者扱いされているのに、そんな私が益々アーサー様と婚約なんて出来ません!
それなのに、今、何故アーサー様と二人っきりのお茶をしているかというと、先日行われた夜会に渋々出席した時にどうやら、一人でいる私がアーサー様の目に付いてしまったからだった。
「リーファ…昨日贈ったドレスも気に入らなかったかな?明日は違うのを贈ろうか?」
「い、いえ…贈り物はもうお止め下さい」
アーサー様は、甘くそして優しいトーンで話すけど、私が贈られたドレスを身に付けてないことに切ない目で私を見つめる。
その様子には申し訳なく思う。
アーサー様からの毎日贈られるドレスやアクセサリーは全て義妹と継母の手の中です。どんなに贈られても、私の手には残らないのです。
「…リーファは慎ましいな。女は皆、寵を得ようと必死なのに…君だけは違う。王宮にさえ来たがらない」
「畏れ多いので…」
こんな安物のドレスで王宮に行くのは、アーサー様の沽券に関わります。ですから、私を諦めて下さい!
それに、何かアーサー様は怖い!
見初められた日から毎日毎日押し掛けてくるのは、怖いんです。
今日だってこんなに朝早くから…。
王宮に行くことを畏れ多いと、引け気味な私にアーサー様は貴族街のアーサー様のお邸に招待されるようになったが、何か嫌です。
私の張り付いた笑顔に、アーサー様は気付いているのかいないのか…気にする様子もなく、ずっとアーサー様はペースを崩さず時間は流れる。
「新しい茶葉を頂いたんだ。リーファにと淹れさせたから一緒に飲もう」
「は、はい!」
アーサー様のお邸の料理長さんのお菓子は美味しいし、お茶も美味しいけど…何か違います!
しかも、朝食もない私には有難く頂きますけど、横から肩に手を回しながら、うっとりを越えるような甘い表情で見ないで下さい!
それに、さっきも思いましたけど、まだアフタヌーンティーの時間どころか、イレブンシスの時間までまだ3時間もありますよ!
こんな早朝から…一体何を考えているのか。
そして、お茶を口に含むように飲む。
「…本当にリーファは可愛い」
髪を撫でられ、思わずビクリとしたと同時にお茶を一気に飲み込んだ。
そして…喉に違和感が広がった。
違和感を抑えるように喉を押さえると、アーサー様も異変に気付いた。
「リーファ…?」
「…っ!?…の、喉が…っ!?」
「リーファ!?どうしたんだ!?」
喉の中で冷たい感覚が走り回るようにおかしい。
「…つ、冷たい…!?…いやっ…!?」
「リーファ!?リーファ…!?」
青ざめるアーサー様が私を支えようとしたところで、私は力なくテーブルに倒れた。
テーブルの上のアフタヌーンティーセットは音を立てて私と一緒に崩れ、私の意識は途絶えた。
「は、はぁ…あの…ありがとうございます…」
緑と柔らかな花の広がる美しい庭園で、アフタヌーンティーを並べられ、二人だけのお茶会をしている。
いや、時間的にはイレブンシスのお茶です。むしろまだ朝の方が近いのです。何時だと思っているのですか。
そして、私の隣で甘い台詞を吐いているのは、この国の第2殿下アーサー様。
誰が見ても見目麗しいアーサー様に見初められたらしい私は、どうしていいのか困惑中だった。
「リーファ、早く君と婚約したい」
「…あの、アーサー様には婚約者候補の方々がおられるので私とは…」
「リーファも婚約者候補に入って欲しい。必ず君を選ぼう」
「………い、一度陛下とご相談なさって下さい」
「勿論だ。必ず父上を説得してみせよう!」
アーサー様…違いますよ。陛下を説得されたら困ります!
陛下に私は無理だと諭して頂きたいのです!
私は田舎のハリストン伯爵家の長女リーファ。そんな田舎貴族の私がアーサー様と婚約なんて滅相もない。
それに、私は家族から厄介者扱いされているのに、そんな私が益々アーサー様と婚約なんて出来ません!
それなのに、今、何故アーサー様と二人っきりのお茶をしているかというと、先日行われた夜会に渋々出席した時にどうやら、一人でいる私がアーサー様の目に付いてしまったからだった。
「リーファ…昨日贈ったドレスも気に入らなかったかな?明日は違うのを贈ろうか?」
「い、いえ…贈り物はもうお止め下さい」
アーサー様は、甘くそして優しいトーンで話すけど、私が贈られたドレスを身に付けてないことに切ない目で私を見つめる。
その様子には申し訳なく思う。
アーサー様からの毎日贈られるドレスやアクセサリーは全て義妹と継母の手の中です。どんなに贈られても、私の手には残らないのです。
「…リーファは慎ましいな。女は皆、寵を得ようと必死なのに…君だけは違う。王宮にさえ来たがらない」
「畏れ多いので…」
こんな安物のドレスで王宮に行くのは、アーサー様の沽券に関わります。ですから、私を諦めて下さい!
それに、何かアーサー様は怖い!
見初められた日から毎日毎日押し掛けてくるのは、怖いんです。
今日だってこんなに朝早くから…。
王宮に行くことを畏れ多いと、引け気味な私にアーサー様は貴族街のアーサー様のお邸に招待されるようになったが、何か嫌です。
私の張り付いた笑顔に、アーサー様は気付いているのかいないのか…気にする様子もなく、ずっとアーサー様はペースを崩さず時間は流れる。
「新しい茶葉を頂いたんだ。リーファにと淹れさせたから一緒に飲もう」
「は、はい!」
アーサー様のお邸の料理長さんのお菓子は美味しいし、お茶も美味しいけど…何か違います!
しかも、朝食もない私には有難く頂きますけど、横から肩に手を回しながら、うっとりを越えるような甘い表情で見ないで下さい!
それに、さっきも思いましたけど、まだアフタヌーンティーの時間どころか、イレブンシスの時間までまだ3時間もありますよ!
こんな早朝から…一体何を考えているのか。
そして、お茶を口に含むように飲む。
「…本当にリーファは可愛い」
髪を撫でられ、思わずビクリとしたと同時にお茶を一気に飲み込んだ。
そして…喉に違和感が広がった。
違和感を抑えるように喉を押さえると、アーサー様も異変に気付いた。
「リーファ…?」
「…っ!?…の、喉が…っ!?」
「リーファ!?どうしたんだ!?」
喉の中で冷たい感覚が走り回るようにおかしい。
「…つ、冷たい…!?…いやっ…!?」
「リーファ!?リーファ…!?」
青ざめるアーサー様が私を支えようとしたところで、私は力なくテーブルに倒れた。
テーブルの上のアフタヌーンティーセットは音を立てて私と一緒に崩れ、私の意識は途絶えた。
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